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火の海
トニーが気付いた時、すでに街はほぼ焼けていた。
トニーの家が街のはずれにあったおかげで、何とかトニーは逃げ出す時間があった。
トニーは、記憶のある限りでは初めて外の世界を見た。(小さい頃は家の外に出たこともあったが、小さすぎて覚えていない)
トニーが初めて見た街は、黒焦げた家々が立ち並ぶ恐怖の光景だった。
トニーは必死に逃げた。それもたった1人で。
ほぼ初めて家の外に出たトニーにとって、外の世界は恐怖でしかなかった。
それでもトニーは走り続けた。
街を初めて見るトニーにとっては、もはや出口のない迷路と同じだった。
どっちに行っていいかもわからない。
どうしたらいいのかもわからない。
トニーは泣いた。そして叫んだ。
……………………………………。
でも、でも、…
誰も助けてはくれなかった。
トニーの叔母さえもだ。
トニーの叔母は、トニーの事を皆に隠していた。
だから仕方なかったのだ。
叔母は必死にトニーを助けようとした。
でも、皆に疑われないように行動するのは無理だった。
トニーを諦めるしか方法はなかったのだ。
けれど、その事をトニーは知らなかった。