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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
神軍編

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陽菜乃の出産(×100)

 勇者の屋敷、俺の部屋にて。

 俺は部屋の掃除をしていた。

 

 遠出しなくなるとどうしても空いた時間ができてしまう。そういった時間を有効に使うため、子供の世話をしたり乃蒼の手伝いをしたり犬の散歩をしたりしている。この掃除もその一環だ。


 断っておくが部屋がそれほど汚いというわけではない。

 この屋敷の使用人や乃蒼はとても優秀だ。屋敷はもとより俺の部屋までとてもきれいに仕上げてくれる。彼女たちが働いてくれている場所で俺の介入余地はない。

 しかし、この机だけは違うのだ。

 

 部屋の壁側に設置されたこの机。学習机に似た構造をしており、棚がセットになっている。

 これは俺の机だ。プライベートな書類などがあるから、手を出さないようにとみんなには伝えてある。


 本当は書斎に一部屋もらうという話もあったのだが……。ただでさえ広い部屋をもらっているのに、これ以上この屋敷を占領したくなかった。


 まあ要するに俺が本当の意味で管理している、この屋敷唯一のテリトリーと言ってもいいだろう。ここのものには誰も手を触れない。……いや、一紗やエリナは面白がって触れてる時もあるし、ひょっとすると月夜や小鳥が俺の知らないところで盗み見ているかもしれないが、とりあえず表面上は誰も手を付けてない。

 埃被っていて汚い部分もある。冒険者ギルド関係の書類や、以前アパートで暮らしていた時の書類の中には要らないものも多い。

 今日は時間をかけてここの掃除と、書類の整理を行う予定だ。


 俺は一生懸命机を拭いている。

 よくお茶とか軽食をこぼしてるんだよな。汚れが染みついてしまっている。部屋が超綺麗だからこういうのが本当に目立つ。

 

 手を付けたからには頑張らなければ……。


「おにーちゃん」

 

 後ろから、陽菜乃の声が聞こえた。どうやら部屋に入ってきたらしい。

 トテトテトテ、と近づいてくる足音が聞こえる。


「今掃除してるから、おままごとは後でな」


 といって後ろを見ないで適当にあしらったつもりだったが、天下の陽菜乃はこの程度では全く動じないらしい。

 くいくい、と袖を引いてくる陽菜乃を……無視しきることはできなかった。


「陽菜乃、お兄ちゃんは……」

「ひな、妊娠したのー」


 え?

 服を着ていても分かる、お腹の盛り上がり。

 陽菜乃のお腹がおっきくなっていた。


 そうか……とうとう陽菜乃も俺の子供を……。名前を考えないと……。


 ……っておい、ちょっと待て。

 

 俺は今日陽菜乃と一緒に寝てた。しかしその時彼女はこんなにお腹が大きくなかったはずだ。

 裸で確認したから間違いない。

 それが一日でこんなにお腹が大きくなるものだろうか? いや、そんなはずはない。拷問で大量の水でも飲まされない限り無理だ。


「…………」


 俺は冷静に陽菜乃を見た。確かに、服越しにお腹が大きいように見える……が……。違和感がある。妙に形が……凹凸で……。

 なるほどな。

 おそらく、いつもの持っているウサギのぬいぐるみ――ミミを服の中に入れているんだ。それでお腹が大きく見せているということか。

 …………。


 子供かっ!


 と、突っ込みたくなるようなオチだった。


「うーうー、生まれるのー。赤ちゃん生まれるのー」


 突然、陽菜乃が床に倒れこんで『うーうー』とうなり始めた。どうやらもう出産するらしい。

 せめてベッドでやってくれないか? 掃除はしてもらっているがそこはフローリングの床だぞ? あまり行儀がいいとは言えない。


 正直ほっときたかったが、『うーうー』言いながら陽菜乃がチラチラこちらに視線を送ってくる。さらに無視しようとしたら時々足蹴りしてくる始末だ。


 ……どうやらままごとに付き合って欲しいらしい。泣かないうちに相手をしておかないと……。


「うわー、大変だー。ひなのー、元気な子供を産んでくれー」


 しかしこの状況でどうやって反応すればいいかわからないため、とりあえず適当なことを言っておく。

 助産婦役をした方が良かったのか? でも陽菜乃は俺に夫役を求めることが多いから、ここは隣で見守る役に徹した方が良さそうだ。


 そして、しばらくして陽菜乃が服の中から人形を取り出した。


「生まれたのー」


 はい、元気な赤ちゃんありがとうございます。赤ちゃん完全にウサギなんだけどな……。

 やれやれ、これでやっと陽菜乃の奇行から解放されるのか? 今日の俺は掃除職人なのだから、あまり決意を鈍らせるような遊びに巻き込まないで欲しい。


 と、そろそろ退出願おうかと思っていたが、陽菜乃の様子がおかしい。

 そそくさと自分の服に出てきたぬいぐるみを入れ、そして……。


「うーうー、まだ生まれるのーー」

「え?」


 まさかの第二ラウンド開始っ!

 いやちょっと待て、さっき元気な子供を産んだじゃないか陽菜乃。なのにまたやるのか?


「ひ、陽菜乃? さっき終わったんじゃないのか? まだ続くのか?」

「百人」

「百?」

「全部で百人生まれるの。ひなとお兄ちゃんは大家族なの。うーうー」


 陽菜乃、お前はカエルか何かなのか? 人間は一度に百人も子供を産めないぞ。大家族にもほどがあるだろ……。



 その後。

 まさか本当に百人産むまで付き合わされるのか、と戦々恐々した俺だったが、陽菜乃の方が十人目で折れてしまった。

 十回目で九十一人同時出産という間違いなくギネス級の記録達成であった。

 

 ま、さすがに陽菜乃が子供でも飽きるよな。結局は同じことの繰り返しになってしまうから。俺も後半めんどくさくなって、掃除しながら適当な返事してたからな。

 これを機に変な遊びは短めにお願いした。


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