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殺さず勇者 人畜無害のタテヤマくん  作者: ゆるゆる堂


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第17話 魔王様との交渉

「はじめまして、魔王でーす」

「……、人の国の騎士団、副団長のハヤテと申します」

「人の国の王立薬院院長のアヤと申します」

 魔王様とじぃ様ばぁ様の謁見は、僕たちが再会した次の日の昼に行われた。

 昼食とってから来いと言われたので、日本時間イメージでたぶん13時くらい。

 ごつい外見とダンディボイスと軽い口調。ギャップにじぃ様が若干引いていた。ばぁ様は気にしている様子もなくさすがだなと思う。

「で、僕に話したいことっていうのは、人の国の王がまたこっちにちょっかいかけようとしているっていう話?」

「ご存知でしたか」

「まあね。あんなにわかりやすく準備進めようとしてたらねぇ。タテヤマがこっちにいるってことで安心しすぎてる感があるよねー」

 魔王様は困ったように笑う。

 魔王様は知っている。僕が人の国からなんの制約も受けていないことを。

 人の国を裏切ったとしても、僕にはなんの害も及ぼされないことを。

 人質になったときは積極的に裏切る気なんてなかったけど、普通に迂闊だと思う。僕という戦力が、敵側につく可能性を潰さないんだから。

「で、それを僕に伝えて、君たちのメリットはなに?」

 突然、ピリッと空気が揺れた。

 魔王様が、うっすらと目を細めて、じぃ様とばぁ様を見ている。

 2人を威圧しているのがはっきりと分かってちょっと思うところはあるけれど、僕はまだ口を挟んでいい段階ではないし、そもそも魔王様にとってこの2人は『敵となりうる存在』だ。優しくするのは、ちょっと違うのかもしれない。

 しかし、じぃ様もばぁ様も、まったく怯むことなく、魔王様を見つめている。

 僕のじぃ様ばぁ様格好良すぎない?

 じぃ様は落ち着いた声で話しはじめた。

「新たな戦は、我々民の思うところではございません」

「うんうん。それで?」

「我々の手で、王を止めたいと思っております」

「うんうん」

「ですから、しばらくの猶予をいただきたいのです」

 これは、昨日聞いていた。

 人の国が戦を仕掛けようとしていることを魔王様が知ったら、その火種を先制攻撃という手段で潰そうとするかもしれないから、それを待ってもらえないか交渉するつもりだと。

 これは、じぃ様ばぁ様の独断行動だ。

 人の国の王が知ったら、首が危ういくらいの。

「…ふふっ。ねぇねぇタテヤマ、この2人が、君の恩人なんだよね?」

「え?ああ、はいそうです」

 突然こちらに話を振られて、びっくりした。

「2人がこういう話をするって聞いて、君はなにも言わなかったの?」

「といいますと?」

「だって、魔王城だよ、ここ。僕がこの2人を殺す可能性だってあるわけじゃない?」

「まあ、そうですねぇ」

 殺す、という言葉にちょっとコロさんとドンさんが反応したけれど、そのまま控えてもらう。

「そうなったら、僕が2人を守ればいいかなと思ってましたし、じぃ様も強いし」

 これが僕が2人についていきたいといった理由。

 にやにや笑って「へぇ?」と魔王様。

「それに。そもそも、魔王様。2人を殺したり、ましてや先制攻撃とかするつもりないでしょう?」

 僕の言葉に魔王様はきょとん、としてからアッハッハと笑った。

「タテヤマって本当僕のことよく分かってるよねー。でもじゃあ尚更なんで止めなかったの?」

「直接聞いてもらった方が、じぃ様たちが納得するかなって思いまして」

 特にじぃ様頑固だし。

 じぃ様がこっちを一瞬じとっと見てた気がしてたけど、気付かなかったことにする。

「なるほどね。うんうん。おーけー」

 楽しそうに笑って、魔王様がじぃ様とばぁ様のほうに向き直した。

「いいよ。そちらから明らかな条約違反をしてこない限りは、僕ら魔の国から人の国へ攻撃的な干渉をすることなしない。これはもともと決めていたことだしね。ただ、タテヤマはこのままこっちにいてもらうよ」

「僕ももとよりそのつもりです。なにせ僕は人質ですし。人の国が侵攻してきたらわかりませんが」

「うんうん。でも君は、僕らの仲間にはなり得ないね」

「さて、どうでしょうか」

 昨日決めたことは、魔王様に伝えるつもりはない。

 第三勢力目指してます宣言なんて、いらない火種を生むだけだ。

「それから、ハヤブサ便でそちらの状況をタテヤマには教えてもらえるかな。その情報を僕に渡すかどうかは、タテヤマに任せるよ」

「魔王様、僕のこと信用しすぎじゃないですか?」

「そうかもね。でも、君は僕らの味方ではないけれど、敵にもならないと思ってるから」

 くっくと魔王様が笑う。あ、ちょっと悪役っぽい笑い方だ、なんて思った。

「で、どうかな。この条件で飲んでくれる?」

「はっ、有難うございます」

 じぃ様とばぁ様はゆっくりと礼をする。

 そして、謁見の間をでた瞬間、じぃ様とばぁ様が、はぁ、とゆっくり息を吐いた。

 ぶわっと汗が出てきていて、あ、この2人も緊張するんだな、と思ったのでそう言ったら「当たり前じゃろう!」と頭叩かれて、なんか、…きたばかりの頃思い出して懐かしくなって、こっそり泣きそうになった。

PV、ブックマークありがとうございます!


タテヤマくんは、基本的にいい人ですし好きな人はたくさんいますが、真実心を許しているのはコロドンだけです。

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