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殺さず勇者 人畜無害のタテヤマくん  作者: ゆるゆる堂


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18/30

第18話 トカチの恋

 ハヤテじぃ様とアヤばぁ様が人の国に戻ってから2週間がすぎた。

 その間特に大きな事件も起こらず、のんびりとポーションやアクセサリー作りに励んでいると、トカチがトカチケーキ持参でやってきた。

 トカチが遊びに来るときは必ず使用人とコロさんドンさんを入れた人数分のケーキを持参してくれるので、非常にありがたい。

 トカチケーキ絶品だから、余計に。

 ちなみに僕のお気に入りはフルーツタルト。

 今日も入っていました、さっすがトカチわかってるぅ。

「なあ、タテヤマよ」

「うん?」

「折り入って、相談があるんだが」

「なに、改まって」

 早速お茶の準備を整えて客間に案内すると、座った途端にトカチが真剣な眼差しをこちらに向けてきた。

 あまりの表情に思わず姿勢を正す。

「す」

「す?」

「す、すすす、好きな子ができた」

「…………!?」

 口に出した途端カァァとトカチの顔は耳まで赤く染まる。

 いや、もともと赤いんだけど、さらに赤くなった。タコのようだ。

 なんなのこの人純情なの。かわいいの?

 釣られて照れてしまいそうになるのを堪えて、続きを促す。

「で、そのお相手は…?」

「…その、だな」

 トカチは窓の外を見る。

 視線の先には、クゥさん。

「まさか、クゥさん…?」

「っっ」

 さらに赤くなる。どこまで赤くなるんだろう、トカチ。

「時々お前の家に遊びにきているうちにだな、その、…」

「いや、うん、惚れた経緯の詳しい話は今はいいや」

 これ以上聞いていると僕まで赤くなりそうだ。

「で、僕にどういう相談があるの?」

「告白するのを、見守ってほしい」

「…はい??」

 何を言い出すんだ、女子中学生の恋じゃあるまいし。

 そう思ったが、トカチの真面目な表情に、「はい??」以外は何もいえずにいると、トカチがふっと困ったように笑った。

「いや、正直な。脈なしな可能性のが高いんだよ。ほとんど交流もねぇしよ」

「ほう」

「でもな。俺の性格上、これ以上悶々と想い続けるのは性に合わねぇ。だから、告白しようと思う」

「ふむ」

「で、だ。その告白したときの…」

 読めたぞ。

「クゥさんのフォローをしてほしいわけね」

「さすがタテヤマ、わかってやがる」

「まあね」

 トカチは魔の国でできた最初の友人である。

 そして、クゥさんは僕に雇われている使用人。

 主人の友人を振る、なんてのはなかなか難しい話だろう。

 だから、クゥさんの気持ちを正直に(好意がある無しどちらでも)トカチに伝えるために、僕の存在が必要だという、そういう話らしい。

「トカチってさあ」

「おう?」

「見かけによらず、そのあたり繊細だし、優しいよね」

「おいこら、見かけによらずって何だよ」

「言葉通りの意味でーす」

「てめぇ」

 しばらく笑い合ってから、僕は頷いた。

「いいよ。他でもないトカチの頼みだしね。もしダメでもやけ酒とか付き合ったげよう。僕の奢りで」

「ありがとうよ」


***


 数日後、トカチの定休日に僕はクゥさんを庭にある大きな木の下に呼び出した。

「あ、あの、私、何かしてしまいましたでしょうか」

 突然僕に1人呼び出されたものだから、クゥさんは可愛い耳をぷるぷると震わせている。

「いいや。君が何かしたとかそういう話じゃないよ。ちょっとだけ、聞いてほしい話があるだけ」

「ええと…?」

「でもね、その話を聞く前に、ひとつだけ伝えたいことがあるんだ」

「な、なんでしょうか」

 だいぶ打ち解けたと思っていたけれど、やっぱり僕とクゥさんは主と使用人なんだなぁとふと感じる。それが嫌というわけではないんだけれど。

「今から聞く話は、聞いた後クゥさんに答えを出してもらう話になるんだけど」

「はい」

「その答えに僕の存在は消して欲しい。うーん、言い方が難しいな。答えを出すのに、僕に気を使う必要はないし、使わないで欲しい、かな」

 クゥさんは困ったように首を傾げた。

 難しいなぁ。

 フォローするという約束はしたものの、僕はこういう言葉の選び方は多分うまくないんだよなぁ。

「うまく伝わらなかったかもしれないけど、とにかく、僕のことは気にしないで、ということかな。じゃあ、あとはクゥさんに話をしたい人にバトンタッチするね。トカチ」

「おう」

「え、トカチさん…?」

 予め木の影に隠れていてもらったトカチ登場。

 クゥさんは目をぱちぱちさせながら、トカチを見つめる。

 あれ?うん?

 クゥさんのほお、赤くない??

 トカチが何かいう前から、クゥさんはどぎまぎしているように見えた。

 これは、もしかして、もしかすると…。


 結果だけ先に言うと、トカチとクゥさんは付き合うことになった。

 トカチの惚気を聞いたところによると、クゥさんがこの屋敷に来たばっかりの頃、失敗ばかりしていた自分が情けなくて泣いていた時、フォローしてくれたのがトカチだったらしく、そこから、こっそり恋心が芽生えていた、と。でも主人の友人だし、有名なパティシエだし、街のみんなからも慕われているようなトカチとは立場が違うと思いを秘めていたところの告白だったという。

 告白が成功してから、定休日のたびにデートをしているようです。

 前の世界ではあんまり縁がなかったけれど、人の惚気を聞くのって楽しいし幸せだけどちょっと疲れるね。

ずいぶんと間が空いてしまってすみません;

ゆっくりと完結まで頑張りますので、よろしければお付き合いください。

ほのぼのパートはここまでで、次からしばらくまたがっつりシリアスパートになります。

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