表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

眠れない夜


月がきれいだ。

静かに空にたたずむ月は、元居た世界よりも大きく見えた。

いや、間違いなく大きいだろう。


この世界ではこんなに月が大きいのかと思った。


そんな静かにたたずむ月とは正反対に勇者の心はざわついていた。


皆と一緒に居たときはなんとなく誤魔化せていた不安が、一人になるととても大きくなり勇者の心を襲った。


しばらく寝れずに、剣士のイビキだけが部屋に響き渡る。

その時、バタンという音がした。


ビクっ


っとなる勇者。


ビビりながらも、自分の部屋から廊下を覗いてみた。

長めの廊下の突き当たりに、僧侶さんらしき後ろ姿が見えた。


「どうしたんだろうか。」


という気持ちと、一人で不安でいるのも嫌だったため、ちょっと声をかけようと近づいていく。


「うっ、うっ、うっ、、、」


僧侶は声をおしころして泣いていた。

なぜ泣いているのかははっきりはわからなかったが、勇者は声をかけた。


「大丈夫か?」


「びくっ」とした僧侶だったが、すぐに涙を拭いて、明るく返してきた。


「勇者様、眠れないのですか?」


「そうそう。色々と考えちゃってさ。」


オレは本音を呟いた。


「私も、ちょっと眠れなくて。」


「そうか、だよな。この世界の常識とか、そういうのはわかんないけどさ、辛くて泣きたい時は泣いていいと思うよ。」


勇者はいった後で少し恥ずかしくなった。

恥ずかしいので顔をそらしていると、僧侶は大きく泣き出してしまった。


「嫌なこと思い出させちゃったかな。。ごめん」

勇者はチェリーなのでだいぶ困惑している。


僧侶はそのまま勇者の胸元に顔をうずめて、泣き続けた。


勇者は最初、異性に泣き付かれているこの状況を少しよこしまに捉えたが、僧侶の心中を察して、自然と腕を回して頭を撫でた。


自分もこれからの不安でいっぱいだが、この人も辛い傷を持っている。


そして、これからはオレがこの人を守っていく立場なんだと考えたら、不思議と不安は小さくなっていた。


勇者の不安が小さくなるとともに、僧侶の泣き声も次第に収まっていった。


「明日もあるし、部屋に戻ろうか?眠れそう?」


と勇者が聞くと、顔を赤らめた僧侶は小さく頷いて、

「はい。」

とだけ答え、そそくさと部屋に戻っていった。


勇者も部屋に戻り布団に入って少し僧侶のことを考えていると、寝ていたはずの剣士が言った。


「あの子を、宜しく頼むよ。」


勇者はすこし時間をあけて答える。


「はい。そのつもりです。」


さっきまでの不安は置いて来たかのように、勇者は眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ