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A love capriccio  作者:
54/67

彼のアドバイス<綺羅の章>

 「待てよ、委員長」


 いきなり後ろから肩を掴まれた要は、不機嫌な顔で相手を睨みつける。すると、その声の主は、にやりと笑った。


 「ひっでーな。教室出てからずっと呼んでんのに止まんねーんだもん」

 「誰だお前?」

 「は? クラスメイトの顔を覚えてないのかよ! もう入学してどんだけたってると思ってんだよ」

 「嘘に決まってるだろ。河本 圭太」


 自分を追いかけてきたこの男。いつもクラスの中心にいて馬鹿騒ぎを起こしている。その騒ぎの尻拭いをする自分と風紀委員の麻賀にとっては、頭痛の種だ。

 なので、これくらいの冗談は、許されるだろう。

 それでも、不思議と嫌悪感はない。誰に対しても態度を変えず、同じように対等に付き合い、男女問わずすぐ友人になってしまう。


 「で、何の用だ?」

 「ん? 不器用な委員長にアドバイスをしに」

 「お前に何をアドバイスされるんだ? 逆に俺の方が説教をしたい」

 「あ~、まぁそれは置いといて。いや、最初は委員長達を見てて楽しかったけど、あまりの進まなさっぷりにイライラしてきたというか」

 「俺は、今のお前の発言にイライラする。はっきり言え」

 「今のままじゃ、渡瀬さんは委員長の気持ちには気づかないって事」


 突然の河本の発言に要は、戸惑う。まさか、自分の気持ちを他人に知られているとは思ってもいなかったのだ。

 そんな要の戸惑いを感じ取ったのか河本は、溜息をつく。


 「あのなぁ、あんなにあからさまな態度を取られたら誰だって気がつくって。それに昔から噂だったからな」

 「噂?」

 「要の側にいる子には、手を出すな。出したら、その子の兄と要にぼこられる。それも男女問わず」

 「別にそこまではしない。ただ、お願いするだけだ」

 「いや、それはお願いではなく脅しだから」


 お願いされる側の人間を威圧し、丁寧な言い回しと笑みでそれを了承させる。それは、誰が見ても立派な脅しだ。


 「渡瀬さんも、瑠璃達と仲良くなったことで変わってきてる。だったら、委員長も変わるべきでしょ。好きな子には、きちんと分かるようにアプローチしろって、礼奈さんからのアドバイス」

 「麻賀が?」

 「あ、俺ら付き合ってんのよ。んで、渡瀬さんと一緒に居ると睨んでくる奴がいるからどうにかしろって。好きなら好きと面と向かってアプローチもしない奴に牽制する資格はないってさ」

 「それはアドバイスじゃないと思うぞ」

 「うん? あれは、礼奈さんなりのアドバイスよ。まぁ、これからどうするかは委員長が決めなよ」

 「あぁ」

 「ここからは俺からの話ね。これから一緒に遊びに行こうぜ」

 「は?」

 「委員長も友達作んなきゃダメだってことさ。そうすりゃ周りが見えてくるって。ってことで行くぞ」

 「おっ、おい」


 一人で勝手に話を完結させるとそのまま圭太は、要の腕を引っ張り半ば引きずるようにその場を後にした。

 意外に圭太の力は強く、腕をほどけないまま目的地へと連れて行かれた。


 でも、この圭太からのアドバイスとこの行動がなければ彼女との距離を縮めるきっかけは掴めず、今も微妙な関係になっていたと思うので、今ではとても感謝している。

 圭太に面と向かって言うことはないけれど。



 


 




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