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最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活  作者: 四季
第三章 リトット砂漠

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二十八話「カザフさん、友人と協力」

「悔しいわけがないよ。だって、アイルくんは友達だから」


 カザフは無垢な笑みを浮かべながら、迷いなく答えた。

 それを聞いたアイルは、ついに競う気を失ったらしく、はぁーっと長めの溜め息をつく。

 その溜め息を聞いたカザフは少し慌てたような顔をする。


「あ、ごめん。もしかして僕、おかしなことを言っちゃったかな」


 他者を認め、偽りのない心で褒めることができる。そんなカザフの余裕を感じ取ってしまったアイルは、勝てないと悟ったのか、顔面に呆れたような表情を浮かべて「そうかよ」と返す。とても静かな、大人のような声だった。


「カザフは相変わらずだな」

「え?」

「その余裕、ほんっとイラつく!」


 いきなり「イラつく」などという言葉を告げられたカザフは、眉をハの字にしながら謝罪。


「あ……ごめん」


 そんなカザフを見て、アイルはぷっと吹き出す。


「まさか。冗談だって」


 後からそんなことを言われたカザフは、岩のような顔に戸惑いの色を濃く滲ませた。


「それって、本当はイラついてないってこと?」

「そうだな」


 アイルの言葉に、カザフは安堵の溜め息を漏らす。


 その安堵は作り物などではないし、演技でもない——それは、誰の目にも明らかだった。

 カザフの顔つきを目にしてなお作り物の安堵だと感じる者がいたとすれば、よほどの捻くれた者か、この世のすべてを虚構と思い込んでいる者くらいだけだろう。


「良かった……。嫌われたかと一瞬不安になったよ」

「本気でそんな心配してたのか?」

「心臓に悪い嘘は、今後は止めてほしいな……」


 そう言って笑うカザフは、子どものようだった。


「で、デザートパンパンはどうやって探す?」


 そして、切り替えの早さも一流である。

 数秒前まで嫌われたかと心配していたのに、今はデザートパンパンを探すことに意識を向けている。


「勝手に一緒に探すことにするなよ!」

「え、協力しないの?」

「するわけねーだろ! 止めてくれよ、そういうの!」


 アイルは「馴れ馴れしくするな」とでも言いたげにカザフを睨む。が、当のカザフは睨まれていることに気づいていない。


「でも協力した方が効率的だと思うよ?」

「聞けよ!」

「じゃあ僕は、あっちを見てくるね。君はこの辺りを見てチェックしておいてね」

「待てよ! 聞いてくれよ!」


 思うままに話を進めていくカザフに、アイルは思わず突っ込みのような言葉をかけてしまう。


「え? 何か話があるの?」

「俺はカザフとは協力しねぇって言ってんだ!」


 アイルは躊躇なく放つ。

 しかしカザフは首を傾げるばかり。


「どうして? 一人より二人の方が効率が良いんだよ?」


 カザフの頭は効率の良さしか考えていない。

 だから、アイルの発言の意味が理解できなかったのだろう。

 一人より二人の方が効率が良いということくらい、アイルとて分かっている。それでも協力はしないと言っているのだ。


「嫌なんだよ! 慣れ合いは!」

「……僕のこと、そんなに嫌い?」

「そういう意味じゃねぇけどさ……俺はカザフと仲良しになるために冒険者やってるわけじゃねぇんだ。だから協力なんてする気はねぇ」


 アイルの発言を聞き、カザフは悲しそうな顔をする。

 ずっと一緒にいられると思っていた友達に裏切られた時のような顔だ。


「そ、そんな顔すんなよ! 卑怯だぞ!」

「僕のことは嫌い……?」

「そうじゃねぇって! 仕事に関しては協力しないって言ってるだけで……うっ」


 途中で言葉を詰まらせてしまうアイル。

 彼は、カザフの捨て犬のような表情に、罪悪感を抱いてしまった。


「……仕方ねぇ。一緒にやってもいいぜ」


 罪悪感に押し潰されたアイルは、ついそんなことを言ってしまう。


 それを聞いたカザフは、急激に明るい顔つきになり、瞳を輝かせながら「ホント!?」と確認する。その顔は、まるで、ずっと欲しかったおもちゃを買ってもらえることになった子どものようだ。


「だが倒したデザートパンパンは俺が貰うぞ!? いいな!?」

「あ、うん。でも、できれば宝玉だけ欲しいな」

「宝玉って、大事そうに持ってるという伝説のやつか?」


 アイルが言う伝説はカザフは聞いたことがなかった。


「うん。多分それだと思う」

「そんなもん集めてどうすんだ?」

「今僕が受けている依頼が、デザートパンパンの宝玉を一二個持ってきてほしいっていう依頼なんだ」


 その後の話の中でカザフが分かったこと。それは、アイルは宝玉狙いではないということだ。アイルが欲しているのはデザートパンパンの肉体そのものであって、宝玉の部分ではない。


「なるほどな。本体は要らないってか」

「うん!」

「じゃあそれでいい。俺が本体を、そっちが宝玉を、それぞれ回収して帰ることにしよう」


 地下洞窟内にいるのは、カザフとアイルの二人だけ。

 それぞれの欲しい部分が違うとなれば、倒した後素材の取り合いになることもない。


「それがいいね! そうしよう!」

「あぁ! ……だが、取り敢えずは、デザートパンパンに出会うところからだな」


 ここまで色々話してきたが、そもそも、まだデザートパンパンに会えていない。それも二人ともだ。となると、今日中にデザートパンパンに会える可能性は限りなく低い。


「うん。デザートパンパンが見つかるまで、その石、借りてもいい?」

「二つあるから一個やる」

「うわぁ! ありがとう! 嬉しいよ!」


 こうして二人はデザートパンパン探しを始めた。

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