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最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活  作者: 四季
第五章 村

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四十五話「カザフさん、帰宅」

「ただいまー」

「あ! カザフさん!」


 カザフがナナの家へ帰った時、既に日は落ちていた。

 一人待っていたナナは、カザフが帰ってきたことに気づくと、すぐさま彼に駆け寄る。


「待ってました!」

「ありがとう。ただいまー」


 光の速さでカザフに駆け寄ったナナは、数秒経ってから、彼が持っている袋へ視線を向けた。入手した素材でふっくらしている袋を、じっと見つめる。


「素材、何かありました?」


 ナナが尋ねると、カザフは思い出したように「あぁ」と言って、袋の口を開け始めた。


 五秒ほどで袋の口を開ける。

 そして、その中に入っているものを一つ一つ出していく。


「カニカニクモモドキの脚」

「か、蟹? 蜘蛛? ……何だかおかしなネーミングですね」


 カニカニクモモドキという蟹なのか蜘蛛なのかさえ分からない名称に、ナナは首を傾げていた。

 ナナは冒険者でないため、魔物には詳しくない。

 これこれを使ったアクセサリーを、と客から頼まれることは時々ある。だから、魔物という存在にまったく縁がない人生だったというわけではない。が、耳にしたことのある魔物名は限られている。


「キュウビジャクシの虹色糞」

「糞……ですか?」

「うん。色が綺麗だよ。しかも、消炎作用のある薬にも使えるんだ」

「へ、へぇ……凄いですね……」


 ナナは少し引いていた。

 持ち帰ったものの中に糞があるなんて思わなかったのだろう。


「パペの眼球、パピの眼球」


 カザフは迷いなく述べる。

 冒険者にとって魔物の眼球は、普通に手にすることがある部位だ。


 しかしナナは驚き戸惑っていた。


「え、眼球って……」

「これは綺麗だよ」

「で、でも……眼球、くり貫いたんですか?」

「うん! そうだよ」


 冒険者であるカザフのセンスについていけないナナは、若干引き気味で「へぇ……」と漏らしていた。


「最後、テアシマンの髪飾り」

「髪飾り!?」


 もはや素材でなくアクセサリーになってしまっていることに、ナナは衝撃を受ける。


「その魔物、髪飾りなんてしてるんですか!?」

「うん。人に似た魔物だから」

「人に似た……えぇっ……」


 魔物と呼ばれているのだから人ならざる形のものなのだろう——ナナはそう考えていた。だからこそ、人に似た魔物がいるということに衝撃を受けたようだ。


「ま、腕と脚の本数が人間とは違うんだけどね」

「……あ、そうなんですか」


 ナナの顔に安堵の色が浮かぶ。


「髪飾り持ちはレアなんだよ」

「珍しいんですか?」

「うん。オスだと持っていないし、メスでも絶対持っているってわけじゃないからさ」


 カザフは入手したものを床に並べきると、改めてナナの顔を見つめる。

 そして、告げた。


「以上だよ。これ全部あげるから」


 集めてきたものを披露することができたカザフは嬉しそう。満足したような顔つきをしている。


「ナナが貰っていいんですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます! あ……でも、糞は要らないです」


 アクセサリーの材料にするのは難しい虹色糞は、ナナには必要なかったみたいだ。


「え! 要らない!?」


 要らないと言われることを想定していなかったカザフは、純粋に驚いていた。驚きを隠そうと考える余裕もないほどに。


「すみません……アクセサリーには使えないので」

「で、でも、消炎作用が……」

「それはカザフさんが使って下さい」

「あ……うん、分かった。そうするね」


 カザフは残念そうに言った。

 が、すぐに気を取り直す。


「そうだ! じゃあ僕は、この虹色糞で、薬を作るよ!」


 一度はショックを受けたカザフ。しかし、それで折れるほど弱い心の持ち主ではなかった。切り替えは一般人より早い。


「それで薬を?」


 ナナはさりげなく、カザフが手に持った虹色糞に注目している。


「うん。どうかな」

「良いと思います。それなら無駄にならないですし。でも、カザフさんが作るんですか?」

「そうそう」


 かつて立派な冒険者の師がいたカザフは、簡単な薬の作り方も知っている。まだ子どもだったカザフに、師が自ら教えてくれたからだ。


「カザフさん、薬なんて作れるんですか?」

「うん。まぁ薬って言っても……そんな複雑な薬じゃないけどね」

「凄い……!」


 ナナは感心して発した。

 そんな彼女に、カザフは求める。


「要らない器とかある? 深さがあると助かるんだけど……」

「ありますよ」

「それ、貰っても良いかな?」

「あ、薬作りに使うってことですね? オッケーですっ!」


 ナナはカザフの前から去り、奥へと向かう。十数秒後、店の奥からカチャカチャと音がしてきた。そして、さらに待つこと一二分、ナナは戻ってきた。十センチくらい深さがある器を、一つ持っている。


「これでどうですか?」

「いいね。ありがとう」


 カザフは器を片手で受け取り、その中に虹色糞を入れた。


「必要なもの、他には何かありますか?」

「えっと……そうだね、スプーンとぬるめのお湯かな」


 用意する必要のあるものは何げに多い。けれどナナは嫌な顔など少しもしなかった。


「分かりました! 用意します!」

「ありがとう、本当に」

「いえいえ! 少し待ってて下さいっ」

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