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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
神軍編

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352/410

ひよりと美織


 マルクト王国北方、寒冷地帯にて。

 奇跡の正天使エリックは進軍を開始した。

 地理に明るい将軍――ヨーランの先導によって南下を開始した彼らは、これまで特にこれといった障害もなく軍を進めている。大都市を素通りし、それほど大きな戦いを経験していない。

 大都市を素通りしているのは、大軍を避けたいという意図からではない。ただ目指す場所に最も早く向かうための手段に過ぎなかった。

 

 〈神軍〉とは、奇跡の正天使エリックが率いる天界の軍隊である。人数は500人と比較的少数ではあるが、それなりに訓練を積んで武器を与えられている。

 人類、天使を問わず集められたこの軍隊は、表向きはエリクシエルを崇拝する部隊ということになっている。もちろんこの中にいる『半天使』と呼ばれる天界の天使たちはそうなのだが、人間に至ってはそうとも言い切れない。


 飢えに苦しんでいたもの。

 人を殺したいだけの荒くれ者。

 新興宗教、エリクシエル教に熱を上げる狂信者。


 将来、エリクシエルが治める神の国が到来したとき、その新天地での地位、名誉、権力を保証された人々。野心を持つ者、正義の心に駆られる者、なんとなくついてきた者、その構成員は千差万別。


 中でも人間たちの中でもっとも上位に位置付けられているのが、とある双子の少女。


 玉瀬ひより。

 玉瀬美織。


 匠のクラスメイトだ。


「ふ~ん、ふんふんふん~♪」


 玉瀬美織は剣を磨いていた。

 今日は進軍中に野盗と戦った。それほど強くない相手であったため、聖剣に適性を持つ彼女は簡単に倒すことができた。

 これが突発的な戦いであることは美織も理解している。今は目的地に向かって進軍中なのであり、それ以上のことは何も知らない。

 誰と戦うか、どのような大義名分があるかを彼女は知らない。


「……エリック様、カッコ良かったなぁ」

「お姉ちゃんまたその話? 今日でもう三回目だよ」


 先日、エリックはマルクト王国の軍人を一人で蹴散らした。異世界の国のことなどよく知らない美織にとって、誰が悪で誰が正義なのかはよくわからない。しかし無傷で彼らを倒したエリックは、美織の目にはキラキラと輝いて見えていた。


 あれは、二か月前の話だ。

 冒険者として生計を立てていた美織たち二人は、マルクト王国でとある依頼を受けた。

 北方雪原にいるヨーランに関する調査だった。行方不明のあの男がどこにいるのか? 探し出すことが目的だ。

 美織は別にマルクト王国の人間ではない。反乱側が悪いとか王国側が悪いとか、そんな考えは持ち合わせていない。ただ今日の仕事を得るため、金の入るこの仕事を受ける必要があった。

 調査だけであるから危険な任務ではない。しかし遠方であるため報酬は破格だった。前金までついてくる。


 美織たち二人はさっそく北方に向かったが、すぐに遭難に近い状態になってしまった。そこは考えていたよりあまりにへき地で、あまりに不毛過ぎたのだ。

 寒さに凍え、おまけに救助隊なんて優しいものはない。死にかけのこの状態になり、依頼を放棄して帰ることを選択肢に入れていた、ちょうどその時。

 危険が迫っていた。


 野生のデーモン・ベア(魔物)が、美織たちの前に現れたのだ。

 魔物は魔族が生み出すもの。したがって先の魔族大侵攻以降、人間を脅かす魔物は減少の一途をたどっている。

 しかし、ここのように文明地から遠く離れたへき地では、未だに野生化した魔物たちが多く取り残されている状態だ。


 万全の状態である美織であれば、聖剣を使い難なくこの魔物を倒せる。しかし弱っている今は十分すぎるほどに強敵だった。

 殺される、と思った。

 しかし、美織たちは襲われることなどなかった。


 デーモンベアは死んでいた。

 魔物を倒し、美織たちを救ってくれたのは――エリックだった。

 彼は語った、〈神軍〉のこと、エリクシエル教の教えのこと、そして自分たちに協力してほしいということを……。

 美織たちはエリックについていくことにした。 


「心にね、『ビビッ!』っと来たのっ! エリック様こそあたしの待ってた王子様なのよ!」  

「お姉ちゃん……」


 一方のひよりは不安だった。

 エリックは、どこかおかしい。

 

 楽天的な性格の美織は、それほど気にしていないように見える。天使というのは異世界によくいる亜人的な存在で、新しい宗教もそれほど珍しくないものだ。……と思っているらしい。

 

 だが本当にそううなのだろうか? 彼らの行動、話を聞いていると、ひよりの不安は増していくばかりだ。


 それに姉は綺麗でかわいい。表に立たせればそれだけで見栄えが良くなる。

 彼女はエリックの信頼を勝ち取ったわけでも実力があるわけでもない。ただ、周りの人間に好印象を与えるためだけの、看板のような存在なのではないか?


 悪い言い方をすれば、それは利用されているだけなのでは?


「エリック様っ!」


 ビシッ、と敬礼する美織。エリックはこういう礼儀にうるさいのだ。


「美織よ」

「はいっ!」

「貴様はエリクシエル様の配下として認めらえた〈神軍〉を率いる隊長だ。これまでもよく人間たちを統率できていた。期待しているぞ」


 と、言いたいことだけ言って、エリックは去っていった。


「きゃーきゃーきゃー! 見た見た聞いたひより? エリック様があたしのこと褒めてくれた。期待してくれてるだって!」

「あ……あのぉ、お姉ちゃん。そんなに、深い意味はないと思うよ」

「ああぁもうどうしよう。エリック様絶対あたしのこと好きなんだと思う。告白とかされたらどうしよう……」

「…………」

 

 舞い上がる姉を横目に、ひよりは思った。

 エリックの、あの目。

 まるでこちらを見ていない。期待とか信頼とか、そういったものとは全く無縁。まるで牧場の家畜に語り掛けるような……そんな人間を見ていない目だ。

 彼ら天使にとって人間とは、牛や豚と同じ存在なのではないか?


「…………」


 しかし、ひよりは姉である美織を置いて逃げることなどできない。何よりエリックはマルクトの軍人を一人で倒した恐ろしい男だ。隊長とされる人間が逃げだしたとして、何の報復もなしに見逃してくれるとは思えなかった。

 

 ひよりは不安を覚えながらも、今はまだ……エリックに従うことしかできなかった。


ここからが神軍編になります。

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[気になる点] (僕は韓国人です。日本語が下手ので, ご了承お願いします。) いよいよ「小説家になろう」系の定番である「魅了と洗脳によるNTR」ですか? 彼女たちが主人公の女性になるときは、彼女た…
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