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最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活  作者: 四季
第三章 リトット砂漠

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二十七話「カザフさん、苦労する」

 リトット族の村を出たカザフは、北へ歩く。


 何もない砂ばかりの道を行くのは少々退屈だが、時折吹く突風に負けないように、一歩一歩確実に進んでいった。


 すると、やがて、地下洞窟の入り口へたどり着く。

 砂地に半径一メートルくらいの円形の蓋があり、その蓋を開けると地下へと続く階段が現れる、という仕組みだ。


 カザフはその階段を下りていく。

 ナナから頼まれた、デザートパンパンの宝玉を手にするために。



 ◆



 砂漠の中にあるだけあって、地下洞窟へ続く階段は砂だらけ。歩くたび、じゃりじゃりと音がした。気を抜くとうっかり足を滑らせてしまいそうな階段だ。


 そこを下りきると、やがて、やや広い通路に出た。

 その横幅は、恐らく、十メートルはあるだろう。


 ちなみに。


 道がどこまで続いているかは、薄暗くて視界が悪いからよく分からない。


 地下洞窟は暗い。洞窟は太陽光が入ってこないため大抵暗めなものだが、ここは特に光がなく、視界が悪かった。地下で、太陽光が完全に入ってこないからかもしれない。

 ところどころにあるランプのぼんやりした明るさだけが頼りだ。


 カザフは、薄暗い中でも周囲への警戒を怠らず、慎重過ぎるほど慎重に進んでいく。視界が悪いところでやみくもに突き進むのは、賢い判断とは言えないからだ。


 途中、幾度か魔物に遭遇した。だが、遭遇した魔物の中に、デザートパンパンの姿はなくて。カザフはうろうろしてみるが、デザートパンパンにはどうしても会えなかった。



 ◆



 翌日も、その次の日も、カザフは地下洞窟を探索。

 その過程で、彼は、様々なものを発見した。


 岩のような壁からは、いくつかの珍しい石を入手。ごつごつしているが色鮮やかな石を見たカザフは、ナナが気に入ってくれそうだと思い、何個か集めておいた。ただ、多くなると重いので、そんなにたくさんは集められないが。


 また、壁と床の間には、植物もほんの少し生えていた。カザフは数本だけ採取。持って帰ってみることにした。


 様々なものを手に入れられることができ、そういう意味では満足だ。


 しかし、一番欲しいものがまだ手に入っていない。そのため、地下洞窟へ行くことを止められない。

 早くナナのもとへ帰って、頼まれていたものを渡したい。けれども、デザートパンパン自体が見つからないので、これでは狩る狩らない以前の問題だ。



 ◆



 その次の日。

 いつも通り地下洞窟へ向かうと、人影があった。


 砂漠のど真ん中にあるというのもあってか、ここでは冒険者はほとんど見かけない。数日潜っているが、今のところ一人も見かけていない状態だ。


 なのに、今日は人がいる。

 カザフは驚いた。


「すみませーん。少し構いませんか」


 驚きつつも、カザフは声をかけてみる。

 そうして対象が振り返った瞬間、さらに驚くこととなる。


「な……カザフ!?」

「えっ、アイルくん!?」


 振り返るまで気づかなかったが、カザフが声をかけた人物はアイルだったのだ。

 アイルは、前にいきなり勝負を仕掛けてきた、カザフより年下の若い冒険者。実力は成長途上ながら、若さゆえ勢いがある、そんな少年だ。


「どうして君がここに?」

「馬鹿にしないでくれよ、俺は仕事中だ!」

「それは分かってるよ。僕もそうだから、邪魔なんてしない。ただ、こんなところで会うなんて偶然だなーって、そう思っただけだよ」


 アイルはやや喧嘩腰な口調。しかしカザフは乗せられたりしない。彼は穏やかさを保ったまま、言葉を返していた。


「俺はな! デザートパンパンを探しに来てるんだ!」


 胸を張り、自慢げに述べるアイル。


「えっ! 本当に!?」


 まさか同じ目的で来ていたとは夢にも思わず、カザフは驚いてしまった。


「何だよ、そんなに驚いて」


 アイルはジーンズ生地のズボンのポケットに手を突っ込みながら、怪訝な顔をする。

 そんな彼に、カザフは告げる。


「実は僕もなんだ!」


 カザフはアイルと遭遇したことに驚いていたが、同時に予想外の再会を嬉しくも思っていた。今のアイルはカザフにとって数少ない大切な友人だからだ。


「そうなのか!? カザフもデザートパンパン狙いでここに!?」

「うん。デザートパンパンの宝玉っていうのを頼まれていたんだけど、なかなか会えなくて」


 カザフはそんなことを話しながら、片手で頭を掻く仕草をし、さらに苦笑する。


「実は、俺もまだ会えていない」

「え! アイルくんも?」

「だが俺はこんなものを持ってるぜ!」


 自信に満ちた表情でアイルが差し出したのは、黄金に輝く石。楕円形で、表面は滑らか。そんな、まるで樹液を固めたかのような石だった。


「それは何だい?」

「これがデザートパンパンを寄せ付けるらしい!」

「え。そんなもの、どこで手に入れたの?」


 カザフは衝撃を受けた。

 デザートパンパンを寄せ付ける石があるなんて、ちっとも知らなかったから。


「ここから南に行ったとこにある村で譲ってもらった!」

「リトット族の村?」

「そうだ! さすがに詳しいな!」


 カザフもリトット族の村である程度調査はした。有益な情報がないかどうか尋ねてみたり、村人の噂話を聞いて回ったり、色々努力はしてみた。

 だが、これといった情報は手に入らずじまい。

 それだけに、アイルがデザートパンパンに関する情報を得ていたというのは、カザフにとっては驚くべきことだったのだ。


「その村なら僕も行ったよ。でも、情報はほとんど手に入らなかった。アイルくんは入手できたんだね」


 驚きを露わにしつつ、カザフは述べる。

 するとアイルは、勝ち誇ったように鼻の穴を広げる。


「じゃあ冒険者としては俺の方が優秀ってことだな!」


 アイルは以前カザフに負けている。それも、第三者の目のあるところで、一対一の勝負に敗北した。それだけに、彼の中には「カザフに勝ちたい」という強い思いが燃えているのだろう。


 だが、若干競っているアイルとは対照的に、カザフはアイルを素直に認める。


「うん。アイルくんは凄いよ」

「だろ!?」

「うん。あの村の人たちからまともな情報を聞き出せるなんて、才能だと思う」


 悔しがるでも不機嫌になるでもないカザフを見て、アイルは眉をひそめる。


「……悔しくないのかよ」


 カザフにはその発言の意味が理解できない。


「え? どうして?」

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