イケメン剣士と二人きりの入浴
明日、愛しの女僧侶ちゃんと町に装備の買い出しに行くことになった勇者。
とりあえず今日は解散して、剣士と二人部屋。
ひょんなことから、二人きりで温泉に入ることになり。。。
解散した後、剣士と二人で部屋でゆっくりしていた勇者だが、なんとも落ち着かない。
大柄の男が近くで物騒な大剣の手入れをしているのだ。
「それにしても、家には帰れるのかなぁ。」
勇者はやはりそこが気になった。
元の世界が嫌だったわけで転移したわけでもなかったし、最近実家に帰れていなかったので、両親はどうしているんだろうと、そんなことばかり気になっていた。
簡単に言えば、かなりセンチメンタルになっていたのだ。
優しくしてくれる仲間が出来たといっても、彼らはまだほぼ他人。
そんな勇者のぼやきに、剣士が答える。
「勇者さん、実は、、、」
その重々しい感じから、あの時の悲しそうな表情の意味がわかった。
「帰れ、、、ないんだろう?オレ。」
少し声が震えた。
自分はこの先冒険をしながら、痛い思いや辛いことを、望んでもないのにしなくてはならない。
そして、もう元の生活には戻れない。
「過去、歴代の勇者で、召喚されてもとの世界に帰れた勇者は皆無みたいです。」
少し沈黙があったが、無理矢理感情を圧し殺して言った。
「剣士さんや女性陣二人が、仲間になってくれるし、オレなんとかやってみますよ。」
その言葉に必要以上にオーバーに感無量といった表情の剣士。
「はい!私たちがお仕えします。私たちが勇者様と魔王を打ち倒し、この時代の英雄勇者にしてみせます!」
勇者と冒険がしたかったご一行は、さぞ今の勇者の言葉には感銘を受けてしまうんだろう。
「はあ、なんか帰れないとわかったら気が抜けたよ。体も泥沢山ついてるし、この世界には風呂って文化はないの?」
もう、湯船に浸かって、心の洗濯がしたかった。
「風呂、というより、宿によっては温泉がありますよ。ないところはシャワーになってる宿が多いけど。」
良かった、少なくともシャワーはあるのか。
「ここの宿は温泉も有名で、良かったらはいりましょうよ!」
でかい剣士に温泉を一緒に入るのを勧められても。と思った。
女僧侶ちゃん、もしくは魔法使いのハーフエルフと入りたかった。
「じゃあ、剣士さん、男水入らずで温泉に行こう!今から!夕食前に入っておきたい!」
「了解しました。着替えはオレのインナー貸します。その服ボロボロだし。」
そのまま男二人、この宿の温泉に入ることになった。
脱衣場で剣士が全裸に!
その体には歴戦の勇といった傷がかなりついている。そして、改めてみると体がでかい。
背中の広さ、腕の太さ、太もものでかさ。
「ゲイにはたまらないシチュエーションでは?」
と勇者がからかうと、
「ゲイってなんですか?」
と返事が。
この世界にはLGBDのような方々はいないのかもしれない。
いたとして、世界的な文化が元の世界ほど進化してないので、まだ表面化してないとか、かな?
「いやいや、今の話は忘れて。それにしても良い体だなぁ。憧れるよ。」
「勇者さんに憧れるとか、光栄ですよ。お背中流しましょうか?と聞かれたが、いや、大丈夫。今日は自分でするよ。」
女性陣からなら、お願いしてたのに~。
などと剣士が男で勇者はぷんぷんしているようだが、実は一番便りにしている。
何よりも最初から思っていたが、仲間思いで勇猛だ。
体をお互い流して、湯船に入る。
勇者はここで、気になってることを聞いてみた。
「僧侶さん、トロルに犯されたんですよね。なんであんなに明るくできてるんですか?」
剣士は顔を少し曇らせたが話始めた。
「俺たち戦士は、戦士になった時点で何があっても動じないように日々覚悟してる。だから、勇者さんの思っているよりは僧侶は仕方ないと思っていると思う。それが、今のこの世界だ。
でもな、多分心の傷はある。あの子は勇者さんに大分直感で興味を抱いてる。だから、優しくしてやってほしいんだ。」
「そうか、やっぱり傷はあるんだよなぁ」
勇者はがぜん僧侶の拠り所になりたいと思った。
「当時何があったかは、俺の口からは言えない。あいつが勇者さんに話したくなったら、その時はどんな内容でも受け入れてやってほしい。」
「受け入れられるように頑張りますよ。」
そろそろ、のぼせそうになってきた。
ナイスタイミングで剣士が言う。
「そろそろ上がって飯にしましょうか。」
こうして、男二人全裸の風呂の付き合いと言う、男同士の一つの「裸の付き合い」というものを勇者はクリアしたが、彼には経験値は入らない。
二人して服を着て、部屋に戻り、夕飯の準備を待った。