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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
黒の巨人編

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結婚式の相談(後編)


 結婚式。

 こうして話が具体的になってくると、いろいろな気持ちがこみ上げてくる。


「あの城で結婚式か……。ここに来たときはこんなことになるなんて思ってなかったなぁ」


 召喚初期の絶望感と言ったら……もう半端ないレベル。その後つぐみに冷遇されてた時代もあれだったが……。


「お城で結婚式。匠君が王子様で私が王女様。幸せ過ぎておかしくなっちゃいそうだよぉ~」


 小鳥がうっとりとしながら何もない空中を眺めている。何か変な妄想をしているのかもしれない。そっとしておいてあげよう。


 官邸というのは、要するに旧グラウス王国王城だ。

 城で結婚式なんて……俺たちは国王か何かかな? 式って戴冠式ですか?


「なあ、無理に城を使わなくてもいいんじゃないのか? もっと別の……普通の建物で……」

「何を言っているんだ。勇者とその妻たちの晴れ舞台だ。大聖堂や城を使わないと釣り合わないだろう?」


 あ、はい、そうですか。


 ちなみに大聖堂なんてものはない。

 この国にはアスキス教の影響力など微々たるもの。地方には土着の宗教を残している場所もあるが、その地域だけの小さな小さな団体だ。巨大建造物とか巨大教団とか、そういうのは全くない。

 相対的に王の権力が強かったわけだが、今となっては過去の話だ。


「……各自のウェディングドレスについては、順調に仕上がっている。結婚式までには十分間に合うはずだ」


 ウェディングドレス。

 こればかりは現地で適当に買いましたじゃすまされない。彼女たち一世一代の晴れ舞台だ。準備は怠っていない。

 すでに全員が採寸を終え、ドレスの仕上げを待っている状況だ。派手さ、デザイン、それぞれの個人的な注文にも対応してもらっている。


 乃蒼はレンタルでいいとか言ってたがそんなの俺が絶対許さない。一生に一度の思い出に遠慮するのはやめてほしい。


 この世界にも教会があり、ウェディングドレスも存在する。だから俺たちの求めるドレスの概念はすぐに伝わった。

 しかしここは異世界。下手に人任せにしてしまえば、俺たち的に違和感しかないものが送られてくる可能性がある。

 なんといっても以前は女が奴隷・もの扱いされていた差別国家だ。ドレスのへそから下がありませんでした、なんてセクハラ紛いの扱いが正当化されているかもしれない。

 

「つぐみは結構派手なデザインだったよな。自分で考えて提案したのか?」

「以前にこの国の王女が身に着けていたものを参考に作った」


 そうやって自分がこの国の支配者であることを誇示したいんだな。

 ……なんてのは疑い過ぎか。


 でもまあ、その王女が着てたドレスが悪いものとも限らないし、俺としても彼女がそれでいいというのであれば何も文句を言うことはない・


「あたしは完璧に完全にデザインできたと思ってるわ。当日は楽しみにしてなさいよ!」


 一紗は自分でドレスをデザインした。

 もうこういうドレスにしたい、という気持ちが初めからあったらしく、この結婚話が持ち込まれる前から熱心にデザインしていた記憶がある。


「ふっ、尖ったファッションもほどほどにしてくれよ。髪の上に船とか鳥とか置いたり、だれも望んでない姿を晒されると夫として恥ずかしい」

「何よそれ、あんたあたしを何だと思ってんの?」


 ついつい軽口を叩いてしまった。


 俺の心ない発言に頬を膨らませていた一紗だったが、にやり、と笑うと思うとすぐに反論してきた。


「そーいえば匠さ、あのウィッグ被らないの? 似合ってたわよ?」

「……勘弁してくれよ。黒歴史になるだろ」


 この世界では、マイナーではあるが貴族の一部にウィッグの風習がある。かつて王室に勤めていた技師から、何度かその勧めを受けたことがある。

 しかしはっきりいって俺には似合ってない。中世~近世ヨーロッパ王族の肖像画が身に着けていたみたいな、妙にボリュームのあるロングヘアだ。

 フランスのルイなんとか世みたいな肖像画を残されても困る。


 ああ……興味半分で装着してたところを一紗に見られたんだよな。『お、俺フランスの国王みたいじゃん!』とかテンション上がって変なポーズ決めてたまさにそのタイミングで。

 く……くぅ、思い出したら恥ずかしくなってきた。


「わ、私、もっと普通のドレスとお願いしたよ。シンプルな」

「猫っぽい刺繍をお願いしたにゃ」

「私はりんごと同じものを……」

 

 などと、女性陣が雑談を始めた。もはや打ち合わせでもなんでもないな。


「そしてわたくしはこちらの刺繍……」


 そう言って亞里亞が見せてきたのは、紙に書かれた十字架のような記号だった。


「わたくしたち『勇者教』のシンボルマークですわ。匠様の聖剣を表しています」


 勇者教、というのは言うまでもなく俺を神と称える亞里亞の謎宗教のことだ。キリスト教の十字架みたいに、これが勇者教の象徴となるらしい。


 確かに、聖剣ヴァイスに似ている。


「…………」


 アイタタタタタタ、痛すぎるよこの子。

 その十字架をどうするつもりだ? 名前の前後に取り付けて、♰女教皇亞里亞♰とか?

 

 そろそろ亞里亞も現実を知ってあきらめてくれないだろうか? 俺が神だなんて誰がどう考えても無理がある設定なのだ。あとで恥ずかしさに顔を赤める彼女を思い浮かべると、ただただ同情してしまう。


 まあ俺は亞里亞のことを温かく見守ってるからな。信者が集まらなくて泣きそうになったときは慰めてあげよう。


 

 時々雑談をはさみながらも、打ち合わせは滞りなく進んだ。


 準備は多く、とても忙しくなってきた実感はある。

 しかし着実に前には進んでいる。

 何事も起こらなければいいのだが……。


「匠君とあたしの公開セッ〇スは?」

「ねえよ!」

 

 あと誰かエリナを見張っておいてくれ。当日何かやらかしそうで怖いんだ……。


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