意外な組み合わせ<綺羅の章>
最初は、義務感からだと思っていた。1人ぼっちの自分を親友から頼まれたから。でも、だんだんと違和感を覚えてきたのだ。本当に、それは義務感からなのか。だけど、そんな事はないと頭から決めつけることしか出来なかった。
―――――自分なんかを好きになってくれるはずがない。
そう思いこむことで逃げていたのだ。彼と向き合う事、そしてその結果起こるであろう事から。
「でもさぁ、あれは分かりにくいと思うわよ。綺羅じゃなくても分かんないって!!」
「そうね。始終側にいるだけで、何を言うでもなく、行動するでもなくだものね。でも、綺羅なら分かると思ったの。あの表情の無い男の感情の揺れが分かるから」
「え? 表情あるよ。要君」
「それは、きぃちゃんだからだ。他の人間の前では、あのきれいな顔に作り笑いを浮かべてるんだぞ! ずっと! 正直、気持ち悪い。感情というものがあるのかと時々疑う」
要に対する瑠璃達の評価に、ちょっと驚いてしまう。要君は、昔から人当たりも良くて色々な人から頼りにされていたから。
「あのさ、頼りにされているからって人当たりが良いとはかぎらないのよ。表向きは、優等生って感じだけど、裏じゃなに考えているか分からないタイプで私は苦手~」
「静音とあいつは、性格的に正反対だからな。気が合うことはないだろう。間にきぃちゃんが入れば少しはましだろうが」
「そうね~、もーちょっと柔軟性があればいいんだけど」
初めてかも、要君にたいしてこんな辛口コメントを言った女子は。
「綺羅。今度、よく観察してみるといいわ。他の女子と話す時の彼と自分と話す時の彼を。あの微妙な表情を読めるあなたなら、すぐに気がつくと思うから」
礼奈の意味深な言葉に思わず首をかしげる。すると、そんな自分を見た彼女は笑みを浮かべた。
「大丈夫。勇気を出して?」
綺羅は、その言葉に反射的に頷いていた。
彼女と話しているといつも不思議な気分になる。その理知的な瞳に見つめられると何もかも見透かされている気がするのだ。だから、礼奈と相対していると若干の緊張が走る。それでも彼女といると色々なことでザワツク心が穏やかさを取り戻す。
「うん。よく見てみることにす…………」
「おっ! 礼奈さん、発見!!」
礼奈に決意を伝えようとした瞬間、後ろから元気な男子の声が響き渡る。
「え? 河本君………と要君!?」
そこには、大きく手を振る圭太と周りに頭を下げる要がいた。