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A love capriccio  作者:
66/67

彼と彼女の接点<綺羅の章>

 「それで何の用なの? いきなりこんなところに連れて来て」

 「すみません。少し聞きたいことがあるんですが」

 「何を聞きたいの?」


 いつもとまったく違うすみれの素っ気ない態度に要は、困惑する。彼女は、誰にだっていつも明るい笑顔を絶やさない。それが自分に対して悪意を持つ人間だとしても。それなのに、彼女のこの態度は何なのだろうか。


 「早くしてくれる? 生徒会が忙しいのは、あなただって知っているでしょう?」

 「きぃちゃんのことだ」

 「渡瀬さん?」

 「そうだ。最近、きぃちゃんに対して嫌がらせがある。それに関係しているんじゃないか?」

 「私が? そんな事で呼び出したって言うの? いい加減にして。私は、そんなに暇じゃないの」


  すみれの態度に不快さを感じた瑠璃だが彼女の言葉に嘘はない事は感じ取れる。だとしたらいったい誰が嫌がらせの首謀者なのかまったくけんとうがつかない。


「話はそれだけ? なら、もう行くわ」

「ちょっと待った! 話はまだ終わってないわ!」


瑠璃達の話にまったく耳を貸そうとしないすみれに静音は、声を荒げ三人の会話に割って入る。


 「先輩、彼女から一体何を聞いたんですか?」

 「? 何の事?」

 「あなたの従姉妹の斎藤さんから何を聞いたのかって聞いているんです」

 「従姉妹!?」

 「瑠璃、ちょっと黙ってて。彼女のこと、妹同然に可愛がっているらしいですね。斎藤さんは、あなたとの関係を伏せているらしいですけど」

 「別に隠しているわけじゃないわ。聞かれないから答えてないだけよ。あの子の母親は私の父の妹で、小さい頃に父親を亡くしてからは、うちの両親は我が子同然に可愛がっているの。もちろん、私もね。それがどうしたって言うの? どこにでもある話だと思うけど」


 静音が何の意図を持ってその質問を投げかけてきたのか、すみれは本当に分かっていないようだ。それは瑠璃達も同じで黙って話を聞いている。


 「そうですか? 彼女のせいであなたは後継者からはずされたらしいですね。父親を早くに亡くした孫を不憫に思った祖父によって。その上、孫可愛さで彼女の初恋を叶えようとまでしている」

 「…………確かに後継者からは、外されたわ。でも、私はそれで良かったと思っているの。私にもやりたいことは、あるし。逆に申し訳ないとも思っているわ。まぁ、彼を婿に取ろうとしていると聞いた時は、驚いたけど。それでも、あの子の意思を無視した縁談話じゃないし。萩野君次第かしら?」

 「それは無理です。俺には綺羅がいますから」

 「そうかしら? 先のことはまだ分からないじゃない? あの子に気持ちが向くかもしれないし、渡瀬さんが他の人を選ぶかもしれない」

 「そんな事はありえないし。させませんから」


 力強く断言し笑う要に瑠璃達は、距離を取る。その笑顔にうすら寒さと隠しきれない程の怒気を感じ取ったからだ。要に執着された綺羅に選択の余地はないらしい。


 「彼女は、あなたたちと一緒にいると目立つから迷惑らしいわよ。愚痴られて迷惑だったってあの子も言っていたもの」

 「そんな事、きぃちゃんが言うはずないだろう!!」


 すみれの言葉にいち早く反応したのは、瑠璃だった。その小さい身体からは想像つかないほどの一喝で、静音と礼奈は耳を押さえる。


 「チビの言う通りだ。目立つからという理由で自分が好意を持っている人間から自ら離れることはない。綺羅を見くびるな。大方、あなたの従姉妹が嘘をついたに決まっている」

 「何ですって!! あの子がそんなことをするわけないでしょ!!」

 「理由はあるわね。彼女は、要のことが好きなんでしょう? 二人を引き離したかったんでしょうね。それにしてもそれだけ御執心って事は、外見だけにつられてきた子じゃないってことよね。要、彼女と何かあったの?」

 「俺はその斎藤という人間を知らない」

 「静音、そこまで調べは?」

 「もちろん、ばっちりよ。まぁ、要と会った時の彼女は全然外見が違うから分からないのは無理ないけどね。はい、これが要と初めて会った当時の彼女の写真よ」


 差し出された写真を見て要は、目を見張る。そこに写っていたのは、ぽっちゃりとした外見の少女。


 「…………彼女だったのか」




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