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最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活  作者: 四季
第三章 リトット砂漠

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三十話「カザフさん、助け出す」

 いきなりのアイルの悲鳴に、カザフは愕然としながら陰から出る。もし何かに襲われているのなら、救出しなくてはならないから。


「一体何があったんだい!?」


 ここまでついてきていることは、アイルには秘密にしていた。そうしなければ「ついてくるな」と怒鳴られるから。

 でも、こうなったら仕方がない。

 後で怒られても、それでもいいから、友を助けたい。


「アイルくん! どうしたの!?」


 カザフは洞窟の奥に向かって駆けていく。

 すると、天井が高い広めの場所に出た。そこで、巨大パンダにだっこされているアイルを発見する。


「か、カザフ!? どうしてここに!?」


 四メートルほど高さはあるが、白と黒のまだらで見た目は完全にパンダ。愛らしく感じられる大きさではないが、丸い耳が少しふっさりしているところに、カザフは一瞬惚れそうになってしまった。


「謝ろうと思って、追ってきたんだ! そしたら君の叫び声が聞こえてきて!」

「そうだったのか!」


 アイルは巨大なパンダの魔物にだっこされ、ようやく正気を取り戻したようだ。もう怒ってはいない。


「うん! さっきはごめん!」

「いいぜ! こっちこそ悪かった! だから助けてくれ!」


 カザフは、もう怒っていないアイルの声を聞いてホッとする。これなら友人でなくなってしまうことはなさそうだ、と思えたからだ。


「もちろん! すぐ助けるよ!」


 相棒の大きな剣を鞘から抜きつつ、アイルをだっこしている魔物に向かってジャンプ。その跳躍は、魔物の頭の上まで届く。


「なんてジャンプだ……」


 魔物は片手でカザフを払おうとする。

 カザフはその手を回転しながら避けて、接近しながら剣を振り上げる。


「アイルくんは返してもらうよ!」


 頭の上まで振り上げていた剣を、勢いよく振り下ろす。落下する勢いも加え、刃は魔物の頭部めがけて振り下ろされて。抵抗する隙を与えず、魔物を真っ二つにする。


 パンダ風魔物の手の力が抜けた瞬間、アイルは宙に放り出された。


「う、うわぁぁ! 高ぁぁぁ!」


 だっこされていた時とはまた違った恐怖が押し寄せ、絶叫するアイル。

 アイルが宙に放り出されたことに気づくと、カザフはすぐに地面へ降りる。そして、アイルの落下地点を予測し、両手を広げてその場所に立つ。


「暴れちゃ駄目だよ! 僕が受け止めるから落ち着いて!」

「お、おうっ……!?」


 カザフに暴れないようにと指示されたアイルは、それに従い、手足をばたつかせることを止めた。


 すると体は滑らかに真下へ。

 数秒後、彼はカザフの腕に収まった。


「大丈夫? 怪我はない?」

「お、おう」

「じゃあ地面に下ろすね」

「助かるぜ」


 優しく受け止めたカザフは、アイルを地面へ下ろす。

 それから、アイルに話しかける。


「もしかして、今のがデザートパンパン?」


 先ほどカザフが斬った個体は、宝玉らしきものは所持していないようだったが、パンダによく似ていた。そのためカザフは「デザートパンパンかもしれない」と思ったのだ。


「そ、そうかもしれねぇな……」

「宝玉らしきものはあった?」

「い、いや……いきなり現れてだっこしてきやがった……」


 救出されたアイルは、額から溢れる汗を手の甲で拭いつつ、カザフの問いに答える。ただ、あまり有力な情報はない。


「他にもいるかもしれないから、少し見てみ——」


 カザフがそこまで言った時。

 アイルが捕まる前にも聞こえたあの奇妙な音が、またもや聞こえてきた。


 もしかして、と思っていたら、洞窟の奥から巨大なパンダの魔物が複数現れる。


 それらは、手に宝玉を持っていた。

 色は様々だが、皆、とても大事そうにだっこしている。


「あ、あんなにいるのかよ!?」


 カザフの背後でしゃがんでいるアイルは、声を震わせながら叫ぶ。


「こんなに可愛い生き物を倒さなくちゃならないなんて……うぅ……」


 アイルと同じように、カザフも声を震わせている。


 ただ、その理由は違う。

 アイルは恐怖のあまりだが、カザフは可愛い生き物を倒さねばならない葛藤からだ。


「理由が変だろ!」


 発言からカザフの心を覗き見てしまったアイルは、衝動的にそう突っ込んでしまった。


「だって、あんなにだっこしてるんだよ……?」

「そこじゃねぇだろ!」

「でもでも、あんなにお母さんみたいな顔してるんだよ……?」

「知らねぇよ! ありゃ魔物だ!」

「けど、耳に毛が生えててふわふ——」

「もういいもういい!」


 カザフのややずれた発言に耐え切れなくなったアイルは、話を逸らす。


「とにかく狩るぞ! あれが俺らのターゲットだ!」

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