表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

第一話 人質だってよ

 僕、館山貞義たてやまさだよしは、お人好し、といわれるタイプの人間で、自己犠牲精神とまではいかないものの、基本的に困っている人は放って置けない。

 だから、突然異世界に召喚されて勇者認定されても、魔王を倒せと言われても、まあ仕方ないかなぁ、とその任を放棄することはなかったし、ありがたいことにいわゆる「チート」的な能力も召喚時にいろいろ備わっていた。

 そして最初の戦いの中で魔族と意思の疎通が可能じゃないかと仮説をたてて、そのチートを駆使して「殺さず」を貫いた。味方も、敵もだ。

 勇者である僕がそんな調子だったし、直接話をしみると魔王は話がわかるタイプだったし、実は人間の侵略などは考えていなかったことがわかったので、勇者を召喚した国と不可侵条約を結ぼうという話になった。

 めでたしめでたし、というわけなのだけど。



「これは、ないよねぇ…」

「ですよねぇ?」

 目の前の、赤黒い肌で金の瞳、頭に立派なツノを生やした大男が、困ったようにため息をついた。

 僕も困ったように笑った。

 大男ー魔王は手にした書状にもう一度目を落とす。そして、何度目かになるため息をついた。

「つまり、不可侵条約のかわりに君を人質に送るからよろしくってことでしょ〜?これ」

 いかつい外見とは裏腹にのんびりした口調で魔王は苦笑いをした。

「あの国としては、お目付役として君をこっちにやっとけば、いざと言う時こっちの国で暴れてくれるだろう、って狙いなんだろうけど」

「そんなこと、しないんですけどねぇ」

 僕にはその気はないし、騎士を守りながら魔の国に向かっている時に感じていたが、人間はたぶん僕なしには魔族には全く歯が立たない。

 一部飛び抜けて強い人たちもいたけれど、それは本当に一部だ。

 とてもじゃないが、あの国が僕なしに魔の国を侵略することは不可能だと思う。

 それに、僕が裏切るという可能性をこれっぽっちも考えていないのが、とっても不思議。いや、積極的に裏切る気なんてないけど。

 魔王は「あの国の王は多分タテヤマの能力値を見誤ってるんだろうね」と小さく呟く。

 それは、そうかもしれないと思ったので頷いておいた。

 召喚チートは伊達じゃないのだ。

 自分で言うのもなんだけど、僕は相当強い。

 最初のうち、力を持て余さないようにするのが大変だったくらいだ。

「うーん…、でもどうしようかな。君は我が国にとっても英雄みたいなものだし」

「え?そうなんですか?」

「うん。だって、今まで人との戦いで誰も死なずに停戦まで持って行けたことないし」

「ほぉ」

 それは知らなかった。

 英雄というのはくすぐったいが、あたらめて、殺さずを心がけてよかったなぁと思った。

「とりあえず、この国で過ごす?君は人だけど、基本的に僕の国で君を嫌っている人はいないし、多少血の気の多い子はいるかもだけど、タテヤマなら別に問題ないでしょ?」

「まあ、そうですね」

「じゃ、よかったらだけど、城下街の外れに広めの一軒家があるし、魔族だけどメイドと執事もつけるし、そこでほら、スローライフ的なの送ってみたら?」

「じゃあ、そうします」

 元の世界に帰ることができないというのは、停戦前、魔王とはじめて会った時に教えてもらっている。

 幸いというべきなのかなんなのか、僕は友くらいはいたけれど、家族的な意味では天涯孤独というやつだ。恋人もできたことがないね(いい人なんだけどね、といわれちゃうのです)

 人質になってねと気軽に言うような国にちょっと戻りたくはないし。

 そうして、殺さず勇者の僕は魔王の治める国でのんびりスローライフを送ることになったのだった。

読んでくださってありがとうございます!

やまなしおちなしなゆるーい話ですが、よろしければのんびり書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。


4/14 サブタイトルつけました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あら、もう勇者様が、魔王を攻略し終わった後なんですね。 で、勇者様は人質に……。 なかなか面白そうな展開ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ