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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
黄昏編

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最終作戦


「ぐ……ううぅう……」


 アメリカインド太平洋軍司令官、ジョン・ローラット大将はうめき声をあげた。

 

 何かの、攻撃をくらったのだ。


 すさまじい衝撃ととともに船は激しく揺れ、立っていることもできなかった。体中から感じる激しい痛みは、船の揺れに従って体中をあちこちにぶつけたからに違いない。


 それでもこの船が沈まなかったのは、おそらく単純に運が良かっただけだろう。同等の衝撃を受けた船が、果たしてどれだけ生き残っているのか? 

 

「――貴殿がこの国の将軍か?」


 ふと、声が聞こえた。

 ぐらぐらと揺れる視界のまま、ローラットは椅子に手をかけ……体を起こした。

 目の前に、男が立っていた。

 サムライ風の姿をしたそいつは、つい先ほどまでモニターに映っていたMAZOKU。


 ソードマスター、ゼオン。


「それがしの名はゼオン。刀神ゼオン」


 確かに、ゼオンはふ頭に立っていたはずだ。肉眼では視認できないほど離れた距離で、前線からのカメラを通してかろうじて確認できる状態だった。

 ローラットは激しく揺れる船の中にいたが、意識を失っていたわけではない。先ほどモニター越しにゼオンを視認してから、まだ5分もたっていないはず。

 おまけにここは海の上だ。ゼオンがどれだけ速く走れようと、速く泳げようと、ここに来ることは不可能……のはずだった。


「…………」


 混乱は頂点に達していた。何かの拍子に卒倒してしまいそうなほどに。 

 

 だが、ローラットは立ち上がった。

 ここで、負けてはいけない。


「――ゼオン君、君はこの国のヒロシマという都市を知っているかな?」

「知らんな。それがしはこの国の歴史などに興味はない」


 MAZOKU、などと言う人外の存在を主張するなら無難な回答だ。もっとも、彼自身この国の地理や歴史に興味がなさそうに思える。先ほどローラットに対して『日本の将軍か?』と問うたあたりからも、彼の国際感覚を窺い知ることができる。


「今から80年ほど前、わが国が戦争を終結させるため核兵器を落とした都市だ。日本には申し訳ないが、今、再びこの地に核兵器を投下する。標的はもちろん、君たち魔王とその配下がいる関東だ」

「…………」


 ゼオンの反応は薄い。ポーカーフェイスというよりは、本当に何も感じていないように見える。

 

「自分たちが特別だからと、高をくくっているようだね」


 実際のところ、魔族には多少なりとも特別なところがある。既存の兵器が有効なのかどうかは、検証しなければならない。


「我々はMAZOKUの捕虜を用いて、細胞に放射線を照射して実験を試みた」


 生きたMAZOKUを捕らえたのはごく最近のことだが、細胞自体はそれより前に入手している。奴らの中には明らかに人間と異なる容姿をしている者もいるため、その生物学的意義を調査する必要があった。


「細胞のDNAが傷つき、正常な働きが不可能となる。多くの場合は細胞死を招き、やがては体全体も機能不全に陥ってしまうだろう。君たちの細胞は多少変わったタンパク質で構成されているようだが、基本的なつくりは我々とそう違いない」

「…………」

「理解できるかなゼオン君。君たちは完全無欠のミュータントではないのだよ。我々人間と同じ、細胞の複製がなくなれば体の機能が低下し……死ぬ」


 ゼオンは、表情を変えていない。

 この件に対する理解力がないように思える。あるいは……そんな攻撃をするはずがないと思い込んでいるのか……。


「すでに先のサミットで主要国とは合意済み。中東のテロリストがここまで持ってきたという筋書きだ。後に非難声明が発表されるが……まあ、君には関係のない話だな」

「…………」

「責任者である私の判断で、大統領に助言を行うことができる。それが核使用の最終判断だ。そして、今、私がその報告を行おう」


 電子機器は生きていたようだ。

 先ほどからモニターから呼び出し音が聞こえる。本国からの無線通信だ。


「聞こえるかいゼオン君? 終末を告げる天使のラッパだ。今日、君たちの主である魔王は……死ぬのだよ。手遅れになる前に、早く魔王を助けに行くのだね」


 ゼオンは核兵器のことを良く理解していないらしい。

 ならば、適当なことを言って魔王の元に帰らせるのがベストだ。そうすれば『死の灰』によってゼオンは死ぬ。魔王もろとも幹部を失えば、MAZOKUはなすすべもなく戦列を崩壊させるたろう。

 

 ローラットは無線通信に応えることにした。


「私だ、大統領閣下にお伝えしたい。作戦は最終段階、『天使のラッパを――』


 ローラットはそこで言葉を止めた。

 今、最終作戦――すなわち核兵器の使用を伝えるための合言葉を言うつもりだった。

 だが、相手である大統領のメッセンジャーは、ローラットの意図を知ってか知らずか、矢継ぎ早に自分たちの事情を話し始めた。


 事情を飲み込んでいくうちに、ローラットは血の気が引いていくのを感じた。


「Oh……Jesus」


 ローラットは力なく地面に崩れ落ちた。

 なぜ……こんなことになってしまったのか?

 訳が分からなかった。


 ただ一つ言えることがあるとすれば、それは、この日……作戦が終了したという現実だけだった。


ここで黄昏編は終わりです。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] (僕は韓国人です。日本語が下手ので, ご了承お願いします。) 米軍がすでにMAZOKUの捕虜を利用して生体実験を? その後、その場所は、その有名な'51区域」でしょうね。 ところ…
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