疑い<瑠璃の章>
「こら〜、佐々木! 放送聞いてないのか!!」
生徒会室の扉を開けるなり、ジャージ姿の担任が大声で叫ぶ。その突然の登場と大声に、要達はうるさそうに顔を向けた、一瞬だけ。
要達は、この少々熱血風味の担任が苦手だったりする。その為、視界にいれた後は、それぞれ溜息をついたり視線をそらしたりと反応は様々だった。
「先生、瑠璃なら放送が聞こえた直後に事務室に向かいましたが」
代表して、というか他のメンツは会話をする気がないので仕方なしに要が相手をする。
「来てないから、俺が呼びに来たんだろうが!!」
「だから、叫ばないで下さい。耳が悪くなります。それに本当に居ませんから」
その言葉と室内を見渡した結果、担任は「あぁ、そうか。悪かった」と言って去って行った。
「まったく、うるさい。あれが担任とは、情けない」
「本当に。いくらうちの学園の卒業生だからと言って、雇用するならもう少し考えて欲しいものね」
「あっれ〜、礼奈があの馬鹿に毒を吐くなんてめずらしい」
「ちょっと、納得がいかないところがあるから」
「何それ?」
「今回の試験の採点について」
「あぁ、そう言えばさっき瑠璃と俺のテスト見て首捻ってたよな?」
「確か、あれと榊原さんは、高校時代先輩後輩の間柄だったはず」
「そうね、馬鹿のが1つ上じゃなかったかな?」
「そう、やっぱり。これは後で確かめたほうがよさそうね」
そう言った後、礼奈がするどい目つきで担任が出て行った扉を睨みつける。その様子を見て圭太と静音は顔を見合わせた。
「ねぇ、要君。瑠璃ちゃん、どうしたのかな?」
「あれから5分はたってるな。いくらチビでももうたどり着いていてもおかしくない」
「私、ちょっと探して来る」
「あぁ。お前ら、手分けしてチビ探すぞ」
要の言葉に各々返事を返した静音達は、それぞれ校内に散って行った。