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最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活  作者: 四季
第四章 協力

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三十六話「カザフさん、知識使う」

 今回の探索大会は、ナムナン真珠を多く集めた者が勝利、という条件だった。


 ナムナン真珠は貝の魔物であるナムナンが口から作り出す真珠に似た物体。アクセサリーとしてよく使われるが、武器を作る時にも使うことがある。

 というのも、ナムナン真珠に熱を加えて溶かした液体を再び固形化させると、驚きの硬度になるのである。


 刃として使われることは滅多にない。

 が、ある程度強度が必要な装飾の部分などに、使用させていることが多々あるのだ。


 開始を告げられた冒険者たちは、皆、一気に海の方へ駆け出した。ナムナン真珠を集めるためである。


 天然のものであるナムナン真珠は、存在している数に限りがある。そのため、多くの冒険者が一斉に採取するという状況下では、いかに素早くナムナンの生息場所へ向かうかが重要になってくるのだ。


「あら……皆、あっという間に行ってしまったわね」


 リズは早速出遅れていた。

 優雅な雰囲気をまとう彼女は、多くの冒険者のような厚かましさがない。

 だが今は、そんなリズも一人ぼっちではない。カザフが傍にいるからだ。見張りで参加しているだけのカザフは、リズの傍から離れる意味がない。そのため、まだリズのところに残っている。


「出遅れてしまったわ。どうしようかしら」


 片手を口元に添えながら、困ったように呟くリズ。

 そんな彼女にカザフはアドバイスをする。


「ナムナンを探すんだったら、水の流れが少ないところの方が良いよ」

「そうなの?」


 具体的なアドバイスを貰ったことが意外だったのか、リズは一瞬戸惑った顔をした。が、少しして真顔に戻ると、カザフに「この辺りで良さそうなところはあるかしら?」と問う。


「うーん、そうだねー……あの辺りとか?」


 そう言ってカザフが指差したのは、中型船がいくつか止まっているところ。小規模な入り江のようになっていて、海からは少々距離がある。


「確かに、流れはなさそうね」

「うん。確認してみる価値はあると思うよ」

「じゃあ行ってみましょう」


 さらりと言ってから、リズは、カザフが示した入り江のようになっているところに向かって歩き出す。


 カザフもリズを追うように歩き始める——が、まだ視線を感じることに違和感を覚え、周囲を警戒していた。


 リズとカザフ以外の参加者は、そのほとんどが、開始の合図と同時に海に向かっていっていた。が、リズが「虐められている」と話す三人組だけは、海の方へ向かっていっていないのだ。カザフが感じている視線は、恐らく、三人組からのものだろう。


 もちろん、カザフ自身も、そのことには気づいている。

 いつどこから妨害行動をされるか分からないため、警戒を続けているのだ。



 ◆



 カザフが示したところへ着くと、リズは海面を覗き込む。

 そして、声をあげた。


「本当! いるわ!」


 彼女の瞳には、大量のナムナンが映っている。

 敵の多い海から距離があり、流れもほとんどないその場所は、ナムナンたちの憩いの場となっているようで。魔物だけあって日頃は攻撃もする彼らだが、そこにいるナムナンたちはのんびりしていた。


「しかも大人しそうね。これならあたしでも真珠を手に入れられるわ」


 リズに続き、カザフも海面を覗き込む。


「うん。ここの子たちはリラックスしているから、真珠、一体から何個も取れると思うよ」

「あら、それは効率的ね」


 そんな風に言葉を交わしつつも、カザフは周囲を見回す。


 そうしている中で気づいたことがあった。

 それは、係員が妙に多いということ。


 なぜなのか少し気になったカザフは、通りかかった係員に尋ねてみることにした。


「あのー、すみません」

「はい?」


 黒髪で眼鏡をかけた、真面目そうな男性係員だ。


「係の方、多くないですか?」

「はい。今回の大会は係の者を多めに配置しております」


 真面目そうな容姿の男性係員は、その容姿の相応しい真面目な答えを返してきた。


「多めに? どうしてですか?」

「いつもは洞窟などで行われていますが、今回は町中での開催です。そのため、問題や揉め事が起きた場合に速やかに対応できるように、多めなのです」


 それを聞いたカザフは、純粋に「そうなんだ」と思う。

 探索大会なんて、これまでのカザフからしたらどうでもいいようなことだった。無関係だと思っていた。

 でも、今は少し興味が出てきている。

 もちろん用のない時にまで参加する気はないが。


「カザフさん! たくさん手に入ったわ」

「え。本当」


 リズの嬉しそうな声を聞き、カザフは振り返る。

 それから、リズの合わせた両手を満たすナムナン真珠を見て、思わず「おぉ! 本当だ!」と発してしまった。


「あたし、こんな順調なの初めて。カザフさんって凄いのね」

「ううん。たいしたことないよ」


 そんな時だ。

 三人組の一人、一番背の高いラクダ顔の女性が接近してきた。


「やっほー。リズちゃぁーん」


 甘ったるいいやらしい声を発しつつ寄ってきた彼女は、ナムナン真珠をたくさん持っている手の片方の手首を強く掴む。


「ちょっ……止めてちょうだい!」

「それナムナン真珠だよぅねー? 貰っていーい? いーよねぇー?」


 いきなりやって来てリズの成果を横取りしようとする背の高い女性を、カザフは制止する。


「そんなの駄目だよ」


 瞬間、女性はリズの手首をぱっと離した。


「えぇー? あたち何もしてないよぅー?」


 両手の手のひらを上へ向け、何もしてませんと言わんばかりにひらひらさせる。非常にわざとらしい動作だ。


 カザフは少しイラッとしてしまった。

 しかし、ここで乱暴な態度を取ると虚偽の報告をされてしまいそうなので、苛立ちはぐっと堪える。

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