表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
護衛編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

284/410

オファリー州到着


 俺はオファリー州へと旅立った。

 道中では何も問題は起こらなかった。魔族は倒され、貴族も全滅して、平和になったこの世界で遠出をするのは初めてだが、俺は世界の変化を目の当たりにした。

 

 かつて魔族の脅威におびえていた人々はそこにいない。首都近くの街道は平和そのものであり、乃蒼でも一人で旅ができるほどだと感じた。


 ただ、これはあくまで首都近くの話だ。オファリー州ぐらい田舎となると、都市間の距離が開きがちになってしまう。山道や林道はならず者の宝庫だ。魔族がいなくなってから勢いを増した感がある。

 俺たちやグラウスの軍隊が手をまわしているが、追いついていないのが現状といったところだろう。


 とにかく、俺は旅を難なく終えてオファリー州へとやってきた。

 まずは陽菜乃のもとへと向かう必要がある。

 大通りをそのまままっすぐ進み、貴族、商人が住む高級住宅街へとやってきた。 


 そして今、目の前にあるのが陽菜乃の家だ。


「……でかっ!」


 勇者の屋敷はでかいでかいと思っていたけど、この家も俺たちの住まいとそう変わらないと思う。

 大き目の門と、その奥に配置された植物園風の庭園。建物は左右に広がり三階建て、バルコニーも充実している。俺の屋敷は都市の郊外にあるが、ここは町中だ。田舎であることを考慮しても、これはなかなかのものだと思う。


 そして屋敷の外で使用人と思われるメイドたちが歩いている。この広い屋敷だ、一人で何もかもするのは不可能ということなのだろう。


「すいません」


 俺はメイドの一人に声をかけた。


「冒険者ギルドの斡旋で護衛の依頼を担当する、下条匠です。バイロン様に取り次いでいただけないでしょうか?」

「少々お持ちください」


 メイドがほうきをもったまま屋敷の中に戻っていった。俺のことを知っているのかそうでないのか、あの表情から判断するのは難しいな。


 やがて、先ほどのメイドが戻ってきた、隣には杖をついた老人を連れている。シルクハットのような帽子がよく目立つ。


 養父、バイロン。



 帽子を脱いだバイロンは、流れるような動作で深々と一礼をした。


「こんにちは。救国の英雄、下条匠様ですね。まさか、あなた様が依頼を受けてくださるとは……。田舎者の商人ですゆえ、少々の不作法はお許しいただきたい」

「いえいえ、俺もここへは護衛として来てますので、気にせずこき使ってください。そんな風にかしこまられると、緊張しちゃいます」

「それは助かります」


 俺はバイロンを軽く眺めた。

 きれいに整えられた正装、杖も帽子もそれなりに高級品。身に着けている宝石は派手ではないものの、それなりの価値を感じさせる。

 いかにも上流階級、といったいで立ち。


 陽菜乃を引き取ったというだけあって、そこそこ金があるようだ。


「いやはや、本当に偶然とは面白いものですね」

「何の話ですか?」

「それは……」


「お兄ちゃーん!」


 と、玄関から飛び出してきたのは、陽菜乃だった。

 つい先ほどまで寝ていたのだろうか。子供向けのウサギをモチーフとしたパジャマを着ていて、長いウサギ耳のついたフードを被っている。

 フードから漏れ出る髪は腰あたりまで伸びるロング。うさぎの形をした髪留めで左側に寄せている、いわゆるサイドテールというタイプの髪型だ。


「久しぶりだな、陽菜乃。元気にしてたか」


 首都を離れて以来、ほとんど接点のなかった彼女だ。こうして顔を合わせるのは本当に久々だ。


「あのね、ひなね、この前のお祭りで、お兄ちゃんのこと見たよ。お城の上に乗ってた!」

「……ん?」


 城? あ、ああ……あの上の方が城っぽい建物になっている神輿のことか。うう……思いだしただけで恥ずかしくなってきた。


「陽菜乃もあそこに来てたのか。声をかけてくれればよかったのに」

「うう……だってぇ。お兄ちゃんとっても偉そうだったんだもん。王様ぐらい偉いんだよね? ひな、お話ししても大丈夫? 逮捕されたりしない?」


 そんな急に逮捕だ処刑だなんて……。どこかの大統領じゃあるまいし……。


「ふふっ、陽菜乃はあなたに会いたがっていたのですよ」


 と、養父のバイロンが解説してくれる。


「首都に到着したら、あなた様とお話をする予定でした」

「もしかして……俺がここに来たら、もう用事は済んだってことですか?」

「いえ、大切な商談があるため、首都まで護衛していただきたいというのは本当です。貴重な宝石も一部あります。陽菜乃の件はそのついでだった、と理解してください」

「わかりました」


 一言声をかけてくれれば、会いに行って……あげられただろうか? ここのところ魔族だとか結婚だとか本当に忙しかったから、案外会いにいけなかったかもしれない。


「予定通り出発は明日です。宿をとられていないのなら、この屋敷に泊まりませんか?」

「いいんですか?」

「これだけおおきな屋敷です。私たち夫婦と、それに陽菜乃がいても寂しいものです。話し相手になってくださるのなら、歓迎ですよ」

「お兄ちゃんとお泊り! お泊りだわーい!」


 陽菜乃が俺の太ももに抱き着いてきた。こうして無邪気に懐いてくる彼女を見ていると、まるで子供でも相手にしているかのようだ。


「はっはっはっ、これはもう逃げられませんな」

「……ご厚意、感謝します」


 とりあえず、バイロンさんの屋敷で泊まることにした。


区切り的には中盤後編といったところなので、そろそろ人物紹介を入れておきましょうか。

次回は人物紹介を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ