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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
黄昏編

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350/410

MAZOKU VS アメリカ軍

 ここは現代の地球、日本。

 魔族によって関東を支配されたこの地に、今、一筋の光が差し込もうとしていた。

 横須賀湾沖合に展開する艦隊、そして基地周辺に群がる爆撃機。


 ジョン・ローラット大将率いるアメリカインド太平洋軍である。


 その旗艦――ブルーリッジモニタールームにて。


「第三階層迷宮男爵、鋼鉄のノイラート君だったか」


 

 部屋の隅、椅子に固定されて拘束されたその男に、ローラットは語り掛けた。

 

 第三階層迷宮男爵、鋼鉄のノイラートである。


 MAZOKUとの戦いはここが初めてというわけではない。今も静岡、山梨あたりでは激しい戦闘が繰り広げられている。

 その激戦で倒した魔物は数知れず、そして隊長格とされるMAZOKUを倒したのはこれまで三回。

 中でもこの『鋼鉄のノイラート』は、世界で初めてアメリカ軍が捕らえたMAZOKUの捕虜であった。


「くっ……殺せ」

「君には道案内をしてもらわなければならない。その要求は却下する」


 生体改造を施されたMAZOKUは、たとえ生身であっても魔法(MAHO)と呼ばれる異能の力を扱うことができる。この攻撃を防ぐため、ノイラートには研究者が開発した特殊な薬剤が塗布している。これで魔法(MAHO)は使えず無力化することができる。


「MAZOKUの長、魔王は東京にいる。それで間違いないのだな?」

「ああ……行けるものなら行ってみろ。人間ごときが……我々に敵うと思うなよ」

「…………」


 MAZOKUは生体改造を施された人間、とアメリカ軍は理解している。

 彼らがどこから来たのか、どうやってその技術を身に着けたのか、背後にいるのは誰なのか? 

 謎は多い。

 だが日本がこうして窮地に陥っている以上、この地域に影響力を持つアメリカが無視することはできないのだ。

 

 ローラットは状況を把握するためモニターに目を向けようとした。

 その瞬間、船が揺れた。


「……これは」


 モニターに写されたのは、巨大なイカ。


 クラーケンだ。


 どうやら海の下に潜り爆撃を回避したらしい。

 全長は巨大なビルにも匹敵するその巨体。その脚から繰り出される攻撃は、巨木で叩きつけられるのと同等の威力を秘めている。

 いかに最新鋭の艦隊であろうとも、その一撃をくらってしまえばただではすまなかっただろう。

 だが――


 ドン、という衝撃とともに水しぶきが上がった。


 魚雷だ。


 艦隊からの攻撃によって、クラーケンの体を完全に粉砕した。


「見たかねノイラート君。君たちが仮に人間でないというなら、これが人間の実力だと申し上げておこう」

「くっ……」


 ファンタジー世界の魔物など、所詮はこの程度。

 周辺海域、並びに横須賀基地の掃討が終了したのち、上陸部隊による進軍が始まる。ローラットはこの船で各隊に適切な指令を与えるだけだ。

 勝利は揺るがない。 


「むっ……」


 ローラットは異常に気が付いた。

 前線の船より送られて来た映像。モニターに写される、その姿。


 空爆によってクレーターだらけとなったそのふ頭に、一人の男が立っていた。 


「サムライ?」


 その男は侍のような恰好をしていた。


「ぜ、ゼオン様っ!」


 ノイラートが叫ぶ。


「ゼオン……」


 ローラットはその名前に聞き覚えがあった。


 ゼオン。軍の間では『ソードマスター』というコードネームで呼ばれる敵。

 MAZOKU軍にその人ありと言われた幹部である。未知の兵器アンノウン――聖剣・魔剣を操る実力者であり、直接報告はないもののこれまで多くの被害が推測されている。


 曰く、空に向かって放たれた雷の刃。

 曰く、突然大地に出現した地割れ。

 曰く、突如として降り注いだ雹。


 陸海空、いずれの領域にも進出するこの謎の攻撃は、MAZOKUが好んで使う魔法(MAHO)に比べけた違いに威力が高く、これまで日本・アメリカ軍を大いに悩ませてきた。


 これらはみな魔族の未知の兵器アンノウン――聖剣・魔剣によって引き起こされた事象である。自然災害にも等しいこの一撃の詳細を探ることは、この戦争における重要な目標である。


 聖剣・魔剣、そしてゼオンという単語は、CIAが魔族関係者――加藤達也の仲間から聞き出した情報である。直接戦闘を行うのはこれが初めてだ。


「Huh? 一人でのこのことこの激戦区に現れるとは……、自分がスーパーマンにでもなったつもりか?」


 確かに、ゼオンは強いかもしれない。

 だがここには艦隊がいる。爆撃機は周囲を旋回し、時間をおいて戦車や歩兵も進出予定だ。たとえ聖剣・魔剣を使えたとしても、ただの一人でどうにかできる状況ではない。

 モニターを凝視するローラットはあることに気がついた。ゼオンがあるものを持って構えているのだ。


「ソード?」


 聖剣・魔剣とは敵の兵器を表す名前だ。報告に上がるような巨大な力を操る兵器が、あんなただの剣のように小さいはずがない。

 だとすればあれは小型の銃か何か? 指揮棒? あるいは本当にただの刃物か。

 いずれにしても、艦隊を目の前にして持つようなものではない。


 次に、ゼオンは大きく振りかぶった。


「素振り……スイング?」


 ローラットにはそう見えた。

 周りには誰もない。なのにゼオンは剣を振り下ろそうとしているのだ。これは素振り、日本の剣道などでよく見られる練習光景だとローラットは理解した。


「HAHAHAHAHAHAっ! あのゼオンとかいうMAZOKUは、ここで剣のトーレニングがしたいらしい。クレイジーだ!」

「あ……あれは……」


 笑うローラットを置いて、MAZOKUノイラートの深刻な声が響く。

 

「SHIN……KAI?」


 ローラットがゼオンの唇を読んだ、その瞬間。

 光が爆ぜた。



 その日、横須賀の海が割れた。

 刀神ゼオンが放った〈真解〉はその威力を十二分に発揮し、海底が露出するほどの一撃を放った。

 そのすさまじい衝撃はハリケーンのように艦隊を直撃し、避けることはできなかった。

 

 艦隊は壊滅した。


もう一はアメリカ軍の話が続きます。

区切りが悪いので。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] (僕は韓国人です。日本語が下手ので, ご了承お願いします。) アメリカ軍が崩れると、世界秩序も一緒に分類されますが、特に北朝鮮と中国....... 正体を知ることができない未知の生…
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