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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
エンジェル・フェザー編

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エンジェル・フェザー、開幕


 突如として始めることとなった、カードゲーム〈エンジェル・フェザー〉。

 ルールの暗記と参加者の選定。

 そしてミカエラの死。


 波乱を含みながらも、俺たちは決戦に向けて準備を進めることとなった。


 俺はマニュアルを読みながら、完全暗記した鈴菜やつぐみはそのまま席に座りながら、ゲームを進めていく。


「……この戦いに勝てば、もう地上に悪さをしない。エリクシエル教布教も放棄して、災害も収めてくれる。そういうことでいいんだよな?」


 ミカエラの件がショック過ぎて忘れていたが、それを確認しておかなければ意味がない。


「神聖な戦いには神聖な対価を。もちろんその通りです」


 口約束だが、一応は確約が取れた。

 これで心置きなくゲームができる。


 まずは場にエリクシエルに似た絵の描かれたカードを置く。このカードは主人公のようなもので、HPは設定されているがゲームには関係ない飾りのようなものだ。


 次に山札を自分でシャッフルする。

 これ、イカサマできるんじゃないのか? よく物語であるだろ? カードにしるしをつけたり都合のいいカードを一番上にしたり、適当にカードを混ぜるふりをして自分の都合のいいカードを……。


「言い忘れていましたが、不正は検知する仕組みになっています。神聖な勝負を侵さないための、最低限のルールです。理解してください」

「…………」


 まあ考えただけでやる気はない。どんな能力を持っているか分からない天使たちに囲まれているんだ。余計なことをしてそこで試合が終了してしまっては元も子もない。


 俺たちは適当に山札をシャッフルして、指定の位置に置いた。俺、鈴菜、つぐみがそれぞれ五十一枚ずつ計百五十三枚。

 一方のエリクシエルは自分とホワイトの分を合わせて計百二枚。この時点で奴らがどれほど不利か窺い知れるだろう。


 本気で、勝つつもりはあるのか?


「先攻と後攻はどうしましょうか?」

「適当にコイントスで決めようか。表なら私たちが先攻、裏ならお前たちが後攻」

「ご随意に……」


 つぐみがコインを投げて、手に落とした。

 そのコインは、表だった。


「では私たちから先に行くとするか」


 ……いよいよ、始まるのか。


 俺たちは同時に山札からカードを引いた。


 このゲーム、山札からカードを取ることは完全に運に左右されている。いいカードも使えないカードもあるから、引いたカードというのはかなり重要だ。

 だがこのゲームのすべてが偶然に支配されているというわけではない。山札のカードを場に出すだけなら、それは勝負でも何でもなく宝くじのようなものだ。


 俺は引いたカードを表にして、テーブルの上に置いた。


「毒……か」


 おどろおどろしい緑色の溶液が描かれたカード。おそらくは毒の正天使がこの天界のどこかにいるのだろうが、今の俺には関係ない。


 ……攻撃、かな。


 このゲームに戦略を与えている要素。それは神カード以外に与えられた二つの能力。

 

 攻撃。

 能力発動。

 

 この二つだ。


 プレイヤーは常にこの二つのうちどちらを選択するかを迫られる。手札のような概念は存在しないため、保留はできずその場で判断が必要だ。

 

 さて、改めて俺の引いた『毒』のカードを見よう。


 攻撃力は250。神カードのHPが10000であることを考えると、この数値はかなり小さい。

 特殊能力の『毒』は名前そのまま。神カードの状態を毒にする。この状態異常は一ターンごとに5ダメージを与える。


 カードは五十二枚で神カードを抜いて五十一枚。これを一ターンごとに消化する形式になっている。山札のカードがなくなればゲームはそこで終了なので、五十一ターンしかないということだ。

 つまり、仮に神カードを毒状態にしても、与えられる総ダメージは255。

 そしてもちろんそのターンまで至らずとも、神カードのHPが0になればそこで試合は終了だ。


 5ダメージなんて誤差の範囲内、といっても差し支えない。そう考えると、どちらをとっても大して敵のHPを削らない。

 要するに弱すぎる。このカードで何か重要な戦略を得られることはないと思う。

 ちらり、と鈴菜やつぐみを見るが特に反応がない。ということはこのカードはやはり適当に処理していいのだろう。


「愛だね」

「土だね」


 つぐみが引いたのは愛、鈴菜が引いたのは土らしい。


 愛の正天使はミカエラだ。

 攻撃力は100、特殊能力の『博愛』は次ターンの敵カードの攻撃を一つだけ無効化できる。

 ……愛の聖術は俺のスキルに似た能力だったはずだ。もう少し現実に近づけてもいいんじゃないだろうか?


 続いては土カード。

 攻撃力は400。

 特殊能力の『土塁』は次ターンの敵の攻撃を20%削ることができる。


 ……20%は低すぎるな。


「俺はこのカードで攻撃する」

「私は特殊能力を発動する」

「僕は攻撃を」


 ま、そうするだろうな。 


 俺たちがそう宣言したその瞬間、周囲に変化が生じた。

 カードの絵が立体映像のようになって、背後に現れたのだ。


 へー、テレビゲームみたいに盛り上げてくれるのか? もう完全に見世物だな、これ。


 毒の液体と土の塊が敵の神カードを攻撃。続いてミカエラに似た姿をした天使が、俺たちの背後に立った。次ターンに特殊能力を発動するらしい。


「うおおおおおおおおおおおっ!」


 まだ大したことはしていないのだが、観客席は大盛り上がりだ。俺が勝っても負けても楽しんでそうだな、こいつら。


 立体映像に表示されたHPゲージが、650削られた。


「では私たちのターンですね」


 次はエリクシエルたちのターンだ。

 さて、どうなるだろうか?


「愛ですね」

「糸」


 一人一人山札が独立しているから、当然同じカードが引かれてしまうこともあるわけだ。

 エリクシエルが愛、ホワイトとかいう天使が糸というカードだ。


 糸。

 攻撃力は50。

 特殊能力、『粘糸』は次ターンに敵カード一枚の行動を無効化する。

 『糸壁』は糸の膜を張り、次ターンに敵全員の攻撃を50%削る。


 っておいおい、能力二つあるぞ。ええっと、こういう時は……


「能力が二つあるときは、どちらを使うかプレイヤーが選ぶことができる。一枚のカードで使用できる能力は一つだけだよ」


 と、慌てた俺に鈴菜が解説してくれる。

 早速フォローされてしまったな。恥ずかしい。


「私は攻撃します」

「特殊能力、『糸壁』を使う」


 という結果になった。

 俺たちのHPが削られ、目の前に糸の膜が張られた。

 

 エリクシエル側、二つのカードで特殊能力がちょっと被ってたよな。しかも両方攻撃力が低いから、今のターンはちょっと損してると思う。


 俺も鈴菜とつぐみのカードをよく見よう。間違えて被った特殊能力使ってしまったら結果に響くからな……。


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