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運命のカルナ ~蓬莱山のキセキ~  作者: 紫空 ソラ
第1都市「上」 出会いと別れ
18/59

第18話○この温泉最高!

「サクラ姉さん!?」


そこには、濃いピンク色の髪を肩まで伸ばして、首元に、銀色の十字架のアクセサリーを付けている女の子がいた。


「そうだよ。もう何年ぶりかな?

龍我、そこにいる2人は誰? 」


「叶人とコノハさんだよ。


叶人、この人は僕の姉のサクラだよ」


「あ、初めまして、叶人です」


「私はコノハと申します」


「私はサクラ

つい最近まで第3都市の本屋で働いていたんだけど、潰れちゃってね。

で、帰る場所もなくて、今はここで居候してるの


2人共宜しくね! 」


彼女は自分の頭を撫でながら、恥ずかしそうにそう言った。

龍我の姉とあってなのか、身長が叶人よりも随分高い。

そんなサクラの美貌に、叶人は目を奪われていた。


「えーーーー!!!

龍我、貴方何で剣なんて持ってるの!?

もしかして、変白の戦いに参加するとか? 」


「しーーーー

父さんにバレたら怒られるから、そんな大きな声出さないでよ」


「ごめんなさい。つい、興奮しちゃって…

だって、龍我はこの宿の跡取り息子なわけだし」


幸いなことにこの時、父さんは受付で接客をしていた為、この事はバレずに済んだ。


叶人はというと、目の前にいる仲の良い兄弟を羨ましく思い、龍我を少しばかり妬んでいた。


「ねぇ、みんな疲れてるみたいだし、露天風呂にでも入ってこようか」


「賛成!

叶人、この宿の温泉は、光る泉から水を引いているから、とても癒されるんだぜ」


「それは、楽しみだ!

今すぐ入ろう!」


叶人と龍我は、軽やかな足取りでスキップしながら、露天風呂へ向かった。


「さぁ、コノハさん

私達も入りに行きましょう!」


「あ、えーっと、私は遠慮しておきます。」


コノハには、どうしても風呂へ入る事が出来ない理由があった。


「そう。

じゃあ、私とお話しましょう!」


「はい、分かりました」



▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒



「龍我、この温泉最高だな!」


叶人は、重い体を温泉の中に入れ、体を軽くする。

この数日間、風呂には入っていなかったため、体の汚れがみるみる落ちていくのが感じられた。


「あぁ、ここが天国のように思えてきた」


龍我は黒色の重い前髪を後ろへ流し、温泉に浸かりながら、お湯で顔をパシャパシャと洗っている。

とても気持ちよさそうだ。


「龍我、サクラさんってどんな人なの?」


「うーん、姉さんの事についてじっくり考えたこと

ないからなー。

あ、姉さんは大の読書家だよ。本が好き過ぎて、小さい頃はよく図書館から帰ってこなかった事も

あったな」


「そうなんだ」


「というか、何で姉さんの事なんて聞きたくなったんだ?」


「別になんでもないよ。ただ、少し気になっただけ」


「ふーん」


龍我は髪からポタポタと落ちてくる水滴を見つめながら、眠そうな声で返事した。

何故か今、男湯が僕と龍我の貸切状態なので、水滴の音は、静かな音の中で時計の針を刻むように、心に響いてくる


「なぁ叶人、この都市での条件覚えてるか? 」


「あぁ、蒼闘者の人数が半分以下になるってのやつ

でしょ?」


「そうだ。現人数が500人と表示されていたから、

この都市を抜けるには、少なくとも250人亡くな

る。そう考えると、緊張してこないか?」


「勿論緊張するし、不安の気持ちもある。

僕は、人を殺すなんて想像すら出来ない」


「でもさ、参加してしまった以上、何がなんでも全力で生き残ろう!」


そう言って、龍我は風呂から上がって行った。


▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒


叶人達が温泉に浸かっている頃、部屋ではサクラとコノハが話をしていた。


「コノハさん、貴方はどうやって龍我と知り合ったの?」


「えーっと、私は元々、叶人君の家の傍に住んでいて、叶人の紹介で龍我さんと知り合いました。」


ここで嘘をつくのは、身を守るため。

完全な正当防衛!


「なるほどね。

もう1つ質問があるんだけど、貴方は参加するの?」


「何にですか?」


「変白の戦い。龍我と叶人君は剣を持っているから、参加決定だけど、コノハさんは持っていない

から、つい疑問に思っちゃって」


「勿論、私は参加しません。

たまたま、叶人と龍我さんと一緒に居ただけですよ 」


「そうなんだ

てっきり貴方も参加すると思ったわ」


その後、2人はたわいのない話などをして、次第に打ち解けて行った。



「コノハさん、仙人についてどう思う?」


「えっ」


コノハは思わず声を詰まらせてしまった。


「仙人に対する評価は、賛否両論

過去の仙人大会や、今回の変白の戦いなど、新た

な政策をバンバンつくり、それを嫌う人も少なく

はない。


でもね、私はそうは思わないんだ。

仙人は私の事を考えて、空雲都市を平和に治めて

くれている。


変な政策を打ち出すこともあるけど、本当は心優しい方だと思うの」


「私もそう思います!」


コノハは、その言葉がただただ嬉しかった。



「トン、トン」


ドアが開いて、風呂上がりの2人が帰ってきた。


「風呂どうだった?」


「もう最高!疲れが吹き飛んだよ」


「それは良かった!

あ、もうこんな時間!?


じゃあ、寝ましょうか」


サクラは部屋の灯りを消した。






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