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異世界人の固有スキル

ストック切れそう。

ここから二日に一回投稿します。

やはり長期連載終えたあとはメンタル的に執筆がはかどらない……。

 魔法革命は俺の存在意義を失墜させた。それは間違いない。 

 しかし実際のところ、今、俺は冒険者ギルドで必要とされている。

 なぜ未だ俺に需要があるのか、その答えは簡単だ。

 鈴菜が用意した魔法の使える精霊誘導型魔法促進ブレスレット――通称〈プロモーター〉。これが不完全な代物なのだ。


 この世界の魔法には属性がある。火、風、地、水、木、光、闇の7属性。ブレスレットを身に着けると、このうち光を除く6属性が使えるようになる。

 そう、光属性は使えないのだ。

 理屈は良く知らないが、光属性の精霊は繊細らしく、ブレスレット程度では上手く誤魔化せないらしい。


 そして光属性はアンデッドに対して特攻だ。

 つまりアンデッド系と戦うことにおいて、適性Sランクの俺はまだ必要とされているのだ。

 でもおかしいでしょこれ? このブレスレットなかったらさ、「全属性使えるなんてこの男は天才か!」とかいうチート扱いの流れだっただろ。

 希少な光属性Sランクを持つ俺がチート過ぎる! とか浮かれることができたらどれだけ幸せだっただろうか。ちょっと前まで全属性最強扱いだったので素直に喜ぶことができない。

 ブレスレットは女性を魔法が使えるようにするが、その後の適性ランクは各人まちまちだ。しかし中には、当然ではあるがSランクの人間もいる。


 ちなみに一紗は俺と同じ全属性Sランクらしい。異世界人は能力高くなる傾向があるらしいが、それでも乃蒼みたいに適性がない子もいるわけで……。

 一紗は規格外なのだ。


「兄ちゃん、今日もありがとよ」


 グラウス共和国東方、荒れ果てた墓地でアンデッドを狩った俺。いつものように先輩から誉め言葉をもらい、冒険者ギルドまで戻ってきた。


 冒険者ギルド。

 グラウス共和国の中央、城下町に位置する場所に存在するその建物は、首都という都会に位置するにもかかわらず、広い土地を確保している。


 扉を入ると、広めのスペースにはいくつものテーブルが置かれている。いつもテーブルに座っている冒険者たちは、一応俺の顔見知りだ。ここで働くようになって長いからな。


 いつもなら、なんてことのない光景だ。

 だけど今日は、少しだけ様子が異なるように感じた。

 ざわざわと、冒険者ギルドが騒がしい。まるで何か珍しいものを見たような、そんなざわつき方である。


「なんだこりゃ? 今日はやけに騒がしいな」

「どうしたんですかね? 取り締まりか何かでしょうか?」


 冒険者ギルドは男も多く、そのためつぐみの圧力を受けることある。不当な取り締まりだ。

 不当、といってもさすがに法を超えたような取り締まりではない。そういった卑怯で犯罪的なことをつぐみは好まない。

 本来であれば低レベルで罰を与える必要がない、小さな小さな案件にまで口を突っ込んでくるのだ。許可なく身元不明の男を冒険者登録した、とか手遅れで魔物に民間人が殺されてしまった、といったみたいな感じ。

 風当たりがきついのは、俺がここにいることも関係しているかもしれない。そう思うと少しだけ胸が痛んだ。


 が、今回は取り締まり関係の騒動ではないらしい。


「タクミ殿はこちらかな?」


 そう言って俺に近づいてきたのは、スーツのような衣服を着た身なりの良い男性だった。

 フェリクス公爵。

 旧貴族の一人だ。

 

「公爵様、ここに来て大丈夫なんですか? つぐみは?」

「はっはっはっ、自分で言うのもあれだが、私は善人だよ? やましいことなど何もない。堂々としていればいいのさ」


 笑いながら自慢のカイゼル髭を撫でる公爵。元気そうだ。

 

 そう。

 つぐみは悪徳貴族たちを追放した。

 彼女が追い出した王や貴族。あいつらは本当にクズだ。女の子を奴隷か何かにしかみていないし、実際多くの少女たちが慰み者になり死に至っていたらしい。だからこそ、追放に至って国内の平民男性も反対することはなかった。

 だがさしものつぐみも、穏健派のフェリクス公爵を追い払うことは難しかったらしい。彼にはその人格からか味方も多い。追放は免れ、俺と同じように王城近くで暮らすことを強要されている程度だ。


 公爵はつぐみに抗議できる人間の筆頭。こうして冒険者ギルドに来れば、騒ぎが起きて当然だ。

 俺と公爵はつぐみに睨まれた似たような境遇だ。自然と話す機会も増え、気が付けば仲良くなっていた。


「タクミ殿、今日はお時間取れますかな?」

「あ、例の件ですね。さっきクエストが終わったところなので、問題ないですよ」

「では私の家に来てもらえるかね?」

「分かりました」


 クエストの報告を簡潔に済ませたのち、俺は彼の家へと向かった。



 フェリクス公爵の家、旧公爵邸へと俺がやってきた。


 現在、フェリクス公爵に権力は存在しない。そもそも共和国では制度としての貴族制は存在せず、『公爵』というのは俺や周囲の人間がそう呼んでいるに過ぎない。

 

「さて、それでは始めるとするか」


 フェリクス公爵はそう言って、支度を始めた。


 俺は最初にここへ来たとき、こう言われた。

 魔法属性すべてSランク。

 聖剣、魔剣への適性あり。

 そして――異世界人の男だから『固有スキル』を持っていると。


 別に女神様からもらったわけではないが、どうやら俺には固有スキルというものが存在するようだ。魔法や聖剣魔剣とは別種の、有用な力。

 俺が持つスキルの名前は、〈操心術〉という名前らしい。『らしい』と言ったのは、俺自身にそのスキルを確かめる術がないからだ。


 その効果は相手の行動を誘導、洗脳、といった強力なものだ。だが俺は今、このスキルを自由に扱うことができない。フェリクス公爵は、そんな俺のために訓練を手伝ってくれているのだ。


 俺がこのスキルを使ってつぐみを洗脳すれば今の状況全部解決しそうだけど、さすがにそれは俺の良心が痛む。命の危険に迫られたなら、考えなくもないが。

 まあ、今の俺としては、このスキルを使いこなして魔物……ひいてはこの世界を苦しめる魔王に戦う力があることを示したい。力が認められれば、一紗と一緒に魔王のいる迷宮へと潜ることが認められるかもしれないしな。


「さてさて、タクミ殿。まずはこちらを」


 異世界人が固有スキルを扱うためには、専門の道具がいる。緑色の宝石がはめ込まれたこのバッジがそれだ。

 バッジが異世界人の体からスキルの力を引き出し、発動させるという仕組みらしい。


 目の前にはウサギが置かれている。小さい動物ほどスキルが効きやすいから、まずはこいつで試そうという作戦だ。


「まずは心を落ち着かせて」


 フェリクス公爵の言葉に従う。


「そう、頭は少しだけ下げて、目を瞑るべきだね。片手を前に突き出し、目の前に糸を放り投げるようなイメージをするといい。力が、指先から外に向かって行くのを感じないかね?」


 …………。

 駄目だ。

 力の流れとか、そういう感覚は全くない。


「――俺に従え」


 ここで訓練を終えるわけにもいかず、俺はその言葉を発した。


「飛べ」


 俺はウサギに飛べと命令した。

 目の前のウサギはうんともすんとも言わない。飛ぶどころか頭を低くしていて、心なしか俺を馬鹿にしているように見えるぐらいだ。

 まったく効いていない。


 次。


「――フェリクス公爵に従え」


 俺が駄目ならば対象を変えてみる、という作戦だ。


「飛びたまえ」

 

 今度はフェリクス公爵がそう言った。しかし、ウサギはやはりうんともすんとも言わない。


「効きませんね」

「効きませんな」


 二人して、深いため息をついた。


「フェリクス公爵。俺には本当にそんなスキルがあるんですか?」

「スキルがあるのは間違いない。しかし、我々も異世界人を頻繁に召喚しているわけではないからね。タクミ殿が例外、と言ってしまえばそれまでかもしれないよ」

「もしかして魔王が先回りして封印したとか? それとも、女子と一緒に転移したことに問題が」

「可能性としては否定しきれないね。いくつか心当たりを当たってはみるが、厳しいと言わざるを得ないよ」


 例外、か。

 何がどう例外なのかはしらないが、まったく迷惑な話だ。俺は超絶チートで魔王とすらも戦える、って触書じゃなかったか? 


「ともあれ、続けていれば何らかの成果がでるかもしれない。また適当な時期を見つけて声をかけよう。その時は、また」

「はい、よろしくお願いします」


 異世界人の召喚、およびその固有スキルの指導は王や貴族の特権だ。クズ王クズ貴族が追放された今、俺にはフェリクス公爵しか頼れる人間がいない。


 前途は多難だが、上手くいくといいなぁ。

 そんな希望的観測を妄想しながら、俺はフェリクス公爵の家を出た。


前作の終了時刻は7時2~4分頃にする!

こうすれば予約投稿の7時ちょうどより一覧の上に来て、より長くトップに滞在できる。

策士作者! 完結時間に抜かりなし!


完結済みの連載小説

7:10(他人)

7:08(他人)

7:06(他人)

7:04(僕)

6:42(他人)


(´・ω・`)…………。

(´・ω・`)予約投稿で0分に投稿が集中するって言った奴出てこいや……。

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