第11話●眩い光が僕達を包み込み、しばらくして破裂した
「この簪は、先程廊下で拾ったんじゃ。
仙人の簪が落ちていたという事は、この中に仙人
が紛れ込んでいるかもしれない。
もしも、仙人を見つけたらすぐ捕まえるのじゃ
仙人は、ここにいてはならないからな」
嘘ー、この中に仙人がいるの?
まじで?それ、やばくない?
でも、私あんな綺麗な簪見たことない。絶対仙人のものだよ!
食堂では、宿泊客がザワザワと話をし始めた。
周りの人を疑い出す者や全く信じない者、怖くなって部屋に戻った者までいた。
「おい、お前何をするんじゃ!?」
テーブルに立ってる老人が、いきなり叫び出した。老人の方へ視線を向けると、なんとそこには、簪を奪おうとしているコノハがいた。
(コノハのやつ、何やってんだ!?
簪を奪うなんて行為したら、仙人である事がバレ
てしまうじゃないか)
叶人は、先程よりもザワついている宿泊客を掻き分けて、コノハの元に行った。
そこには、無言で簪を奪うとしているコノハがいた。
「おい、コノハ。 何やってるんだ!
そんな事をしたら、お前が仙人だって事が全員に
バレてしまうだろうが!」
叶人がこの言葉を言い放った瞬間、食堂が凍りついた。宿泊客の視線が、僕達を集中した。
あ……、やらかした……
「「捕まえろーーーー」」
1人の男が叫んだ。
食堂にいた人々は、群がっていて襲いかかってきた。
逃げても逃げても、どんどん追ってくる。
「叶人、私に掴まって!」
コノハは僕にそう言って、じっと目を瞑り手を組んだ。後ろからは人々が追ってきている。
捕まえられたら、死刑になるかもしれない。僕は、走って逃げたかったが、とても逃げれそうにはなかったのでコノハの腕にガシッと掴まった。
すると、不思議なことに眩い光が僕達を包み込み、しばらくして破裂した。
破裂した後、気がつくと僕達は光る噴水の前にいた。目の前には倒れ込んでいるコノハがいて、状況が全く呑み込めなかった。
「おーい、叶人。こっちに来い!」
声のする方を見てみると、車馬に乗っている龍我が手を大きく振っていた。
「「おい、居たぞ! 小娘と男を引っ捕らえろ」」
振り返ってみると、雲休宿から大勢の人が追いかけてきた。
雲休宿は光る泉の目の前に建ててある為、直ぐに追いつかれてしまう。
「コノハ、起きろ。このままじゃ捕まっちゃう」
叶人は必死にコノハを起こそうとしたが、コノハの目は覚めない。
仕方ないので、叶人はコノハを抱いて懸命に走った。
「この野郎、喰らえ」
後から追ってくる者が、こちらに色々な物を投げてくる。
ボール、花瓶、コップ、本…………………
とにかく多くの物が体に当たる。
「痛い、痛い、痛い」
叶人の頭に花瓶が当たり、粉々に割れた。
正直、今すぐ泣きたい。痛いよ、痛すぎる
あと数メートル先だろうか。すぐ近くに龍我が手を伸ばしている。
雲の上を走っているので、足元がおぼつかない。
「叶人、あと少しだ!」
叶人は、思い切り車馬の中に飛び込んだ!
「ヒ、ヒヒーン」
甲高い声で車馬の馬が鳴き、疾風の如く走り出した。
「フー、危機一髪だった。龍我、助けてくれて有難う。龍我がいなかったら、僕達は死んでいたかも
しれない」
「親友として当然のことだ。その娘、仙人なんだろ。まぁ、俺は叶人を信頼しているから、いつで
も助けるぜ。
あ、お前酷く出血しているぞ。ちょっと待ってな」
そう言って、龍我は応急手当をしてくれた。
叶人は龍我の心の広さに、改めて驚いた。
本当に僕は、いい親友を持ったんだな。
「よし、次はこの娘の手当をしよう」
龍我は気絶しているコノハの手当をしようとしたが、特に目立った怪我はなかった。
「叶人、今はだいぶ疲れているだろう。俺の家に着
くまでは、まだまだ時間がかかる。しっかり休ん
でおけよ」
「有難う」
叶人は、深い眠りについた。
[コノハの過去]
「仙人が天空人の仙命石、いや命を奪うことは間違
っています」
「「黙れ!」」
とある宮殿の大広間で2人の仙人が口論していた。
周りには、大勢の仙人が囲んでいる。
「最初の仙人様によって、今私達が住んでいるこの
蓬莱山や空雲都市を創造されました。
その理由は、地上での醜い争いを無くすためで
あった。なのに、貴方達は何て事をなされている
のですか?
これじゃ、最初の仙人様の思い、願いを否定して
いるのと同じ事です。」
長く赤い髪をした少女は確かに正論を言っていた。
しかし、周囲の仙人は誰一人として彼女の味方に着くものはいなかった。
「そなたの名はコノハと言ったな。
では、コノハよ。時には、他人を犠牲にしないと
いけない時があるんだ。分かってくれるか?」
「分かりません。そんなの間違っているわ!」
「間違っていない!」
「間違っている!」
「「黙れ!」」
2本の角を生やしたその仙人は、仙術を使い、コノハを地上に堕とそうとした。
「こんな事、理不尽よ」
「理不尽ではない。 妥当だ!」
その仙人は杖を使い、コノハに仙術をかけた。
「やめてーーーー」