第26代目勇者一行の誕生
勇者自身が変形させた森を見た帰り道。
この世界が自分が存在した世界とやはり異なるのだと再認識させられた。
町並み。人の身なり、そして空気感。
町から森に行く行きと帰りには、剣士と共に魔物にも出会った。
狼の様なウルフという魔物に一頭だけで、剣士がさっさと倒してくれたが、
間違いなく魔物だった。
自分が異世界に転生してしまったのだと深く実感ししまった。
「オレは、元の世界には帰れるのかなあ」
とふいにつぶやくと、剣士は少し悲しそうな顔をした。
この悲しそうな顔は、後でわかることだが「可哀想にな」と思っている顔だったのだ。
そうこうしているうちに、剣士たちが宿泊先として泊まっている宿に着いた。
そこには、あのノーパン魔法使い、そして愛しの女僧侶が待っていた。
「さてと、勇者さん、帰ってきてそうそうなんだけど、話をしていいかな?」
剣士は少し嬉しそうに話している。
「そんなに疲れているわけじゃないから、さっさと話をすませていいよ。」
この先のことも考えなくてはならない。
これからこの世界でどうやっていこうか。
若干19歳の勇者にはこれから先の心配で頭がいっぱいになっていた。
それと共に不安感も勢い良く増加していっていた。
「実は、勇者さんと一緒にオレたち3人の戦士チームでパーティを組んで一緒に旅をして欲しいんだ。」
剣士は続けた。
彼ら3人は現在この世界に出現した魔王を討伐するべく集まった戦士であること。
そして、まだ自分たちは駆け出しであり、街の付近の魔王の影響で凶暴化したモンスターを討伐したり、現在は魔王討伐に関して準備をしていることなどを説明してくれた。
勇者はその話を聞いて内心ほっといていた。
これから先、少なくとも彼らと一緒に行動することで、この世界のわからないことなどは彼らが解決してくれるだろうと思った。
何もわからずに一人で旅をするよりも、ずっと安心だ。
そもそも、力の使い方も何もわからず、今現在感じているのは、勇者というよりただの人という感覚だ。
力を持っているという実感はまるでない。
「こちらこそ、そう言ってくれたら助かるよ。お願いします。」
と話をして、お互いの自己紹介をしていくことになった。
男戦士
27歳
この付近にある村出身で、数年前から一人でギルドからの依頼をこなしながら冒険をしていた。
身長は190センチ近くある大柄だが、髪は長く顔には傷があり戦士といった印象を強く受ける。
大剣を使っての戦闘が得意とのこと。
この戦士チームのリーダー的な存在。
女魔法使い
年齢不詳
ハーフエルフと言われる種族らしく、人間とは基本的に文化が異なるそうだ。
寿命はエルフほどは長くはないが人間よりかなり長いらしい。
あの時はわからなかったが近くで見るとかなりの美人だ。
身長は170センチ程度で服は露出度の高いスカート。
ノーパンだったのはハーフエルフの文化なのだろうか。
女僧侶
年齢23歳
神の加護を受けているということで、異世界からの勇者の力がわかるらしい。
勇者のことを勇者と判断したのも、この女僧侶。
身長は150センチ程度と小柄で、服装は神官っぽいロングスカートに十字架のペンダント、
武器というか魔法を唱えるために、何だか金属がジャラジャラついた杖を持っている。
「この間、トロルに犯されちゃったので、神官なのに処女じゃなくなっちゃましたけど、僧侶です。」
と、すごいことをサラリと言ったことが印象的だった。
「オレは・・・」
とその後は、自分がいかに普通の人間なのかということを、3人に語るという情けない勇者っぷりだった。
「それでも、オレと一緒に行ってくれるのかい?」
と聞くと、3人は「もちろん」と答えてくれた。
この世界では異世界から転生した勇者の力は絶大という認識が強いようだ。
実際、この26代勇者は強さという意味だけで言えば、全世代の勇者の中でダントツである。
この3人は勇者のあのトロルを一撃でしとめた攻撃を見て、
この勇者のことを非常に期待しているが、
実際にはこの勇者は「死にかけなければ、ただの人」である。
「しばらくこの街で情報を集めたりしてから、少し移動していこうと思っているんだ。」
戦士が言ってきた。
「この世界のことはオレにはわからないから、基本的な方針は剣士さんの判断でいいですよ。」
と勇者は若干他人任せだ。
「それじゃあ、まずは明日勇者さんの装備を買いに街に行きましょう!」
女僧侶は比較的ノリノリである。
「それにしても可愛らしいなあ。明るいし」
と内心思ったが、今回は口には出さないでおいた。
部屋は勇者が借りている部屋に、剣士が。
向かいのへやに僧侶と魔法使いが泊まるというペアだった。
取り敢えず今日は解散して、
明日、女僧侶と一緒に買い物という流れになった。