第9話●この美しい世界をの旅の幕開け
2人が扉をあけると、そこには美しい景色が広がっていた。
澄み切った青空と永遠に続く真っ白な雲、地平線の山々の向こうには、蓬莱山がそびえ立っている。
そこ付近には、空に浮かんでいる空雲都市が幾つか浮いている。
そして、太陽の光がそれらを光照らしている。
いつもと変わらない光景だけど、叶人には全く別物に見えた。
「なぁ、コノハ。今から僕達はこの美しい世界を旅
するんだ!凄くワクワクしないか」
「えぇ、とっても楽しみよ!」
コノハは口ではこう言っているが、何となく元気のないような、そんな表情をしてる。
「ねぇ、叶人。先ずどこに行くか決めてあるの?」
「あぁ、先ずはこの白雲世界に詳しい友人に会いに行くよ。いいかい?」
「助かるわ、有難う!」
コノハはコクリと頷いた。
そうして、僕らは長い雲を歩き出した。
歩く最中、叶人は地図を見せてコノハに色々と説明をした。
「この都市シウダー ペルディーダは長方形の形をしていて、今いる所はここ。ちょうど左下の所
だ。で、今から向かう目的地はここ」
「右上。滅茶苦茶離れてるわ」
「そう、滅茶苦茶離れてる。だから、僕もその友人に最後に会ったのは数年前だ。
で、今日はここまで歩こう」
叶人は、地図上のある場所に指をさした。
「光泉街?」
「ここは、この都市の中心街。ありとあらゆる情報で溢れていて、とても栄えている。
そして、この街のど真ん中には、光る泉がある」
「街の名前、その泉が由来してるの?」
「よく気づいたな。その通りだ!」
「こんなに分かりやすい地名、誰でもわかるでしょ」
「この街は光る泉だけど、残りの空雲都市の泉は異なる名前なんだ。
燃える泉 芽吹く泉 凍る泉 眠る泉…………」
「ふーん、色々な泉があるのね。
というか、眠る泉って何なの? 謎すぎるわ」
「眠る泉は第5の空雲都市のヒュプノス ツクヨミ通称、眠る都市にあると言われている。
詳しい事は分からないが、眠る事を得意とする民族が住んでいることは分かる。
あっ、言い忘れていたけど、各都市には数字が付いていて、それは空雲都市が形成された順に付け
られている。この都市は前にも言ったように最初に形成された都市だから、第1の空雲都市だよ」
「初めて聞くことばかり、勉強になるわ。
ねぇ叶人、1つ質問があるんだけど」
「何でも質問していいよ」
「第5の都市は眠ることが得意な民族って聞いたけど、この都市の民族は何が得意なの?」
「よくぞ聞いてくれた!
我が空雲都市の民族が得意な事、それは
農業だ!!!!!」
「しょぼ」
「しょぼいとは何だ。この都市の農業で作った野菜は、全都市に送られている。
つまり、この都市こそ1番重要な都市なんだぞ!」
「まぁまぁ、そんなに熱くならないでよ」
2人は話に夢中になり、もう何時間も歩いていた。が、風景は一向に変わらない。
「ねぇ、まだ着かないの?
全然風景変わらないし、疲れたよぉ」
「この都市は中心街以外、全部こんな感じの風景なんだ。我慢して」
風景が一向に変わらないのには、実は理由がある。この都市には、魚や家畜が一切存在していないため、ここに住む天空人は約1ha(100m×100m)もの大きさの畑を所有している。つまり、家と家との距離がとても離れているのだ。
「あ、コノハ! 光る噴水だ!」
2人の目の前には、眩しく光る泉があった。
「ようやく着いたわー」
コノハは完全に疲れ切っていた。 勿論、僕も。
辺りは暗くなり始めていた。朝早く出発してから、実に12時間かかっていた。
「よし、ここに泊まろう」
叶人はコノハを連れて、雲休宿というとてもデカい宿に入った。見るからに高級な宿だ。
まず、叶人とコノハは宿を借りるため、受付に向かった。夕方だからなのか、多くの人で溢れかえっている。
とその時、ある1人の男が2人の前に立ち塞がった。
「おい、お前まさか叶人か!?」
信じられない。
目の前にいたのは、今から会おうとしていた龍我だった。