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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
マルクト王国編

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陽菜乃合流


 陽菜乃が屋敷にやってきた。


 俺と婚約し、将来はこの屋敷にやってくる予定となっていた陽菜乃。半年後か一年後か、なんて考えていたが予想外に早い引っ越しだった。


 陽菜乃の養父、バイロンがそう促したらしい。

 商人としてこの地にやってくることも多い彼。定期的に陽菜乃の様子を見に来るということで、送り出す予定を早めたようだ。

 陽菜乃もその方が嬉しいだろうからな。


 エントランスにやってきた陽菜乃。彼女が身に着けているドレスと大きなつばの帽子は、いかにもお嬢様といった感じだ。


「わーい」


 お気に入りのぬいぐるみ、ミミを抱えながらこっちに向かって走ってくる陽菜乃。

 ぽふん、と俺の太ももに抱き着いた。


「おにーちゃん、好き」

「…………」


 俺は何となく陽菜乃の帽子を撫でていた。婚約者としては抱き合うのが正しかったのかもしれないが、彼女の背では自然とこうなってしまう。


「部屋は用意してあるから好きに使ってくれ。引っ越しの作業手伝うぞ? 荷物はどこにあるんだ?」

「パパが用意してくれたの~」


 見ると、厳つい体つきの大男が、屋敷の前で乃蒼と話をしている。木箱やぬいぐるみをその手にかかえる彼らは、おそらくは引っ越しの手伝いをするために雇われた者だろう。


 そういえば陽菜乃の養父はお金持ちだったな。こういった仕事もやってくれたのか。あとでお礼を言っとかないとな。


「じゃ、一応他の設備の話もしておかないとな。陽菜乃は今大丈夫か? 引っ越しで疲れてるなら、案内は後回しにするけど」

「ひなね、お兄ちゃんに会ったら元気いっぱいなの。今日は何でもできるのっ!」

「よし、じゃあまず大浴場から――」


 と、俺はそこで言葉を切った。

 エントランス、階段。

 上から聞こえてくるこの声は……そう……。


「うおおおおおおおおおっ!」


 エリナああああああああああああああああっ!


 そう、今の屋敷にはエリナがいる。俺の嫁にして、この屋敷の中で最高の恥部をつかさどる少女だ。

 陽菜乃には……正直会わせたくない。

 しかし彼女はこの屋敷で一緒に住む家族なのだ。臭いものだからといつまでも蓋をしておくわけにはいかない。

 大人しくしてくれ……頼む。


「うおおおおおおおおおおらあああああっ!」


 俺の心からの願いなど知る由もなく、エリナは階段から大ジャンプをして、俺の体を押し倒すようにしてそのまま着地する。

 馬乗りのエリナ。いつものように制服と軍服っぽい飾織を身に着けているが、そんな厳かな服装などお構いなしだった。


「はああああああああっ、匠君。好き好き好き好き好き」


 我慢できなかったのだろうか、服越しに俺の体を舐め始めるエリナ。

 

 もはや完全発情モードのエリナだったが、だからといってそのままヤラれてしまうわけにはいかない。俺は彼女の両肩を掴むと、勢いよく引き剥がした。


「エリナ! 陽菜乃が見えないのか?」

「……四家さん? 関係あるの?」

「バカっ、よく考えてみろ! 陽菜乃はお前と違って純真でいい子なんだぞ! 変な言葉を覚えたらどうする? 子供の正しい成長を促すのが、正義の味方ってやつだろ!」


 まあ実際陽菜乃とエリナはほとんど年齢変わらないわけだから、子供というのはおかしな話だが。都合がいいのでこのまま押し通す。


「むっ……正義……」


 重要ワードを耳にしたエリナは、まるでエラーを起こしたロボットのように動作が挙動不審になっていく……。


「むむむっ、むむ……ジャスティス。むむ……」


 善と悪に葛藤する闇落ち前の主人公? きっと天使と悪魔が頭の上で盛大なバトルを繰り広げているんだ。


 果たして……その結果は?


「よ……四家さん」


 ゆっくりと立ち上がるエリナは、ぎこちない笑みを浮かべている。 


「ようこそ、勇者の屋敷へ。あたしは匠君の妻で将軍の西崎エリナ。正義の味方! 子供の味方だから、困ったことがあったら何でも聞いてね。ジャスティス!」


 天使勝った! 偉い!

 陽菜乃はエリナすらも抑えてしまったか。その純真パワーで彼女の更生に一役買ってほしい。


「エリナ、陽菜乃は今日からこの屋敷で暮らすことになる。お前は屋敷の先輩であり、お姉さんになるんだ。少しは責任を感じて大人の対応をしてほしい」

「……うん! 大人の対応!」


 …………大丈夫かな?

 とにかく、一緒に暮らしていく以上無視するわけにもいかない。彼女を信じるにしても信じないにしても、自然と付き合いが生まれてくるわけで。


 その後、俺たちは三人で屋敷の部屋を見て回ることとなった。

 陽菜乃は正式に部屋をあてがわれ、俺たちの家族となったのだ。



 ――一週間後。


 そこには、無邪気に俺に抱き着く少女の姿が。


「きゃははははは、セッ〇ス!」

「ひ……陽菜乃……」


 なんということでしょうか。

 無駄に元気なエリナと子供な陽菜乃。相性は相当よかったらしく、夜遅くまで屋敷の廊下で騒いでいることが多かった。

 仲良くしている二人を止めるわけにもいかず、俺はエリナに奇行を教えないようにと警告するだけにとどめた。しかしそんな言葉が彼女に届くはずもなく……。


「わーい! お兄ちゃんの〇〇〇をだぜ~!」

 

 いつものように太ももに抱き着く陽菜乃。しかし今回はベルトを下ろそうとしている……。それはまるで、あの淫乱将軍のように……。


 この結果だよ。


 俺は泣いた。

 全部エリナが悪い。純真無垢な俺たちの陽菜乃は死んでしまったのだ。いや言葉の意味はあんまりわかってないのかもしれないけど……。


 バイロンさんが来る前になんとかしないと……。


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