第12話○禄色植物の色をしていて、長い舌を出した龍
「やめてーーーー」
その瞬間、コノハは目を覚ました。
「夢か、びっくりしたわ」
気づいたら、私はベッドの上にいた。
随分長く眠った感覚があり、体全体が心地よく痺れていた。
(嫌な夢見ちゃったなー)
ふと周りを見渡すと、そこは知らない部屋だった。見るからに高級な大きい鏡が正面にあり、広い部屋である。
ベッドから起き上がり、部屋のドアを開けた。
見知らぬ家に若干怯えながらも、廊下や各部屋を徘徊した。
「随分大きな家なのね」
しばらくすると、遠くの方から声が聞こえた。
(叶人の声だ!)
私は無我夢中で、声がする方へ走った。
長く続く、緑色のカーペットが敷いてある廊下を。
「お、コノハ起きたか。そこの階段を下りて、こっ
ちにおいで」
そこには、叶人と龍我という天空人が、2人で話し合っていた。私は傍にある螺旋階段を下りて、2人の元へ行った。
「凄いわね! こんな部屋見たことないわ!」
そこは、研究室と図書館が合体したような、そんな部屋だった。私の両側には、無数の本が隙間なく並べてある本棚が、上まで積み重なっている。
「コノハさん、叶人から話は聞いたよ
君は仙人なんだよね
仙人について詳しく教えてくれないか」
「叶人、貴方は何で約束を破ったの?
この裏切り者!」
コノハは、鬼の形相で僕を見つめてきた。
「安心しろ!龍我には、コノハが仙人であるという
事は絶対に言うなと伝えた。龍我は、正直で正義
感がある男だ!
絶対にバレない
それに、コノハが簪をあの爺さんから奪った時点
で感ずかれていただろう」
「分かりました」
僕はコノハを納得させ、無事話を聞くことが出来た。それにしてもあの怒り顔は正直、背筋が凍るものだった。
「仙人について質問されても、その質問は漠然とし
過ぎているので、簡単な事だけ教えます
まず、仙人の中には階級があるの
上から、天仙 雲仙 下仙 と
この基仙書は雲仙と下仙が生まれた時に渡されます。2人が生まれた時に仙命石を持っているように」
コノハは、基仙書という書物を取り出した。それは、僕がコノハの手当をしている時に触ったものだった。全体に金箔が散りばめられ、派手な作りになっている。
「そして、天仙は基仙書よりも高度な仙術が示されている難仙書を持っています。
伝説の話では、難仙書よりも高度な仙術が示されている幻仙書があるとかないとか…………」
「コノハさん、天仙と雲仙と下仙はどうやって決まるのかい?」
「父親と母親の位から導かれ、決定されます。
ちなみに、私は下仙です」
「なるほどなぁ」
龍我は、コノハの発言を一言一句聞き漏らさないで、紙に筆で書き記した。
「ところで龍我さん、この部屋は一体何に使っているのですか?」
天井が透明なガラスに覆われ、太陽の光が燦々と降り注いでいる研究室は、真っ赤な液体が入っているフラスコが棚に不規則に並んでいて、机の上には何百枚もの紙が乱雑している。
そして、部屋の角には白雲世界の四神である
玄武・朱雀・白虎・青龍の巨大な像が置かれている。
「先祖代々、この部屋は色々な研究に使われてきた。1番最初に野菜の作り方を研究して、この都市
の発展に大きく貢献した
今、俺が研究しているのは、この青龍だ」
龍我は、青龍の像を指さして言った。
「青龍は、青山や青林の様な禄色植物の色をしていて、長い舌を出した龍と言われている。
東方を守護していると昔から語り継がれている」
「あれ、蓬莱山って東の海上にあるよな?」
赤い液体が入っているフラスコを、まじまじと見つめる叶人が問いかけた。
「そうなんだ叶人!
青龍は蓬莱山やその周辺にいるとされているんだ。俺はいつか、青龍を見てみたい。男のロマン
だよ!
その為に、毎日ここに篭って研究している
あ、叶人 それ、青龍の血だよ」
「えー!嘘だろ?」
青龍の血は、とても濃い赤色なのだが、何故か透き通っている。濁りのない赤い液体に、叶人とコノハはいつの間にか目を奪われていた。
「でも、どうやって手に入れたのかは分からない遥か昔の御先祖様が手に入れたと言われているけど、本当かどうかは定かではない」
龍我は輝いた目で、その液体を見つめた。
「なぁ龍我、ここで提案があるんだ」
「なんだ?」
「僕達と一緒に旅をしないか?」
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「そなたは今、何を見ているのだ?」
蓬莱山に聳える神壱宮殿で、2人の仙人が怪しげな話をしていた。
「これはこれは、饕餮様じゃありませんか。
私は今、この水晶でコノハという名の仙人を監視
しているのです」
「コノハ、私がこの前地上に堕とした者ではない
か。まだ生きていたのか」
「えぇ、私もその後気になってしまいまして様子を
観察していたのですが、何と第1空雲都市で仲間と思われる者と行動しています。
仙人が空雲都市にいるなんて、言語道断!
一刻も早く対処しなければなりません」
「なるほど…… 面白い」