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仲間との貧相な食事


部屋に戻った勇者と剣士は、

そのまましばらく宿の夕食まで部屋で待機していた。


コンコンっ。

部屋の扉をノックする音がする。


「お二人とも~~、夕食行きましょー。」


と僧侶のふわっとした声がする。


「おう!開けていいぞ~」

と剣士が答える。


ガチャリ。


扉から見えたのは湯上りの僧侶と魔法使いだ。

首からタオルを下げて部屋着になっている二人もムフフである。


特に、小柄で童顔にもかかわらずピタっとした服装で胸が強調されている僧侶さんはたまらない。


ハーフエルフの方は通常が露出が高い分、そこまでの変化はないが、

風呂上りの湿った感じの髪は色っぽい。


「夕飯って、宿で食べれるんですか?。」


オレは二人に聞いた。


「ここの宿は、夕食もついてるんです。安い宿なんで、たいした料理ではないんですけど。」


なるほど、この世界でも素泊まりと夕食付きの宿泊ができる宿があるみたいだ。


オレと剣士は部屋でくつろいでいたが、二人についていく形で、

夕食を食べに宿の食堂に向かうことになった。


「はいよっ!今日の夕飯ね。」


太ってちょっと毛深そうな宿屋の親父が、4人分の夕食を出してくれた。

メニューはスープにパン、そしてよくわからないでかい魚がテーブルの真ん中に大皿に一匹並べられている。


「あ、オレ魚あんまり得意じゃないなあ・・・」


「勇者さん、すまない。肉は今のこの付近の町じゃあ高級品で、魚でもあまり口にできないんだ。」

剣士が少し申し訳なさそうに言う。


「大きい町に行けば、お金を出せばまだ用意できるんだけど、この付近だと難しいの。」

魔法使いが続けた。


勇者は状況を多少理解した。

この付近の町と村は裕福ではないのだろう。


きっと、土が悪いとか、放牧がうまくいきづらいとか、

そういうことだろうと思った。


「この辺りは、土が悪くて牧草も育たないですし、農作物もあまり育たないのですぅ・・・」


僧侶さんがオレの思ったことをそのまま説明してくれた。


オレはちょっとだけ気まずくなって、

「それじゃあ、頂こうかな。」

と自分から切り出し、魚を真っ先に食べて、


「あ、これ、結構おいしい。いけるいける!」


と好きでもないし美味しくもない淡白な魚を食べ、

美味しいなどとピエロを演じた。


食事をしながら、メンバーの三人とこの世界について少しだけ聞いた。


今いる大陸はそこまで大きい大陸ではないこと。

この世界にはいくつかの大陸があるということ。

そして、話している感じでは、

文明の発達は元の世界の16世紀程度といった印象だった。


魔王については、定期的に魔王の力をもつと言われる魔物が出現し、

その前後に世界の選択によって、勇者が召喚されることが多いこと。


ここでずっと「うんうん」と聞いていたオレは気になったことがある。


「世界の選択ってなんのことだ?」


気になっていた。オレは世界の選択とやらでこの世界に召喚されたわけで、

その「世界」というものがなんなのかということに関して知っておく必要があると感じていた。


「え~~っと・・・世界の選択っていうのは、私たち神に仕えるものが便宜的に使っているものなんですが、実際は誰がどうやって召喚しているかは、私にはわからないですぅ。ごめんなさい。」


とのことだった。


「なるほど。じゃあ、そのうち旅しながらそのあたりも調べたいな。」


元の世界から呼び出されたオレの勘がなんとなく思わせた。

絶対にこの世界の何らかの力を持つ誰かが、オレを転移させたに違いないと。


「明日の買い物だけど、お金とかオレ全然持ってないけど、大丈夫なのかな?」


こちらの世界に来て何もやってないオレは勿論お金も何も持っていない。


「もちろん。勇者さんのパーティだからな!明日の外出には俺の服を貸すから、自分のサイズに合う衣服を買ってきなよ。もちろん、武器も防具も買って来てくれ。」


なんというか、至れり尽くせりである。


夕食を4人で始めて食べた今日。

自分でもびっくりするほど馴染んでいる自分がいた。


貧相な食事だったが、4人で食卓を囲んで冒険の話をするのは、

勇者的には悪くないという気持ちにさせた。


これからの冒険の話も聞きたかったが、これから先には嫌でも行動計画の話はでてくるだろう。

今日はまずはレクリエーションといった感じで、食事をおえた。


「じゃあ、勇者さん。また明日です。」

「勇者君、おやすみ。」


と女性陣二人は男子禁制の女子部屋に帰っていった。


剣士とオレは元の部屋に戻り、明日に備えて早めに休もうという話になった。


それぞれベッドに入り、

明かりを消してすぐ、剣士はすぐにイビキをかき始めた。


オレはそんなに簡単に寝れるはずもない。

今回の転移によって、寝る前になると考えてしまうことが沢山あった。


隣からの剣士のイビキが、特にオレの眠りを妨げるようだった。


窓の向こうには大きな月が出ていた。


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