生徒会長とは?<綺羅の章>
教室に入ると綺羅は、ホッとした。見知った顔ばかりのこの空間が一番安心する。
「はよ。大変だったみたいじゃん」
「圭君。おはよう。うーん、もう慣れちゃったよ」
「あと、しばらくの辛抱だって。あと一カ月もすれば、要がどんな人間か理解して誰も近付かないって」
圭太の言葉に綺羅は、否定も肯定もせずに笑ってごまかす。
「ところで礼奈さんは?」
「一度、生徒会室に行ってくるって」
「え〜。ったく、要にしても礼奈さんにしてもまだ正式メンバーじゃないんだからこき使うなよな。しょうもない、会長だなぁ」
「恨むなら、あのしょうもない男を生徒会長にした教師達と先輩方に文句を言うんだな」
「あれ? 瑠璃、知ってるの? あの会長さん」
「礼の弟だ」
軽い舌打ちとその眉間の皺にあまり良く思っていないことが見て取れた。
「あいつは、やる気がないくせにほいほい引き受ける。そして周囲に害を催す。やる気がないなら始めから引き受けなければいいんだ」
「人からのお願い事は、なかなか断れないからね」
「違う! きぃちゃんの場合と一緒にするな。きぃちゃんは、引き受けたからにはきっちり真面目に役目を全うするだろう? あいつは、最初からそんな気は全くない上、わざとやらないんだ。そしてその様を内心笑ってみてるんだ!!」
瑠璃から出る会長の人物評価に綺羅と圭太は、頬を引きつらせる。
確かにそんな人間なら嫌だ。最初から手を出さずにいて欲しい。それが精神衛生上ありがたい。
「でもでも、顔はさすがに礼人さんの弟って感じよね」
「へー、静音がそう言うからには相当イケメンだな」
静音のイケメンチェックは、かなり厳しい。その代わり、彼女が認めた男達は本物だと他の女子生徒も認めるところで、彼女の不定期発行のイケメンランク新聞は、人気を博している。
「か・お・だけな」
「あら〜、顔だけけっこう。世の女性にとっては目の保養が出来て素晴らしい存在よ」
「静音。いつか、痛い目見るぞ」
「ふふふ。肝に銘じておくわ」
結局、要と礼奈が戻ってきたのは、始業のチャイムと同時で挨拶を交わすだけに終わった。