変化<綺羅の章>
―――――キ―ンコーンカーンコーン。
授業終了の鐘が鳴り響き、教師が出て行くといっきに教室は騒がしくなった。
これから昼休みということもあり、購買へ行く者、学食へ行く者などで忙しない。
そんな中、綺羅は持参した弁当を机に置き、何やら考えている。そんな彼女の元へいつものように要が弁当を手に近づいてきた。
「綺羅。どうした? 今日も外でいいだろう?」
「要君!」
「何だ?」
緊張した面持ちで自分をじっと見つめてくる綺羅に要は少しだけ嫌な感じがした。こういう風に自分を強く見据えてくる彼女の口から出てくるのは良い事ではないと経験上分かっている。
「…………今日は、要君とは食べない。他に食べたい人がいるの。ごめんなさい」
「誰と食べ…………」
そう言うなり綺羅は、自分の返事を待たずに立ち上がり、教室前方の窓際の席へと向かっていた。その先に居るのは、女子3人組。このクラスで、いやこの学年で何かと話題に上る人物達の処。
「さっ、佐々木さん!!」
突然自分達に近づいてきたクラスメイトに瑠璃以外の2人は、不思議そうな顔を浮かべている。そんな中、瑠璃は1人だけ綺羅が来ることが分かっていたと言わんばかりの態度と楽しげな笑みで綺羅を迎える。
「何だ、渡瀬?」
「いっ、一緒にお弁当食べてください」
「…………」
相手からの反応が来ない中、綺羅の心臓はどくどくと早鐘を打つように鳴っていた。時間にして数秒だがひどく長く感じる。しかし、すぐに明るい声で答えが返ってきた。
「あぁ、もちろんいいぞ。そこに座れ」
「ありがとう」
瑠璃の隣の席に腰を下ろすと自分を見つめてくる2人の視線に気がつく。瑠璃と一緒にいたのは、クラスの副委員の栗本 静音と風紀委員の麻賀礼奈で瑠璃と同じくこのクラスの中心的存在だった。
「る~、いつの間にナンパしたの?」
「本当に。るぅは案外手が早いのね」
「人聞きの悪いことを言うな。昨日、話す機会があったから私は、いつも教室で昼食をとると告げただけだ」
「あの! もし、2人が嫌ならいいです」
そう言って立ち上がろうとする綺羅に瑠璃達は笑って言った。
「嫌なわけないだろう!」
「る~、彼女が断りを入れてるのはあたし達。それにあたしは嫌がってないわ。逆に興味があった子が自ら来てくれたんだもん。大歓迎よ~、渡瀬 綺羅ちゃん」
「うん。きちんと話してみたかったの、あなたとは。だけど、あちらのガードが固くてね」
楽しそうに笑って手で座るように促す静音と意味深な視線を教室の後ろへ送る礼奈に綺羅は、ホッとした。
「さぁ、早く食べよう」
「はいはい」
「そうね、食べながら話しましょう」
「はっ、はい!!」