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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
神軍編

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小鳥の隠形


 ヨーランのクーデター、ミカエラの来訪に始まった一連の事件は、予想通り危険な展開へと繋がっていった。

 半天使と呼ばれる天界の住人による襲撃。

 〈黄昏〉と呼ばれる暗殺集団の襲撃。

 そして奇跡の正天使エリックという天界の将軍が、〈神軍〉という軍人たちを率いて人間界に攻めてくるらしい。


 エリックの進軍はまだ起こっていない。いや、もしかすると俺の知らないへき地ですでに争いが起こっているのかもしれないが、少なくともここまでその情報は届いていない。

 早くヨーランやエリックの居場所を特定して、事の真相を確かめたいのだが……それまではこの都市で待機。

 

 つまり、これまでと変わらないということだ。 


 勇者の屋敷、子供たちの部屋にて。

 俺は愛しの子供たち、リンカとエドワードの世話をしている。

 異世界差別貴族たちとは違うからな俺。ちゃんと子供の世話だってする偉い男なのだ。


 子供、といってもまだ生まれたばかりの赤ちゃんといってもいいほどの年齢だ。

 とにかく泣く。

 ひたすら泣く。

 これをストレスに感じる親がいるというのは、信じられないようで信じられる話だ。あやすのも一苦労だ。

 

 おしめを代えたりするもの大事だな。まだ歩けもしないわけだから、当然トイレに行けるはずもなく。


 この子たちがトイレを覚えるのはいつになるんだろうか?


 先の長い話だよな。

 せめてその時までに、今のエリクシエルとかヨーランとか不穏な話が全部終わってくれているといいのだが……。

 この状況、子供たちの心の成長にとって絶対良くないからな。


「……(じー)」


 と、決して勘違いでない視線を先ほどからずっと感じている。不審者であるが不審者ではない。俺は彼女のことを良く知っているからな。


 草壁小鳥。

 俺の嫁であり、かつて呪われた魔剣によって捕らわれていた少女。


 最初はどこにいるか分からなかったが、いると分かってしまえばそこは敏感になる。最近は何となく小鳥がいそうだなーっと、気配で分かるようになってしまった。これが愛のなせる業か?


 一生懸命メモを取っている。一度見たことがあるから知っているのだが、あれは俺の行動を事細かに記録したストーカー日記らしい。何月何日匠君が何した、かっこいい、浮気したとか様々なことが記載されている。


 怖い……。


 なぜ小鳥はこっちに来ないんだろうか? 俺たちもう結婚してるんだから、遠慮なんてしなくていいのに。いや、そもそも小鳥は遠慮なんてしなくて俺にくっついてくることがあるよな? あの俺観察日記を優先させたいから声をかけてくれないのだろうか?

 

 ……仕方ない奴だな。このまま陰気なキャラが定着してしまっては子供たちの成長に悪影響を与えてしまうかもしれない。俺たち家族のためにも、彼女の悪い趣味を矯正しなければ。


「おーい、小――」


 手を振って声をかけようとしていた俺は、声を遮られてしまった。


「うおっ!」


 目の前に突然現れたのは、黒装束の少女。

 月夜だ。

 

 月夜は〈黄昏〉と呼ばれる暗殺集団に所属していた、日本でいうところの忍者的な存在だ。その気配を消す技能は超一流。

 今はこの都市で情報収集をしたり、屋敷の警備をしてもらったりと忍者っぽい仕事を担当している。

 とても頼りになることは理解しているんだけど、これも一種のストーカーに近いよな。


 月夜はどうして出てきたんだろう? まさか小鳥を不審者扱いしてるわけじゃないよな? まあ見た感じそうなのは否定しないが……。


「……違う」


 と、口数少ない月夜が言った。


 月夜と小鳥、あまり見ない組み合わせだな。

 小鳥は一紗やりんご、いわゆる勇者PTと以外はあまり話さない。月夜に至っては誰とも話していない印象だ。どちらもあまり積極的に友人を増やしていく様子はない。


 案の定、小鳥は月夜に対して戸惑っている様子だ。


「えっ? えっ? 日隠さん? 何が違うの……かな?」

「気配の消し方」


 ……うん?


「息」

「……?」

「息を止めて」

「えっ? 無理だよぉ日隠さん。息しないと、私死んじゃうよ?」

「そうじゃない」


 瞬間、月夜の姿が消失した……ように感じた。

 目の前には確かに存在するのだが、なぜかそこにいないように感じてしまう。息ももちろんのこと、動きや瞬きまで完全にコントロールしているように見える。

 これはもはや芸術にも等しい。

 さすがこの世界の忍者っぽい集団の頭領だな。


「うわわわわぁ、すごい。ホントに息してない? ん? んんん? 違う。少しだけ息してるよぉ?」

「そう」

「でもでもこれってすごいなぁ。全然音がない。これがあれば匠君と……」

 

 な……なんだか俺の見てる前で月夜の忍び講座が始まった。

 あまりに気配が漏れているから見てられなくなってしまったのか? 確かに最近、小鳥の視線を良く感じてはいたが……。

 プロ意識というやつなのだろうか?


「隠れるときは、死角に……」

「すごい! あんなに静かに天井に張り付いたよぉ。忍者映画見てるみたい」


 まあ、小鳥が一紗たち以外と仲良くなるのはいいことだよな? これで俺のストーカーみたいな変な趣味から卒業して、真人間に育ってほしい。


 が、ここで俺は思い出す。

 二人が盛り上がってるところ大変申し訳ないんだが、小鳥が俺の尾行や監視をうまくなってしまっては意味がない。


「おーい、二人とも。頑張るのはいいんだけど、俺に隠れてストーカーみたいなことをするのはやめ……」


 ……って、もういないし。

 どうやら本気で気配を隠す練習をしているらしく、どこかに行ってしまったらしい。ひょっとして天井とか部屋の近くにいるのかもしれないが、月夜の技術だとしたらもう俺に捕まえることは不可能だ。




 ――その後、小鳥の気配を感じることはなくなった。


「いるんだろおおおおおおおおおお! 小鳥いいいいいいいいいい! でてきてくれえええええええええええっ!」


 などと一人で大声をあげていたら、乃蒼に心配されてしまった。

 俺より小鳥を心配してほしい。

 こっそりと監視されていると思うと、なんだか気持ち悪い……。


時々子育て手伝ってやった気になっている主人公。

もっと苦労してる人たちがいるんだゾ。

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