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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
黄昏編

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伝言の半天使


 ミカエラは夕食に招かれ、鈴菜やつぐみを交えて軽く話をすることになった。

 もちろん二人には俺から事情を話している。ミカエラが天使であること、エリクシエルとかいう神を崇拝していること、これから攻めてくる敵やヨーランとの関係などなど。

 彼女たちなら、もっとうまく話ができるはずだ。


 こうして、ミカエラを含めた夕食が始まった……のだが。

 

 みんな和気あいあいと楽しそうだ。

 つぐみなんてミカエラを犯人扱いしてたはずなのに……

 いや、あれは多分ポーカーフェイスというやつなんだろう。


「久しぶりだなミカエラさん。この国で別れてて以来、私たちも心配していたんだ」


 などと言うつぐみ。

 よく言うよ、この前指名手配したばっかりなのに。指摘されても『部下が勝手に……』とか言い訳するんだろうか?


「匠から話は聞いている。ミカエラさんはエリクシエル神、という方の使いでここにやってきたんだな?」

「はい、その通りです。もっとも、エリックが動き出した今となっては、すべて手遅れかもしれませんが……」

「エリック? それはミカエラさんの言ってた軍のお偉いさんだな」

「下条さんからお聞きでしたか……」

「そのエリックという方は、ミカエラさんの上司か何かかな? 同じように正天使という認識で間違いないか?」


 おお……。

 そういえば正天使には聖術とかいう特殊な力があるって言ってたな。そのエリックとかいうやつがそうなら、当然聖術を使えるはずだ。

 俺がさっき聞いておけば良かったな。


「彼は軍人であり、こういった情報漏洩は処罰の対象となります。おそらく今も水晶を通して私たちを監視してるでしょう。あまり多くのことは語れないのです」

「…………」


 俺たちを、監視? いやミカエラを監視しているのか?

 どちらにしてもあまり気分がいいものではないな。この会話も敵側に筒抜けってことか。

 逆にそこまでできるなら俺たちなんてすぐに殺せそうなものだな。毒殺なんて回りくどいことをしなくても。やっぱりこの件に天界は関係ないのか?


「ミカエラさんに苦労を掛けるつもりはなかった。ここに攻めてくる、と聞かれてどうしても気になってしまってね。ミカエラさんが話せることだけ話してくれればいい。強要しているわけではないから安心してほしい」

「……奇跡。奇跡のエリックと彼は呼ばれています」


 奇跡か。

 死人を生き返らせたりするとか? あるいは、ものすごく運のいいやつとか?

 話を聞いただけじゃ能力は分からないな。そもそもミカエラも『愛』とか言って、その実中身は『催眠』や『洗脳』に近かったんだ。あまり言葉だけを当てにしても仕方ないと思う。


 ここは別な会話の切り口が必要みたいだな。俺にはどうすればいいのか全く見当もつかないが……。


「すまない、あまり無粋な話はしない方がよかったな。せっかくクラスメイトの大半がここにそろったんだ。今日は旧交を深めながら、ゆっくりと夕食を食べることにしよう」


 などというつぐみ。一瞬だけ鈴菜に目配せしているのが見えた。

 どうやらバトンタッチということらしい。大統領が一人であれこれ聞いてしまったら、いろいろと勘繰られてしまうからな。


 さあ、鈴菜はいったいどんな情報を……。


「ミカエラさ――」


 と、ミカエラに呼びかけようとした鈴菜の声は、唐突に遮られてしまった。


 ドン、と扉が開かれた。

 基本的に、食事中には使用人たちは入ってこないようになっている。言い方は冷たいかもしれないが、今回だけは身内だけでご飯を楽しみたい。

 もちろん何か緊急の要件があるならば、このルールは無視される。

 まさか……。


 だがそこに広がっていた光景は、俺の予想をはるかに超えるものだった。


 女の子が二人立っていた。

 翼。

 彼女たちは背中に翼を生やしていた。


「半天使……」

 

 ミカエラが、そう呟く。


「ミカエラの仲間か?」

「はい。エリックの配下です」

  

 半天使、か。

 名前だけ聞くと半分の天使? いや半人前の天使といったところか。正天使のエリックに仕えているってことかな?

 とはいえミカエラに忠誠を誓ってる感じではない。同じ正天使でも主が違えば対応も違うということか。


 それにしても、この警備の厳重な屋敷のどこから入ってきたのか? いや……空は森や屋根で死角になってるからな。こいつらには意味のないことだったか。


「エリック様より言伝があります、ミカエラ様」

「内密の話ですゆえ、こちらへ……」


 どうやら、伝言を頼まれているらしい。

 俺たち全員を無視してミカエラだけに耳打ちするなんて、なんだか嫌な感じだ。でもことさら敵対行動をとっているわけではないため、変に剣を構えたりするわけにもいかず……。

 ミカエラは席から立ち上がって、彼女たちのもとへと駆け寄っていった。


 何かを話している、のは分かるが、音まで聞き取ることはできない。ミカエラが慌てたり驚いたり、あまりいいニュースではなさそうだ。


 三十秒、いや四十秒だろうか。さすがに……少し長いな。


「すまないが、私たちにも紹介していただけるか?」


 と、業を煮やしたつぐみが三人に語り掛ける。


「…………」


 半天使、と呼ばれた二人は冷たい目でこちらを見下ろしている。俺たちのことなど歯牙にもかけない、まるで雑草や動物を見るような目だ。

 こんな顔をされるなんてな。ミカエラ以外の天使と出会うのは初めてだが、もし天界全員がこんな様子だとしたら、俺たちは……。


「ふっ」

 

 半天使が笑い、片手を広げた。するとそこからボール状の光る球体が発生し、宙にぷかぷかと浮いている。

 半天使は笑いながらそのボールを俺たちに投げてきた。


「避けてくださいっ! 魔法の一種ですっ!」

「は?」


 俺の声より早く、光が爆ぜた。


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