第17話●「暗弱な者に、光は差し込まない」
「饕餮様、あの様な事を提示して本当に宜しかったのでしょうか?」
「何か心当たりでもあるのか?」
全身紫色の体に真紅のマントを羽織り、2本の大き
な角を生やした饕餮が問う。
「もしも、天空人にあの事が知られてしまったら白雲世界は崩壊するかも知れません」
「あの事は絶対に知られない。安心しろ。
それに、この戦いの真の目的は、天空人があの事件を解決する事ではありませんよ」
饕餮は碧い光が差し込む窓から外を見つめ、そっと言った。
「暗弱な者に、光は差し込まない」
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饕餮の提示から約1時間後、3人の乗っている車馬は目的地である光泉街に着いた。
「ようやく着いた!」
「あんまり大きな声出すなよ。僕達を狙っている物がいるかも知れない。
それにしても、人多過ぎないか?」
驚くことに、光泉街には昨日の倍以上の人が屯っていた。
そして、その殆どの人は光る泉の前に集まっていた。
「あの、何でこんなに人が集まっているのか分かりますか?」
「お前達も参加者か
先程、饕餮って仙人が提示した戦いに参加した人達が仙術によって、全員ここに送り込まれたんだ
よ。
流石に多すぎるよなぁ」
ある参加者が、理由を教えてくれた。
なるほど、10の空雲都市全体の参加者がここシウダー ペルディーダに集められたのか。
そりぁ、混雑するわけだ
「おい叶人、これを見てみろよ!」
気づくと、龍我は人々を掻き分けて、泉の前に立っていた。
何と泉の前には、空中に浮いた水によって表された文があった。
その文はこう表されていた。
*澄み切った青空と、真っ白な雲に覆われる空雲都市
今日も平和でのどかな生活をお過ごしのことと存じます
さて、今日から6人の強き若者を決める戦いが行われる事をお伝えします
この戦は変白の戦と呼ぶことにして、変白の戦いに参加する者を蒼闘者と命名します
変白の戦いの具体的な内容は、
「各都市の条件を達成しながら、第1都市から第10都市、そして蓬莱山へと旅をする
絶対不変の原則は、いつでも命霄剣を使用可能
また、蓬莱山の門は、蒼闘者の人数が6人になるまで、決して開くことは無い」
というものです
●○● 第1都市 条件●○●
・蒼闘者を半分以下にする
それでは、全力で戦い合え
現人数500*
「世界、変わっちまったんだな」
「あぁ、これから俺たちは実際に戦うことになるん
だ。」
龍我は悲しそうな眼を叶人へ向けた。
戦いという概念がない白雲世界で、この文に描かれていることは、到底理解できるものではなかった。
これから、この都市で250人もの人が殺されるのか。
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「大変な事になっているわね、迅」
「そうだな、ロベリア」
雲休宿のある一室で、一人の少女と少年が話をしていた。
「まぁ、この戦いの勝者は私達。
貴方はどう思う、迅?」
「当然じゃないか、ロベリア」
少年はベッドに横たわって言った。
少女は命霄剣を片手に、窓から光る泉を見下ろしていた。
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「そろそろ暗くなっていたし、雲休宿に泊まろう」
龍我はそう言うと、叶人とコノハを連れて宿に入った。当然のことながら、中は外よりもずっと混んでいた。
「龍我じゃないか!?」
ある1人のおじさんが龍我に話しかけてきた。
「まずい、最悪だ」
龍我は、叶人の耳元でそっと呟いた。
「龍我、そちらの2人は?」
「叶人と、その友達のコノハさんだよ」
「おー、叶人君か
随分大きくなったねぇ。
コノハさん、初めまして龍我の父です。」
その瞬間、叶人は龍我の言葉の意味を察した。
「父さん、部屋空いてるかな?」
「残念だが、全部屋満室なんだ。でも、心配する必
要は無い。父さんの部屋に泊まればいい」
(心配ありありなんだが)
龍我は心の中でそう思ったが、他に泊まる方法はないので、やむを得ず承諾した。
3人は龍我の父さんに連いていき、宿泊する部屋に着いた。
「あ、龍我!
久しぶりだね!」
「サクラ姉さん!?」
そこには、龍我の姉さんと思われるピンク色の長い髪をした女の子がいた。