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運命のカルナ ~蓬莱山のキセキ~  作者: 紫空 ソラ
序章
14/59

第14話○彼は邪悪を酷く拒んだ

「トン、トン」


真夜中の寝室に、ドアをノックする音が静かに響き渡る。


叶人は、その音に目を覚ました。


「おい、龍我どうした? もう真夜中だぞ」

ドアの前には、龍我が立っていた。


「ちょっと俺の話を聞いてくれないか? 」


龍我の声は、先程の明るい声とは対照的的な、何とも暗い声だった。


僕は龍我を寝室に入らせ、近くの椅子に向き合って座り、話し合った。


「俺、自分でも分からないんだ。

小さい頃に、将来は宿の亭主になると約束されて

以来、他に興味を持てる事はなかった。


叶人と仙人ごっこをした事もあったけど、それは

単なる趣味に過ぎなかったんだ。

本気で好きになれるものはなかった。


だけど、俺は見つけた。

心から好きになれるもの、そう青龍を!!



父さんの仕事を継がないといけないって、ずっと

思っていたけど、叶人の言葉で決心した。


青龍をこの目で見る! それが俺の夢だ。


叶人、俺も旅に参加してもいいか?」



その長い言葉からは、龍我の気持ちがひしひしと感じられた。痛いほど強い葛藤が。



「龍我さん、宜しくね」


僕の前に、爆睡していたはずのコノハが返事をした。


「コノハ、起きていたのか?」


「だって、龍我さんの声が大きかったんだもの。仕

方ないでしょ」


「あ、ごめんな。つい気持ちがこもってしまった」



龍我は、顔を赤らめながら謝罪をした。


「龍我、僕もコノハと一緒の意見だ。

一緒に旅をしよう!」


「2人とも、有難う。感謝感激極まりない」


真夜中の寝室に、一筋の光が入り込んだ。薄暗く綺麗な光だった。


やはり叶人と龍我は親友だった。


「よし、明日からの旅に備えて寝るぞ!」


龍我は安堵した気持ちで、眠った。




翌朝、3人は車馬の前に集合した。


目的地は、やはり光泉街。


昨日の雲休宿の人達に気づかれてはいけないので、全員灰色の帽子を頭に被った。


龍我は沢山の本と、フラスコに入っていた青龍の血を1つの壺に納めた物を車馬に持ち入った。


「よし、では旅の出発だ!!!」


叶人の威勢のいい声が、天高く放たれた。



▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒▒


─昔々、1人の若者が地上世界に生まれた。


彼は 蒼 という名を授かった。


青く透き通った長い髪の彼は、幼き頃から狩りをも拒み、村同士の争いには一切関与しなかった。


彼は邪悪を酷く拒んだ。



ある日、隣村が酷い山火事にあった。


その村の人々は慌てふためいて、遠くの泉へ一時避難した。


この時、彼の村の村長はこう言った。

「今、隣村には人が1人もいない。財宝や食料を奪いに行くぞ」


村人は誰もが歓声を上げて、賛成をした。

だが、蒼だけは賛成しなかった。


彼は、歓声で盛り上がっている邪悪な村人を掻き分けて、村長にこう言った。


「村長、隣村へは行ってはいけません。他人の物を盗んではならないという掟が、この世界にはある

のです。


このまま、略奪という行為をした場合、貴方は村長失格です」と。



明鏡止水の心を持つ蒼の言葉に、人々は圧倒され、自分達の愚かさを悔いたという。


その後、その村は蒼の願い通り、争いのない平和な村になった


…………


…………


はずであった。



いつの間にか、その村は平和な村から邪悪な村へと変貌していた。


蒼を平和の神と慕っていた人は、悪を好む恐ろしい化け物になっていた。


「この前までは、争いのない平和な村を作ろうと言っていたではないか。

何故、こんな酷いことをしているんだ」


蒼のこの問いかけに答える者は誰もいなかったという。

彼の両親でさえも……


「結局、人は欲には勝てないのか。

例えそれが、悪いことであったとしても」


蒼は小さな声でそう呟き、その村から離れ、1人旅をした。

彼の望む、平和な世界を追求する為に。


ある日、蒼は蓬莱山という名の山を登っていた。

周囲の樹木が全く見えない程の霧に囲まれたその山は、彼を何度も何度も迷わせた。


やっとの思いで山頂へ到着した蒼は、とある青く光り輝く石に気がついた。


透き通ったその石に、蒼はついつい手を伸ばし、触れた。


その瞬間、足元がふらつき、気がつくと蒼は雲の上にいた。


目の前には1巻の巻物が置いてあった。


蒼はその巻物に従い、雲の上に空雲都市をつくり、発展させた。


空雲都市の中心には、蒼自らが仙術をかけて、都市を浮かせた。


さらに蒼は、彼自身の願いで、蓬莱山にある建物を

建てた。


その建物の名は─神壱宮殿しんいきゅうでん


蒼が仙人として、壱から空雲都市に平和を築いていくための宮殿であった……………

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