2人に何が?<瑠璃の章>
「とまぁこんな感じだ」
「るぅが木から落下して泣くね。悪いけど、想像がつかない」
「そうよね〜。るーだったらケロッとしてそうだけど」
「2人とも!! 瑠璃ちゃんだって小さかったのよ」
礼奈と静音の反応に綺羅が抗議の声を上げた。すると、当の本人がそれを止める。
「きぃちゃん、2人の反応が正しい。私も別に自分が怪我するかもと思って泣いていたわけではない」
「…………じゃあ何で泣いたの?」
「あの時、私はちゃんと着地をしようと態勢を整えようとしたんだ。それなのに、その着地予定地点に人影が見えて私は心底驚いた。そのせいで、そのまま抱きかかえられることになったんだ。自分1人なら怪我などしないのに、まさか他人を巻き込むとまで思っていなかったからな。その上、相手は見事に頭から後ろに倒れた。怪我をさせてしまったのではないかと思って心底恐ろしかったというのが真実だ」
そこまで一気に語った瑠璃の勢いに押された綺羅は、「そうなんだ」とだけ返す。
「でも、そんな昔からの知り合いなら私達と1度くらい顔を合せていてもおかしくないはずよね」
「そうね〜、イベント前とかはるーの家で合宿状態だし」
「あぁ、中1の途中からは、あまり顔を出さなくなったからな」
そう話した途端に顔を顰め、一瞬するどい殺気を放った瑠璃に皆、固まる。意外にも一番早く我に返ったのは綺羅で、「そうだ、新作があるの。ちょっと待ってね」と言っていそいそと冷蔵庫へと向かった。
一方、要と圭太はどうにか立ち直った後、はーっと溜息をつく。
「恐ろしい…………」
「まったくだ。それにしても…………」
要は、腕を組むとジッと瑠璃を見つめる。
「中1か…………」
「何?」
「いや、その頃からだと思ってな」
「だから、何が?」
「あいつが、極端に異性との関わりを故意に断ち始めたのは」
「あぁ、そう言えば。文化祭の劇も強固に拒否したよな。眠り姫役だっけ」
「そう。最初は、最後の方まで寝ているだけだって話たら、渋々だが承知した。だけど、途中から急にやりたくないって駄々をこねたんだ」
「やっぱり原因は、あの人だよね?」
「それしかないだろう。問題は、何があったかだ」