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殺さず勇者 人畜無害のタテヤマくん  作者: ゆるゆる堂


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第19話 魔王様からの呼び出し

トカチとクゥさんが付き合いだしたとか、モーダさんとティティさんのところに3人目の孫が生まれたとか、とらねこのチェチェさんが結婚が決まったとか、そういう幸せな話題ばかり聞いていた中、それは、急な呼び出しだった。


***


「魔王様?こんな唐突な召集って珍しいですけれど、何があったんですか」

 らしくなく、ピリピリした空気を纏った魔王様を前に、よくないことがおきたのだとすぐにわかった。

 コロさんドンさんも連れてきて欲しいと言われたから、2人は僕の後ろに少し小さな姿になって控えている。

 いつもなら軽口から入る魔王様の声が、ひどく低く響いた。

「落ち着いて聞いてくれ、タテヤマ。後ろの従者もだ」

「……」

「人の国が、また、“召喚の儀”を行った」

「……、は?」

 召喚の儀、それは僕がこの世界に呼ばれた儀式。

 人の国が、また戦争を起こそうという、明らかな証拠。

 え、でも、まって。

「召喚の儀は、多くの魔力が必要で、僕が呼ばれるには十数人規模で魔術師が魔力使い果たしたと、だからしばらくはできないと…」

「そうだな」

 魔力を使い果たす、それは、その魔術師が2度と魔術を使えなくなる、ということ。下手をすれば命を落とすようなことだ。

 あの国に、召喚の儀に参加できるような魔術師はもうほとんど残っていないはず。

 どういうことだ。

 次の瞬間、ぴん、ときた。

 きてしまった。

「まさか。じぃ様と、ばぁ様…」

「その、まさか、だ」

 魔王様は、僕に一枚の紙を差し出した。

 それは、魔王様の部下達が定期的に人の国の情報をまとめている報告書で。


『ハヤテ、アヤ両名は、最後まで再戦に反対をしたことで、反逆罪とみなされ、捕らえられ召喚の儀の“贄”に選ばれた。そして、召喚された勇者によって、処刑された』


 そう、書いてあるのを見た瞬間、カァ、と全身の血が沸騰したかのように感じた。

 じぃ様とばぁ様が死んだ?処刑?なんの冗談だ?

 そりゃ、魔王様との謁見の後、待てど暮らせど手紙は来なかった。

 でも、便りがないのは元気な証拠かな、なんてのほほんと、僕がのほほんとしていた間に、何がおきた。

「タテヤマ!!!」

 魔王様から、平手打ちが飛んでくる。

 それを右手でうけとめると、ばちん、とすごい音が響いた。

 その音で、すぅ、と頭が冷えた。

 周りを見ると、僕の経っている場所を中心に、あちこちにヒビが入っている。

 ああ、魔王様が部下を1人も謁見の場所に入れなかった理由はこれか。

 コロさんとドンさんは、ドンさんが結界を張っていて、2人とも無事。

 けれど、コロさんがすごい声で唸っている。

 わかるよ。

 コロさんも可愛がってもらっていたものね。

「すみません、魔王様。お部屋壊してしまいました」

「構わん。これくらいで済んで逆に驚いているくらいだ」

「あはは…」

 魔王様がらしくない口調で、まるで魔王みたいに喋るから、なんだか、泣きそうになってしまう。

 けれど、ここで泣いて叫んで悔やんでいても仕方がない。

 じぃ様とばぁ様が本当に死んだかどうかも、報告書だけでは納得もできない。

「魔王様」

「なんだ」

「とりあえず、その口調やめてもらえませんか。いつもみたいに、ゆるく喋ってください。まるで魔王と対峙しているみたいで落ち着かない」

「…、まるでもなにも、魔王なんだけどねぇ」

「そうですね」

 僕は、コロさんとドンさんを手招きする。

 2人を抱きしめて、「僕は、好きに動くよ」とだけささやく。

 抱きしめた腕の中で、2人は、こくん、と頷いてくれる。

「魔王様。僕が、その勇者に会ってもいいですか」

「どういうこと?」

「その勇者が、これ以上魔族や魔獣、人間を殺す前に。その勇者に会ってもいいですか」

「タテヤマが勇者を殺すってこと?」

「それは、どうでしょう」

 今度呼ばれた勇者がどれくらい強いのか、さっぱりわからない。

 ハヤテじぃ様を殺すことができた、というのは気になるところだけど、捕らえられて(これも、あのじぃ様をどうやったというのか不思議だけれど)召喚の儀の贄にされて、体力も気力も魔力もほぼ残っていない状態だったのであれば、それはその勇者の強さの証明にはならないし。

 ただ、弱いという保証もない。

 僕の存在がその理由だ。

「とにかく、簡単に人を殺せるような勇者が、魔族に対話を求めるとも思えませんし。どんな人物か、会いたいんです」

「タテヤマがその勇者と結託してこちらを滅ぼす可能性もあるのに、それを許可しろって?」

「いただけないのであれば、無理やりにでも」

 僕の言葉に、魔王様は一瞬キョトンとして、そのあとにやりと笑って、いいよ、といった。

「ただ、人気のないところでね」

「わかりました。国境は越えても?」

「いいよ。いまの勇者の行動を、僕の影から君に伝えるようにしてあげる。君が僕らの味方だとは思ってないけど、現時点では敵でもないしね」

「甘いですね」

 自分で提案しておいてなんだけど。

「それが僕のいいところだからねー」

 魔王様が笑って、そして、

「でも、敵にまわったら、絶対に殺すよ」

といったから、逆にちょっと安心してしまった。

しばらくはシリアスです

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