第三話 ドンさんを迎えに行こう
「ドンさーん!会いにきたよー!遅くなってごめんねー!」
ゼゼ山までは、予想通りコロさんの足で1時間ほどだった。
とんでもないスピードで走るコロさんでも、僕にとっては快適な乗り心地だ。我ながら、自分のチートっぷりが笑えてくる。
ドンさんは、いつもの場所にゆったりと寝そべっていた。
僕たちの声を聞いて、またぱちり、と目だけを開けてこちらを見る。
『待ちくたびれましたわ』
「ごめんね。なんか人の国はいろいろ面倒くさくて」
『もう。これ以上待たされるようなら迎えに行こうかと思っていましたのよ』
「えへへ。それはそれで嬉しいなぁ」
『まあ、竜心をからかわないでくださいな』
うふふ、とドンさんは笑う。
ドンさんは美しい青いうろこを持つレディだ。
余談だが、魔の国で意思の疎通が可能なのは『魔族』と『魔獣』がいる。
意思を持たないものはモンスターとして、人の国でも魔の国でも襲ってくれば討伐対象だ。もしくは食用として狩られるか。この辺はジビエ的な感じなのだと思う。
以前魔族の友達に聞いたところ、人に近い姿をしている、もしくは変化できるのが『魔族』で、そうでないのが『魔獣』だそう。言わずもがなコロさんとドンさんは『魔獣』だ。
「あのね、ドンさん。いろいろあって、僕はこれからこっちの国で暮らすことになったんだ」
『あら。何故ですの?』
「うーん、説明すると長くなるから、今ははぶかせて」
僕の言葉に、ちょっと首をかしげていたドンさんだったが、『わかりました』と頷いてくれた。
「でね。城下町の外れにある山つきの屋敷を使わせてもらえることになったんだけど、もしドンさんが気にいってくれるなら、近くで一緒に暮らせたら嬉しいなあと思って」
『まあっ、まあ!主さま、なんて魅力的なお誘いですの!もちろんうかがいますわ』
「やったー!もし気にくわなかったら申し分けないけれど、でもまた皆んなで過ごせたら、素敵だよね」
魔王討伐、という名目で旅をしている最中、最初こそ人の国の王様から配属された騎士の皆さんを連れていたのだけど、途中からは基本的には僕はコロさんとドンさんと3人(?)で行動していた。コロさんもドンさんも強いから手加減ができるけれど、騎士の皆さんは魔族相手には手加減なんて余裕はない。
敵も味方も殺さずにいるには、ぶっちゃけいうと足手まといだったのだ。
殺さず、を決めたのは旅に出る前だった。
甘い、と罵しられた。
魔族は憎むべき対象だとかも言われた。
でも、聞く気はなかった。
もしかしたら、最初は勝手に召喚された腹いせに、言うことなんて聞いてやるか、という気持ちだったのかも知れないけど、いまでは貫いて良かったとおもっている。
『主さま?』
『あるじー?』
「ああ、ごめんごめん。ねえドンさん。帰りは久しぶりにドンさんに乗りたいのだけど」
気持ちを切り替えて、そういうと、ドンさんが嬉しそうに笑った。
『ええ、お任せくださいな。主さま』
***
『あら、素敵な山ですわね。このあたりは良質な魔力が湧いております』
『だよねだよねっ。ボクもお庭はしってておもった!』
よくわからないけれど、彼らにとって良い場所なら、そんなに嬉しいことはない。
「どう?ドンさんも暮らせそう?」
『ええ。とても良い感じです』
ドンさんはゆっくりと頷いた。
『うふふ、これからは主さまもコロも一緒ですのね。もう寂しくありませんわ』
ドンさんは僕たちと出会う前、とある事情で長い間ひとりぼっちで過ごしていた。
僕は、ドンさんの首筋を撫でる。
「うん。ずっと一緒にいよう。万が一人の国に帰るようなことがあっても、今度は、一緒に行こうね」
『…ええ。ありがとうございます、主さま』
ぎゅう、とドンさんを抱きしめたところで、ティティさんが、夕食の準備ができたと呼びに来てくれた。
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