第十一話 ドンさんのひみつ①
トカチは帰り、キィさんクゥさんはモーダさんたちに連れられて使用人として働くための準備をしに。
僕はコロさんと一緒にドンさんのもとへ向かった。
お茶会のあと、ドンさんはまた山の方へ戻って行ったから、コロさんと2人で夜の山登り。
ティティさんが、この山にも弱いけれどモンスターが出ると教えてくれていたけれど、道中モンスターとかち合うことはなかった。
コロさんがちょっと気合いれて歩けば、弱いモンスターはびびって近寄ってこない。フェンリル恐るべし。
『ねぇあるじ、どうしてドンさんのところにいくの?』
コロさんが僕の前を歩きながら言う。
批判などではなく、単純な疑問だろう。
「ドンさんに僕が会いたいからかな」
なにか話したいこともあるように思えたし。
『そっかあ!ボクいっしょにいていいの?』
「それはドンさん次第かなぁ。もしドンさんが席を外してほしいっていったら、ちょっと山の散歩してもらってもいい?」
『いいよー!このおやま、気持ちいいからボクすき!』
そんな会話をしながら歩いていると、ドンさんのこの山でのねぐらにまではあっという間だった。
「ドンさーん!」
『あら主さま。どうなさいました?』
「会いたくなってきちゃった」
『まあ、まあ!うふふ。主さまったら』
コロコロと笑うドンさん。朝日の中のドンさんも綺麗だけど、月明かりに照らされるドンさんもまた綺麗だ。
中身も美しいドンさんは、さぞかしスカイドラゴンのなかではモテただろう。
僕もドラゴンの身を持っていたなら、アタックしたかもしれない。
『ねえねえ、あるじー!』
「うん?どうしたの」
『ドンさんなにも言ってないけど、はしってきていーい?なんかねー、なんかねー、うずうずしちゃうー!』
「あはははっ。いいよ、コロさん。怪我しないようにね」
『はーい!』
ドンさんはお淑やか系で、コロさんは天真爛漫系。
意外に気が合うらしい2人(2匹?もう2人でいっか)は仲良しだ。
走ってくる!と飛び出したコロさんを見つめるドンさんの瞳はとても優しい。
『コロは本当に可愛いですわね。』
「うんうん。わかるー」
僕はよっこらせ、とドンさんの横に座った。
「ところでドンさん」
『なんですか?』
「僕になにか話したいことない?」
こういう時は直球が1番。
ドンさんはぱちぱち、と瞬きをしたあと、うふふ、と笑った。
『主さまは、私たちのことをよくわかっていますのね』
「全部わかるわけじゃないよ。だからこうして話をするんだ」
『ええ。主さまはいつもそうして、私たちに寄り添ってくださいます。…実は、そろそろ衣替えの時期ですの』
「あ、そういえばそうだね!」
ドンさんたちスカイドラゴンは、3ヶ月に一度ほど、鱗が生え変わる。それを、彼女たちは“衣替え“と呼んでいる。頻度は違うけれど蛇系モンスターで言うと脱皮みたいな感じだとドンさんは言っていた。
脱いだ鱗は、空に返すという意味を込めて燃やすんだけど、風魔法に才能全振りしていたらしいドンさんは炎系の魔法が苦手で、獣魔の契約を結んだあとは、その役目はいつも僕がになっていた。
「じゃあ今回も僕が燃やせばいいかな?」
『あ、あの、その事で…』
ドンさんが言いにくそうに首を傾げた。
『本当は、鱗全部を燃やす必要は、ないのです』
ドンさんは小さい姿になるとトカゲの魔獣のように見えるのと、ドラゴンだとバレても強いので手出しはできなかった冒険中です。
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