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A love capriccio  作者:
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入学式<綺羅の章>

 ―――――中学1年の春。

 綺羅は、1人で校門の前に立っていた。周りには、自分と同じ新入生とその親達が笑顔で写真を撮っている姿が目に付く。


 (…………楽しそう。当たり前か…………)


 「綺羅」

 「かっ、要君。おはよう」


 そこに立っていたのは、幼馴染の萩野要君だった。父親同士が仲が良い為、小さい頃からの顔見知りで、兄の親友。

 綺羅は、少し彼のことが苦手だった。何より、真っすぐと見つめてくるその強い視線が。自分の卑屈な心を全て見透かされているようで嫌い。


 「クラスは、8組だ。同じクラスだな。よろしく」

 「…………よろしく」


 それから互いに話すことなく教室へと向かう。しかし、周囲の視線が痛い。その視線の多くは、女子生徒からで、多分嫉妬されているのだと思う。

 昔からなのでいい加減慣れてはきたが、それは兄の輝が側にいてくれたから耐えられていただけで、1人ぼっちの今は耐えられそうもない。

 そもそも何で彼は、自分と一緒にいるのだろう。


 「萩野君、おはよう」

 「おはようございます。高岡先輩」

 「入学おめでとう。と言っても持ちあがりだから余り感慨はないかしら?」

 「そうですね。先輩は、何故ここに? 式の準備で忙しいのでは?」

 「その式の事でよ。軽くリハをしたいからホールに来てもらえる? 新入生代表君」


 2人で歩いていたところに突然現れたのは、先輩らしい女子生徒。大きな瞳が印象的な華やかな美少女で、どうやら式の運営に関わっているらしいことが会話から分かる。

 普段はあまり笑みを見せない要も、親しいらしく、笑みを浮かべて会話に応じている。


 ―――――邪魔だよね、私。


 しかし、2人の会話を邪魔するのも気がひけるのでどうしたものかと考えていると、視線を感じ顔を上げるとその先輩と視線があった。


 「彼女は?」

 「幼馴染です。彼女の兄とは友人で、学校が別れる妹を頼むと」

 「渡瀬です」

 「私は、高岡すみれ。生徒会の副会長をやっているの。よろしくね」

 「よろしくお願いします」

 「渡瀬さん、萩野君を借りてもいいかしら。式まであまり時間がないの」

 「もちろんです。要君もありがとう、ここまで来れば1人で大丈夫だから」

 「そうか。じゃあ、また後で」

 「またね、渡瀬さん」


 2人は、そのまま連れだってホールへと向かって行った。それを見送った後、綺羅は大きく深呼吸をして気合いをいれた。

 

 ――――――1人でも大丈夫。


 「さぁ、行かなきゃ」





 

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