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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
護衛編

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夕食に呼ばれる


 その後、俺と陽菜乃は屋敷にいる何人かと話をして過ごした。

 陽菜乃にとって昔なじみの相手だ。話せば懐かしい思い出も語れるし、楽しめたんじゃないかと思っう。


「匠君、そろそろ夕食の時間、だよ」


 食堂から出てきた乃蒼が、玄関で無駄話をしている俺たちに声をかけてきた。


 言われて意識を集中すると、確かに、おいしそうな香りが漂っている。今日はみそ汁かな?

 外を見ると太陽が傾き、西の空に夕日を生み出している。部屋の中にいると分からないが、確かに夕食時間だった。


「もうそんな時間か。悪いな、俺陽菜乃をホテルまで送らないといけないからさ、先にみんなで食べててくれよ」


 バイロン夫妻はすでに帰っていた。本当は陽菜乃もその時点で帰る予定だったのだが、駄々をこねたので後で俺がホテルに送っていくことになっている。

 夕食、ということは六時前後か。俺の予定ではこの時間にはもう送り届けているつもりだったんだけどな。


「せっかくだから、一緒にご飯食べない? 四家さんの分も用意できるよ」

「わーい、ひなもご飯食べるっ!」

「…………」


 変なボロを出さないようにさっさとホテルに連れて行きたかったんだがな……。乃蒼に先手を打たれてしまった。


 ここで無理やり引きはがしたら泣きそうだから、とりあえず夕食は認める方向で……。


「そうだな、陽菜乃もせっかくだから一緒にご飯食べようか。でも陽菜乃も、パパとママが待ってることを忘れるなよ。食べたら早く帰ろうな」

「はーい!」

 

 あまり長話させないでさっさと帰らせよう。


 俺たちは乃蒼と一緒に食堂へと入った。

 食堂には全員、とまではいかないがある程度の人数は揃っていた。

 鈴菜、璃々、りんご、雫、子猫、亞里亞、小鳥。


 つぐみは官邸で仕事中。一紗は体調不良のため不在。エリナは珍しく配下の軍団とともに隣町を訪問中。


「お腹すきすぎて、ひな死んじゃいそうだったの!」


 陽菜乃は喜んで空いている席に座った。

 俺もその隣に腰かける。


 目の前にはご飯、みそ汁。皿に盛りつけられたトマト、ニンジン、レタス、そして中央に鎮座するソーセージ。醤油っぽい調味料で作った焼き魚と大根おろし、加えて漬物のようなものまである。

 どちらかといえば和食寄り、といった感じのメニューだった。

 

 陽菜乃は箸をつかみ取って、すぐに目の前のごちそうへ手を伸ばそうとした。


「こらこら陽菜乃、ちゃんと挨拶してからだぞ」

「わかってる!」


 いや絶対わかってなかった。俺が言わなかったら間違いなくそのまま食ってた。

 でも俺はもう陽菜乃の扱い方を分かっているので何も言わない。そーいうのは親の仕事だ。


「いただきます」


 両手を合わせて挨拶をする陽菜乃。

 

 陽菜乃がまず箸をつけたのはソーセージだった。一口で半分ほど平らげる。頬をリスのように膨らませながら、肉の味に幸せをかみしめている様子。

 やっぱり肉が好きなのかな? 


「陽菜乃ちゃーん、ソーセージは好きかなぁ?」

「うん、ひなね、お肉だーいすき!」

「私の分もあげるね」


 なんだか小鳥の奴、陽菜乃に随分と優しいな。少し前に泣かせてしまったことを反省しているのかもしれない。


「小鳥お姉ちゃん大好きっ!」


 ふふっ、食べ物程度で機嫌を直すなんて、まるで子供だな。

 言われた小鳥も少しだけ嬉しそうにしている。彼女への敵意は完全にないらしい。

 ま……まあ、初めから陽菜乃に対してじゃなくて俺に言ってきてたよな? 彼女が帰ったら俺は何か言われてしまうのだろうか? 心の準備をしておかなければ……。


「お元気そうで何よりです」


 白米を少しずつ食べながら、亞里亞が静かに話を始める。


「遠く離れた地で、慣れないことも多いでしょう。ですがクラスメイトの一人として、わたくしはいつでも四家さんの身を案じていますわ」


 亞里亞は神聖国にいた。同じ遠方に旅立った陽菜乃に対して、思うところがあったのかもしれない。

 亞里亞は不幸だったが、陽菜乃は幸せだったからな。


「そして、神はいつでも我々を見守っています。四家さんも悩み、苦しみ、生きにくさを感じたら是非神の声に耳を傾けてください。ここにパンフレットを置いておきますね」


 いやの目の前で宗教勧誘するなよ。神はあなたの行いを許していませんよ?


「亞里亞お姉ちゃんの話分からない! ひなが子供だから?」

「いいぞ陽菜乃、ずっとわからなくていいんだ」


 そのまま亞里亞のことは忘れてくれ。大人になればわかるさ、あの女の頭がおかしいことに……。


「陽菜乃ちゃんおかわりあるけど食べる?」

「食べる!」


 乃蒼が厨房に行ってソーセージを持ってきた。また肉か。あまり偏った食事は体にどうかと思うんだが、注意した方がいいのだろうか?

 まあ、今日一日ぐらいなら……いいか?


 乃蒼が持ってきたのは太いソーセージだった。なかなか食べ応えのありそうな一品だ。


 陽菜乃は目をキラキラと輝かせながら、箸でソーセージを突き刺した。


「すごく太い! この前見たお兄ちゃんのゾウさんにそっくり!」


 うんうんそうだな、俺のヤツに形も大きさもそっくりの……。


 ん?

 瞬間、のどかだったはずの食堂が凍った。


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