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A love capriccio  作者:
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代償<綺羅の章>

 ―――――行かなくちゃ、行ってちゃんと話さなきゃ。


 教会を飛び出した綺羅は、必死に走っていた。

 自分が逃げていたせいで、瑠璃を傷つけてしまった。自分が負うべき痛みや苦しみから目をそらして何の関係もない彼女にそれと同様のものを負わせてしまったという事実。


 ――――――何て自分勝手なんだろう。だから、輝に反論も出来ないんだ。自分を守る事だけ考えてばかりの醜い自分に気づきたくないから。


 いつだって手を差しのべられて、守ってもらうのが当たり前だと思っていた。何て自分は傲慢で愚かなんだろう。

 あの時だって、そうだ。彼女の背に隠れて終わるのを待っていた。

 あんな事、彼女の真っすぐな性格を思えば苦痛だったろうに。


 「はっ、はっ……………。いた、瑠璃ちゃん」


 慣れない全力疾走で息が乱れる綺羅だったが、その視界に校門と瑠璃の姿を見つけるとさらに加速する。


 ――――――待って、瑠璃ちゃん。今、行くから…………。


 悲鳴を上げる肺と心臓を無視して走り続けた綺羅だったが、残念ながら10メートル手前の辺りで瑠璃達は車に乗って去って行く。

 それでも、追いかけようと走り続ける綺羅の腕を強く掴んだ人がいた。


 「待ちなさい、綺羅」

 「そうよ」


 そこに居たのは、礼奈と静音だった。その表情は、若干険しい。何より怒りを隠そうともしないその態度に、綺羅は体をこわばらせる。


 「あのさぁ、綺羅」

 「いつまで逃げているの?」


 どう切り出そうか迷っている静音とはよそに礼奈は、ストレートに言葉をぶつけてくる。


 「いつまでも自分の弱さから目をそむけて、そのあげくあなたを慕う瑠璃を傷つける。あの時だってそう。自分で立ち向かうべき事を瑠璃にまかせて。それでも、瑠璃が望んでそうした事だから私は何も言わなかった。でも、今回は言わせてもらうわね。あなたは、卑怯よ。これからも変わらないのだったら、私はもうあなたを友人とは思わないから」


 一方的に告げるとそのまま礼奈は、校舎へと戻って行った。その後ろ姿に声をかけることも出来なかった綺羅。その傷ついた表情に静音は溜息をつく。


 「綺羅。これ以上逃げちゃダメってことくらい分かるわよね? あなたが自分の過去と戦って勝たなければ、今度は多くのものを失うわ。あの時だって多くのものを失いかけたのよ?」


 静音の言葉にあの時の事が脳裏によぎる。あれは、瑠璃と友達になった直後の出来事。今でも忘れられない自分の罪。

 

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