Girl's Talk 1 <夏休み編>
期末試験も終り、それぞれの部活の最後の試合等を終えた八月のある日。瑠璃、静音、礼奈、それに綺羅の四人は女子だけでショッピングに出かけていた。
そして、行きつけのショッピングモール内のお店をあらかた制覇した彼女達は、休憩も兼ねて近くのカフェに入った。
「それで、る〜達はどうなの?」
「何がだ?」
「何がって、礼人さんとはどうなったの?」
「夏休みの宿題を見てもらって、最後の大会の応援に来てもらった。…………悪いが、静音が期待するようなことは何もないぞ」
瑠璃の言葉に「なーんだ」と静音はつまらなさそうに口をとがらせる。そんな静音を見て礼奈は、嘆かわしいと言わんばかりに溜息をつく。
「だって、あれだけの騒ぎだったんだもの。展開も早いかなって」
「それはないでしょう。一応、親公認とは言え、育成条例に引っ掛かるような真似はしないわよ」
「それもそっか。じゃあ、綺羅は?」
「え? 私?」
「そうよ〜、日ごろからあれだけくっついてるんだもの。夏休みとなればねぇ」
「静音! きぃちゃんに変なことを聞いて困らせるな」
「長期休暇中は、要君は家にいないから。休み中は、ほとんど会えないの。逆に学校にいる時のほうが一緒にいられるの」
「へ〜、意外だわ。あいつのことだから、毎日毎日、綺羅にべったりだと思ってた」
少し寂しげに笑う綺羅を瑠璃は心配気に見つめる。
まったく、あの男は一体何をしてるんだか。普段、あれだけきぃちゃんにくっつくなとか言うくせに肝心な処でダメじゃないか。
「まぁ、彼にも色々立場があるんでしょう。仕方ないわよ。静音、あなたこそいいの?」
「何が?」
「あなたにも言えることでしょう?」
礼奈の言いたいことをさっした静音は、楽しそうに笑う。
「関係ないわよ。あたしは、あの条件さえ守れば自由だもの」
「その条件を覆そうとは思わないの?」
「別に。反抗するより受け入れたほうが楽だし、今を楽しめるもの」
そう言って話は終わりだと言わんばかりに手を振る静音に礼奈もこれ以上の追求は諦めた。
「でもさぁ、瑠璃もキスくらいはしたんんじゃないの?」
「ぶふぉっ!!」
「瑠璃ちゃん!」
いきなりの質問にちょうど飲み物を口にしていた瑠璃は、思い切り噴き出す。そして、飲み物が気管にまで入ったせいか瑠璃は、咳込み続ける。慌てて綺羅がその背をさすり、礼奈が零した物をナフキンで拭いてやる。
「いっ、いきなり何を言うか!」
「え〜、純粋な興味ってやつ? それで? どうなの?」
このまま黙っていても、静音の追求は止まらないと瑠璃は、判断する。きっと、静音は暇なのだ。だから、こうやって自分達を遊びの種にする。
(誰だ、こいつを暇にさせているのは!!)
ここには、いないあの男に殺意が湧いてくる。
「したさ。といっても婚約話が出る前のことだ。中一の頃だ」
「「「え?」」」
瑠璃から出た予想外の言葉に静音だけではなく、礼奈と綺羅も大きな声をあげる。
「まぁ、あの件に関しては、先日詫びが入ったので不問に処した」
「え〜! 聞きたい! その話、詳しく聞きたい!!」
「何だ、その嬉しそうな顔は!! こんな公共の場で話したくなどない」
「じゃあ、今日は、瑠璃の家でお泊り会。女子だけの」
「そんな急に。うちはかまわないが、静音達はそうもいかないだろう…………」
「え、うちなら問題なし。礼奈と綺羅は?」
「かまわないわ」
「だっ、大丈夫だよ」
断ってくるだろうと思っていた二人まで、いつの間にか乗り気になっている。目を輝かせて。
「………………分かった」