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第二話 お屋敷もらったよ

『あーるじー!!おわった??おはなし、おわったー??』

 僕が玉座を離れると、扉の前で待っていた大きな白い犬…ではなく、歴としたフェンリルのコロさんがビュンビュンと尻尾を振って寄ってきた。

 コロさんは旅の途中で傷ついていたところを助けて以来懐いてくれたので、テイムした大切な仲間だ。

「うん、終わったよコロさん。とりあえず、こっちの国でノンビリ暮らしたら?って言ってもらった。コロさんはどうする?」

『あるじがここで暮らすならボクもそうするっ。ボクはねぇ、ずっとあるじといっしょがいいー』

 えへえへ、という効果音がつきそうな笑顔で尻尾を振るコロさん。愛しすぎる。

「そっかぁ、嬉しいなぁ。コロさんありがとう」

 ぼふん、とコロのお腹あたりに顔を埋める。

 もっふもふ。

 超、もっふもふ。

「ああ、もー、僕コロさんとドンさんがいたらもう他に何もいらないや」

『あはははっ!あるじったらー!』

 ドンさん、というのは、同じくテイムしているスカイドラゴンのことである。

 ドンさんという名前で読んでいるけれど、あちらは素敵なレディだ。

 ドラゴンの姿は人の国では威圧的すぎるので、協定の約束を伝えに人の国に戻る時に魔の国の彼女のねぐらで待機してもらった。しかしこれから住むのは魔の国。用意してもらう街外れというのがいい場所なら、ドンさんも家の近くにきてもらってもいいかもなぁ、なんて考える。

「タテヤマ様」

「はい?」

 後ろから声をかけられて、ちょっと名残惜しくはあったけど、コロさんのお腹から顔を離して振り返る。

 白髪をピシッとオールバックにして尻尾のように後ろで1本に縛った執事服のダンディと、小柄でふわふわした笑顔を浮かべた栗色の髪を低い位置で2つに結んだ可愛らしい10代くらいのメイドさんが立っていた。さっき聞こえた声は男性だったから、おそらくこのダンディな方だ。

「魔王様より、タテヤマ様のお世話役を命じられました、モーダと申します」

「ティティです」

 2人は美しい礼をする。

 あわあわしてしまった。

「え、ええと、モーダさんと、ティティさん」

「はい」

「えっと、お世話をおかけします。館山貞義です。でも、本当にいいんですか?貧乏くじじゃあありませんか?」

 魔王様のお城で働くような執事とメイドなのだ。

 この国で僕が英雄扱いされているとしても、僕のお世話で街外れで仕えるというのは、正直出世とは言えないのではないかと思う。

「とんでもないです。…仕事に私情を挟むのはどうかとは思うのですが、実は、我々の息子を、貴方は助けてくださったのです」

「…はい?」

「タテヤマ様が殺さず、を貫いて下さったおかげで、死なずに済んだ命がたくさんあります。ですから、城の中でも貴方様にお仕えしたいというものは多かったのですよ。その中で、我々が選ばれたわけです」

 とても有難い言葉をいただいているのに、“我々の息子“というキーワードが非常に気になる。

「あの、お2人はご夫婦で?」

 モーダさんとティティさんは一瞬きょとん、としてそして2人で目を合わせてふふっと笑った。質問に答えてくれたのはティティさんの方だ。

「ええ、そうです。あと、我々の年齢差は見た目と逆転してると考えていただいて構いませんよ」

 うわーお。魔族ってすごいな。

「ええと。そういうことなら、改めて、よろしくお願いします。モーダさん、ティティさん」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」

2人はまた、美しい所作で一礼してくれた。


***


 街外れの屋敷に馬車で向かっている途中(使用人は馭者席に座るという2人に、聞きたいことがあるので一緒に客席にいて欲しいと頼んだ)お2人のお給金はどうしたらいいか、と聞いてみた。そうすると、魔王様が出してくれると言う。

「ええ、そんなに甘えてしまっていいのかなぁ」

 体の大きさを変えられるコロさんが、子犬サイズになって僕の膝にいるので、それを撫でながら(ああ、もっふもふ…)2人に言うと、2人は穏やかに笑った。

「一応、タテヤマ様はその、人質あつかいということになりますので、生活に必要な予算は、私たちの給与含め国が負担すると魔王様の命です。もちろん、お金のことは気にせず、好きに過ごして貰っても構わない、とも言われております」

「至れり尽くせり過ぎません?」

 いやまあ、正直お金を稼ぐあてがあるわけではないのだけど。

「それくらい、タテヤマ様は魔王様や、魔の国のものに一目置かれているということなのですよ」

「うーん」

 とりあえずは、うん、甘えることにしよう。でも、お金稼げるような目処がたったら、その辺魔王様と相談したいなぁ。


 案内された屋敷は、思ったより大きかった。

 部屋数を聞くと、大小合わせて個室が12。家の中に食堂、風呂、書庫があるという。

個室は主人一家用と使用人用の小さなものに分かれていて、1番広い部屋が僕の部屋になるという。庭も広い。通常サイズのコロさん(だいたい大人の牛くらい)が走り回れるくらいのスペースがある。裏に山があるけれど、これは使っていい土地なのかな。モーダさんに聞くと、「ええ、裏山までがタテヤマ様の敷地になります。タテヤマ様は確かスカイドラゴンもテイムしてらっしゃいましたよね。本竜が納得するのであれば、こちらに移り住んで頂いても良いかと思います」との返答が返ってきた。

 それはいいな。

 人心地ついたら、ドンさんのねぐらに行って相談してみよう。

『ねーねーあるじー』

「うん?どうしたのコロさん」

『このお庭、走ってきていーい?』

 王宮でも馬車のなかでも大人しく座っていたので、うずうずしているらしいコロさんのキラキラした瞳に、僕がNOを言うはずもなく。

「もちろん!思う存分遊んでおいで!」

『やったー!!』

 僕の腕からぴょんっと飛び降りると、元のサイズにもどってそのまま走り出す。

 途中で転がって背中を地面にすりすりしたりしてて、ああもう、コロさん、かーわーいーいー。

「タテヤマ様?」

「あ、ああっすみません!コロさんがあまりに可愛くて。ええと、室内に入るんですよね」

「ええ。ここは元は魔王様の離れとして設置された屋敷ですので、掃除等は常時整っております。安心してくださいね」

 ティティさんが微笑んで、そうして室内を案内してくれた。

 内装は上品ではあるものの、わりとシンプル。

 風呂はまさかの温泉!

 全体的にとっても、好み。やったぜ。

「それでは、我々は夕食の準備を致しますので、それまで御自由に過ごしてくださいませ」

「あっ、それなら、ゼゼ山に行ってきてもいいですか?」

 ゼゼ山というのは、現在のドンさんの住処だ。

「ええ?でもここからだと、馬車で4時間ほどかかるのでは」

「コロさんなら多分1時間かからないです。帰りはドンさんに乗って返ってきますし」

 モーダさんはちょっと目を見開いたけれど、すぐに微笑んで、かしこまりました、と頭を下げてくれた。

「ありがとうございます」

 僕もモーダさんに礼を言って、コロさんを呼んだ。

「コロさーん!ドンさんのとこ行きたいんだけど、乗せってくれるー?」

『もちろーん!わーい!とおのりだーっ』

 びゅんびゅん尻尾を振って近づいてくるコロさん、やっぱり超可愛い。

読んでくださってありがとうございます!


4/14 サブタイトルつけました。

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