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最強剣士カザフさん、のんびり冒険者生活  作者: 四季
第一章 冒険者生活
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十四話「カザフさん、素材手にした」

 新たに出現した人型魔物たちは、一斉にカザフに襲いかかってくる。しかしカザフは狼狽えたりはしない。冒険者としての活動の中で鍛え上げてきた度胸があるから、敵が出現しても冷静さを保っていられるのだ。


「せいやっ!」


 彼の相棒とも言える太い剣を手に、カザフは人型魔物を切る。確実に仕留めてゆく。


「はぁっ! どぉうりゃあっ!」


 人型魔物は、数が多く、しかも恐怖心を掻き立てるようなビジュアルだ。それゆえ、相手がカザフでなかったならば、それなりに戦えていたかもしれない。


 だが、今回ばかりは相手が悪い。

 いくら数が多くても、カザフに簡単に勝つことはできない。


 ——戦いの結果、カザフはものの数分で人型魔物たちを片付けた。


「ば、馬鹿な……。負傷していて、なお、これほどの戦闘力が……」


 元・男性の巨大な化け物は、信じられない、というように、震える声を漏らす。かなり驚いているようだった。


「次は君だよ」


 カザフは男性に怒っている。だからもう、丁寧語は使わないことにした。


「街の人を襲わせたのが君なら、僕は君を絶対に許さないよ」

「できるものなら……やってみるがいい!」


 巨大な化け物は両腕を横に開く。すると、両肩から大きな棘のようなものが生えてきた。そして、その大きな棘をロケットのように真上へ打ち上げる。


「勝てるのならばな!!」


 そう叫んだ瞬間、一旦真上へ打ち上がっていた棘が、カザフに向かって飛んでゆく。

 だが、カザフの瞳は、棘をしっかり捉えていた。


「とりゃあっ!」


 カザフは柄をぐっと握り、剣を振る。横向けに、豪快に。そうして、ミサイルのように向かってくる大きな棘をすべて弾いた。


 飛んできている棘はいくつもあった。

 だが、カザフにかかれば、弾き返すくらい一撃だ。


「何っ……!?」

「甘いよ」


 棘ミサイルをすべて弾き返したカザフは、剣を手に駆ける。巨大な化け物に急接近。巨大な化け物は、カザフが突っ込んでくるとは考えていなかったらしく、今さら慌てる。


「冒険者を殺し、街の人を殺し、そんなのは許されることじゃない」


 カザフは突っ込む勢いのまま、巨大な化け物の腹に剣を突き刺した。


 ただの剣なら、巨大な化け物の腹を刺すことなどできなかっただろう。刺そうとしたところで、剣の方が壊れていたに違いない。

 でも、カザフの太い剣だから突き刺せた。


「ぐっ……は……!?」


 ただ一撃。

 だがそれは、とても大きな一撃で。


「そん、な……我が……あり得、ん……!?」


 巨大な化け物は、ダメージを受けたことに動揺し、すぐには動けない。そこへ、カザフはさらなる一撃を叩き込む。


「ぐはぁっ……!」


 太い剣による斬撃をまともに食らった巨大な化け物は、もう動けない。力なく、床に崩れ落ちる。

 カザフの完全勝利だ。


「ふぅ。終わった終わった」


 勝利を確信したカザフは、安堵の溜め息を漏らしつつ手の甲で額の汗を拭う。

 背中に受けた傷はまだヒリヒリするけれど、命に関わるような深さの傷ではないとカザフは判断した。


「取り敢えず帰ろう。報告に行かないと」


 魔物を倒しきったカザフは、かつて美術館であったというその建物を出て、依頼完了の報告をしに行くことにした。


「あ、でも、依頼主はいなくなったから……どうしよう」


 依頼主が黒幕だった。そして、その黒幕をカザフは倒した。つまり、依頼主はいなくなってしまったということだ。誰に依頼完了を伝えに行けば良いのか分からない。



 ◆



「なにィ! そうだったのかァ!?」

「はい。依頼主の男性が黒幕だったみたいで。魔物を街へ送っていたのも彼だと思います」


 依頼主がいなくなってしまったため、依頼を受けた酒場の店主に報告した。


「あの依頼を受けた冒険者が還らぬ人になってばかりだったのは、そういうことだったのかァ!」


 トメアシティの酒場の店主は、がっしりした体を持つ大柄な男性だ。しかし、そんな彼でも、真実を知った時にはかなり驚いていた。


「倒してきたので、もう大丈夫だと思います」

「そうかそうか! そりゃあ助かったァ!」

「力になれて良かったです」


 カザフはにっこり。


「報酬を渡さにゃいけないなァ! ……あ。だが、依頼主がいない」


 それを聞いて、カザフは少しがっかりする。

 もちろん報酬のためだけに依頼を受けたわけではないが、報酬ゼロとなると若干悲しいものがあるのだ。


「そう……ですよね……」

「おい待て! 報酬ナシとは言ってねェ!」

「え。本当ですか」

「街を救ってもらったんだ! そりゃ当然だろォ!」


 店主は親指を立てた片手を前に出す。


「ちょっと待ってろ。良いもん持ってきてやる」

「あ、ありがとうございます……!」


 報酬なしでがっかりするなんて俗物と思われただろうか——店主を待つ間、カザフはそんな風に思い少し不安になったりした。


 少しして、店主が戻ってくる。

 その両手には、それぞれ一つずつ、布製の巾着が握られていた。


「あんま多くはねぇが、こんなもんはどうだ?」

「それは?」

「片方は金で、もう片方は魔物から取った素材だ。どうする?」


 カザフが興味を持ったのは、魔物から取った素材の方。


「素材……どのようなものか少し見ても構いませんか?」

「おォ! もちろん!」


 店主は二つの袋をテーブルに置くと、素材が入っている方の袋の口を開く。そして、その中身を手で取り出す。


「えぇと、確か……ネコタイガーの瞳とかジャークメイドの爪とかだったかなァ」

「こちらでお願いします!」

「こっちで良いのかァ? 価値はあんまりだぞォ?」

「はい! 大丈夫です!」


 こうしてカザフは、ネコタイガーの瞳やジャークメイドの爪を手に入れたのだった。

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