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第十話 趣味と仕事

「人の国では、工房(ファクトリー)って呼ばれてたよ」

工房(ファクトリー)?」

「そう。材料とイメージさえあれば、なんでも作れる能力」

 僕はずずっとお茶を飲みながらそう答える。

 あ、紅茶は音立てちゃいけなかったんだっけ?

「悪い、まったくわからん」

「んー…。例えばさ、魔法を使うとするでしょ?」

「おう」

「魔法に必要な材料は、魔力だから、自分の魔力があれば材料の部分はOK。あとは、いかに具体的にイメージをするか。形や用途、さっきのでいえばたくさんの水をシャワーみたいに降らせるっていうイメージね。このイメージが曖昧だと、魔法は作れない。逆にいうと、イメージさえしっかりあれば、属性とか関係なくなんでも作れる。そういう能力」

「ちなみに魔力はどれくらいあるんですか?」

 これは、キィさんの質問。

「数値とかはわからないけど、魔王様曰く、魔王様よりあるらしいよ。とんでもないよね」

 お茶会を始める前に、キィさんとクゥさんから敬語をやめて欲しいと言われたので、敬語なしに切り替えて喋る。

 その場の空気が一瞬止まった。お茶のおかわりを準備していたティティさんまで一瞬止まった。

 本当、召喚チートとはいうけれど、とんでもない能力値だと思う。

 単純な身体能力も当然のように上がっている。

 日本での僕は、ちょっと運動が好きで、本が好きで、物づくりが好きな普通の男だったのだから、上がった能力値についていけるようになるまでは、正直辛かった。

「魔法以外だと、どうなるんだ?さっきの言い方だと魔法だけじゃねぇんだろ?」

「うん。ほんと材料さえあればなんでも。ポーションとか、魔道具とか…。何作るにも魔力はいるけど、なんなら材料揃ってれば家でも建てられると思う。まあ、僕に建築知識がない間は無理だけど」

 そう。これがこの力の弱点である。

 材料がいる、という点と、イメージの具体性が求められるという点において、作るものに対する知識が必ず必要になるのだ。

 魔法はまだ、材料が魔力だしやりたい放題でもいいから楽だけど、魔道具や薬などは全部、適切な材料がいる。

 例えばポーション作りに必要なイメージは、具体的な『効能』。

 知識を増やしたり、詳しい人に話を聞いたりして、新製品を作ることもあったけど、それは本当に大変だった。今あるものを飲んでみて材料揃えてつくる、が1番手っ取り早い。

 だから、この世界にきて、1番頑張ったのは勉強だった。

「闘うという意味では使いやすいけど、それ以外だとなかなかね」

「ふーん。でもなんでそんな能力になったんだろうな」

 トカチがクッキー食べながら言う。

 それ作ったのモーダさんなんだぜ、美味いだろー。

 モーダさん達とまだ知り合って間もないのに、なんとなく自慢したい気持ちになりつつ、トカチの質問に答える。

「たぶん、僕の前の世界での職業と趣味のせいじゃないかと」

「何やってたんだ?」

「図書館司書」

「なんだそれ」

「本がたくさんある施設で、本の貸し出ししたり、本の補修したり、借りたい人が見つけられない本を探したりする仕事、かな。簡単に言うと」

 こっちの世界では、ファンタジーあるあるな感じで本は高価なものだ。

 それでも人の国には貴族とかが使える王立図書館があったけど、魔の国にはないらしい。

「ふぅん。本関係だったから知識ってことか??じゃあ趣味は?」

「コスプレイヤー用の小道具作り」

「こすぷれいやー」

「要するに仮装用の道具作るのが好きだったってことだよ。僕は仮装しないんだけど、友人たちがそう言うの好きで」

 そういえば僕がこっちにきてしまって、あの友人たちの小道具は誰が作っているんだろう。えらくマニアックな作品のコスプレばっかりするからいつも既製品がないー!って叫んでたあの友人たち。彼ら衣装は作れるけど造形系がてんでだめで、材料費+αでいろいろ造らせてもらった。楽しかったなぁ。

「じゃあ、お前なんでもいろいろ作れるってことか?」

「まあ、専門的な難しい知識がいらないものなら?」

「じゃ、それこそ工房持てばいいんじゃね?」

「なに、突然」

 話が見えない。

「どうせ暇だろ」

「まあ、うん」

「なら、好きなことして過ごせばいいじゃねぇか。扱いの良い人質なんだし。タテヤマくらい強ぇなら材料なら自分でとりにいきゃ良いしよ。ポーションにしろ、アイテムにしろ、作るのが好きならそういうの作って暇をつぶせば良いんじゃねぇかって」

 なるほど。

 トカチ、それはとてもいい考えかもしれない。

 ちょうど、お金を稼ぎたいと思っていたところだ。

 一応魔王様に確認はとらないきゃだけど。

「それいいね」

「だろ?」

 それから、どんなものが売れるのか、みたいな話で盛り上がっていたら、少し離れたところで寝そべっていたドンさんが、時々チラッとこちらを気にしている様子を見せていた。

 あとで、話聞きに行こう。

読んでくださってありがとうございます!

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