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護衛


 大統領官邸、執務室にて。


 俺はつぐみの護衛ということになっている。特務と称していなくなることが多々あるが、全くこの場に居合わせないとそれはそれで怪しまれてしまう。


 というわけで、今日はまじめに護衛の仕事をしているわけだ。

 女装した俺は、剣を構えてつぐみの隣に立っている。

 一方のつぐみは、大量の書類に目を通しながら頑張って仕事をしている。いつもの光景だ。


 部屋には俺とつぐみの二人っきり。

 

 というか、わざわざ部屋の中まで入る必要ないよな。璃々だって護衛だけど部屋の中にいなかったこともあるし。


 …………。


「ん、ミーナ。顔を真っ赤にしてどうした? リラックスしていいんだぞ?」

「あのさ……触らないでくれるか?」

 

 時々、つぐみが太ももとかお尻とか触ってくる。普段の分厚いズボンと違って、今の俺はスカートに黒タイツという生足ではないものの比較的薄着。近衛隊の甲冑は脚を守ってはくれないのだ。


 なんだか、上司にセクハラされている女性社員になったみたいだ。

 

 つぐみ……。大統領の職務でストレスたまってるのはわかるが、頼むから情けないことはしないでほしい。国家の恥だ……。この国でメディアっぽいのは大して発達してないが、現代日本ならスキャンダルで失脚するぞ?


 さわさわさわ。


「仕事がはかどるな」


 つぐみが俺の脚を触りながらそんなことを言った。

 俺はすごく残念な気持ちになった。革命の女傑つぐみは死んだのだ。今ここにいるのは、例の薬でちょっと頭がおかしくなってしまった微変態少女。


 つぐみ、この状況楽しんでるよな?


 まあ、つぐみが俺のことを好いてくれるって話は俺にとっても気分がいい。ただその感情の発露のやり方がまずいのだ。


 つぐみがまた手を伸ばしてきたので、ペチッ、と手で振り払う。


「…………」


 捨てられた子犬のような顔をするつぐみ。

 そっ、そんな顔してもだめだからな! 俺は触られると気持ち悪いんだ真剣に! 『どうせベッドの中ではいつでも……』と思っているかもしれないが、そーいう感じの場所じゃないからねここ。

 俺は話題をそらすように、コホンと咳払いした。


「そろそろ璃々の件、どうにかしないといけないと思うんだ」


 鍵を握るのはつぐみだ。大統領にして璃々の想い人である彼女は、この件に関して絶大な影響力を持っている。解決するには協力が不可欠なのだ。


「逃げてばっかりではどうしようもない。根本的な解決。つぐみなら何かいい方法思いついてるだろ? 俺に協力してくれないか」

「キスして」

「はぁ……?」

「キスしないと協力しないの」


 目を明後日の方向にそらすつぐみ。


「…………」


 まったく、この大統領はホントどうしようもないな。


 目を閉じるつぐみに、俺は唇を重ねた。

 俺たちはむさぼるようにキスをした。舌と舌が、まるで絡まった糸のようになっていく。


「気持ちいいのぉ」


 恍惚のつぐみ。

 ……俺もちょっと気持ち良かった。

 ああ……俺何やってるんだろ。これじゃあまた同じ失敗を繰り返してしまうぞ? 誰かに見られたらどうするんだ?


 などと気持ちを切り替えようとしていたのに、つぐみが俺の手を握ってきた。


「仕事中、さみしい」

「鈴菜だって乃蒼だって、俺がいないときは一人で頑張ってるんだぞ。わがまま言うんじゃありませんっ」

「…………」


 だから捨てられたような子犬の顔をするなと。

 さわさわさわ。


「ひいぃぃいぃいいいいっ!」


 俺のスカートに手を入れてきたつぐみ。 

 お巡りさん! ここです! ここに痴女がいます!


「お姉さまっ! ミーナさんっ!」


 前回のことがあったから、扉には鍵をかけて覗く隙間もないようにしている。ただそれでも、大声をだせば外に聞こえるわけで。

 俺の声を聞きつけたのか、璃々がこの部屋の前までやってきたようだ。


 俺はつぐみの手を蹴り飛ばすと、すぐに扉を開けた。

 璃々が部屋に入ってきた。


「今、変な物音が聞こえたような気がして……」


 ほら見ろつぐみ。お前の軽率な行動がさらなる危険を呼んでしまったじゃないか。

 だが俺は冷静だ。そしてこの前とは違って俺は女装をしている。


「ご、ごめんなさい! 急にネズミが目の前に現れて、私びっくりしちゃったの」

「ミーナさん、その反応はかわいくて嫌いじゃないですけど、一応仕事中なので気を付けてください」


 こつん、と璃々は軽く俺の額を小突く。

 全然痛くない。璃々は女の子に優しいからな。俺が女装してなかったら、この拳は頭蓋を破壊する勢いだっただろう。


「……璃々、用事が済んだのなら早くここを出て行ってくれ」

「あ……はい……」


 つぐみの冷たい言葉のせいか、しょんぼりとした璃々が部屋から出て行った。

 つぐみ、なんかイライラしてね? そんなに俺と二人っきりになりたいのか?


 再び二人っきりになる俺たち。

 先ほどとは打って変わって機嫌がよくなったつぐみは、微笑みながら俺に話しかけてきた。

 

「璃々の件はつぐみも考えてるの」

「どんなことを?」

「璃々は自分に可能性を感じてるの。もしかしたらつぐみと結ばれる可能性があるかもしれないと、意固地になってるの。その可能性を全否定すれば、きっと諦めてくれる」


 確かに、若干意固地になってる感があるよな。それだけつぐみのことが好きだったってことだろうけど。


 実際のところ、俺がいてもいなくても璃々に勝ち目はないと思う。つぐみは別に女の子大好きってわけじゃないし、信頼と愛情ではどうしても壁がある。いつか璃々は振られる運命だったということだ。

 じゃあどうやって璃々にそれを分からせるか、っていうのはなかなか難しい問題だ。


「つぐみはご主人様のためにパーフェクトなアイデアを思い付いたの。これで璃々は絶対あきらめてくれる」

「教えてくれ、俺はどうすればいいんだ?」

「ご主人様とつぐみが、婚約を発表すればいいと思うの」


 こ……婚約、ですと?



前作の主人公もお尻触られてたよな……。

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