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A love capriccio  作者:
55/67

多忙な彼女とその理由<綺羅の章>

 「ふぅ~、疲れた~」

 「…………ちょっと休憩しましょう」

 「うん」

 「何だ、三人ともだらしないな。これくらいで疲れるなんて」


 学校の近所にあるショッピングモール。その中にあるカフェのオープンテラスの席に陣取った綺羅達は、顔を引きつらせる。

 そんな綺羅達に気づくことなく、瑠璃はメニューを見ていた。疲れを全然見せていない彼女に、綺羅は、すごいなと思った。

 モールに来るなり、片っぱしからお店を見て周っていたので、けっこう足にきているのだが瑠璃は、全然疲れた様子がない。


 「る~の底なしの体力と私達の平均的な体力を一緒にしないで」

 「最近、運動してないせいね。やっぱり、委員会なんかに入るんじゃなかった」

 「私も最近、運動不足なんだよね」

 「よし! この本日のケーキセットにしよう!!」

 「る~、人の話は聞きなさいよ」

 「ケーキを前にしたるぅに何を言っても無駄よ」

 「うん、私もそう思う」


 瑠璃は、三度の飯よりスイーツが好きとつね日頃から言っている。本当によく食べているのにあの細身とは、本当にうらやましいかぎりだ。

 まぁ、朝はお家の道場で稽古をしてから更に学校で朝練、そして放課後も部活をした上に夜も家で稽古しているらしいから、いくらカロリーを取っても全てエネルギーとして使いきっている。だからこそ、体力維持の為にもスイーツは、必要なんだろうけど。


 「私は、紅茶だけでいいわ」

 「私も。綺羅は?」

 「私は、コーヒーかな」


 それにしても、疲れた。でも、精神的には全然疲れていない。何よりも気分が高揚していて、まだまだ行けそうである。

 家族と出かけるのは、精神的な疲れが大きく出るのに不思議だ。


 「礼奈は、部活に入らないのか? 確かに委員会は、忙しそうだが」

 「あぁ、無理でしょ。委員会もそうだけどあいつの世話と後始末で大変だもん」

 「あいつ? 世話? 後始末?」


 礼奈の忙しさは、友人としての時間が短い綺羅から見ても異常だ。その忙しさの理由を聞いたことがないのでついつい口をはさんでしまう。

 そんな綺羅に瑠璃と静音は、その理由を教えてくれた。


 「うちのクラスに馬鹿がいるだろう?」

 「馬鹿?」

 「それじゃ分からないわよ。ほら、いつも率先して騒ぎを起こすのがいるでしょう?」

 「…………河本君?」


 2人の説明から浮かび上がる人物が1人だけいた。瑠璃達と仲良くなる前から、色々と世話を焼いてくれた男子。クラスのムードメーカーでもあり、トラブルメーカーでもある彼。


 「礼奈と馬鹿は、初等部の頃からのくされ縁で中学に入学してから付き合ってるんだ」

 「我が学園の七不思議の1つにされたわよね」

 「そうなの?」


 それまで沈黙を守っていた礼奈に問いかけると、困ったような笑みを浮かべた後、頷いた。


 「みんな、不思議がるのよ。私からすれば互いに持ちえていなものを補えるし、あの明るさに救われるから当然のことなんだけど」

 「そうか? 一方的に礼奈が迷惑をかけられているようにしか見えん」

 「あたしは、お似合いだと思うけどね~」

 「そうか?」

 「瑠璃も恋すれば分かるわよ。ね、綺羅?」

 「え? 私?」

 「あいかわらず自覚がないのね。私は、それでいいと思うけど。時にその鈍さは、凶器よ」

 「鈍さが…………凶器?」


 礼奈の優しく、けどどこか厳しさを持ち合わせた声音に諭される事になった綺羅は、戸惑う。そしてある人の顔が脳裏をよぎると、そんな訳ないと思いなおす。

 

 ――――――でも、気のせいじゃなかったら? 彼が私を思ってくれているのだとしたら? 私はどうするの?

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