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クラスの女子全員+俺だけの異世界召喚  作者: うなぎ
刀神編

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217/410

真解発動


 俺の合図とともに、兵士たちが一斉にゼオンへと突撃した。


「魔剣ヴルカーン!」

「聖剣レーゲン!」

「魔剣シュピラーレ!」

「魔剣ケッテ!」


 出し惜しみなどしない。聖剣・魔剣使いは全力でゼオンに技を放ち、一般の兵士たちはやや離れたところから弓矢で射る。

 

 かつてこれほどの大攻勢を魔族に浴びせたことがあっただろうか? これまでずっと勝利続きだったことと相まって、味方の士気が高まっていたのかもしれない。


 対するゼオンは、剣を水平に構えたまま動きを止めている。明鏡止水の境地に立つその姿勢は、どんな剣豪にも勝るとも劣らないように見える。


 そして、始動する!


 ゼオンは、まるで数倍に早送りしたかのような高速の動きで、すべての矢を弾いていった。持っている聖剣の力というよりも、彼自身の剣士としての技量の力が大きいと思う。人間離れした魔族の力を考慮しても、その動きは規格外だ。

 CG映画でも見ているんじゃないか、と思ってしまうほどだった。


 まあ、知ってはいたことだがゼオンは強い。それに対抗するために、俺は新技〈真解〉を携えてきたのだから……。

 〈真解〉は極めて強力な必殺技だ。しかし使えるのは一度きりであり、剣が壊れてしまう危険性をはらんでいる。


 過ちは許されない。

 完璧なタイミングで技を行使し、ゼオンに当てる必要がある。兵士たちには悪いが、囮になってもらう。


「〈白刃〉っ!」


 俺はいつも通り〈白刃〉を放った。ゼオンに余計なことを感づかれてはならない。進歩がない、と呆れられるぐらいがちょうどいい。


「……愉快」


 俺と、それから他の兵士たちの攻撃を一身に受けていたゼオンは、笑いながらそう言った。


「これほど戦意を持つ軍人と戦うのは、生まれて初めてか。悪くない。この世に魔族として生を受けて以来、このように闘志を滾らせたことがあっただろうか? これが武人としての、それがしの生きざまっ!」


 ゼオンは勢いよく聖剣を振り下ろした。その刀身に絡みついた風の刃が、石の敷き詰められた床を深く抉り……土砂を弾き飛ばしていく。周囲にいた兵士たちを巻き添えにしたその攻撃に、俺を含めて多くの人間が後退せざるを得なかった。


 しかしこれは最後にして最大の戦。逃げる場所などない。いったんは後退を余儀なくされた俺たちだったが、すぐに距離を詰めてゼオンを攻め立てる。

 

「――〈紫電一閃〉っ!」


 次にゼオンが放ったのは、彼の持つ何かの聖剣による力らしい。

 横一文字に刀を振るうと、そこから煌めく風の刃が発生した。


 光の筋が兵士たちを襲う。俺の使う〈白刃〉ととてもよく似ていたが、その飛距離と攻撃範囲は群を抜いている。

 多くの悲鳴が聞こえた。

 〈白刃〉に比べそれほど威力の強い技ではなかったようだが、皮と少量の肉を裂くレベルの力はあったようだ。防具で受けた俺や他の兵士たちは異常なしだが……。


 怯んでは立ち上がり、怯んでは立ち上がり。敵は圧倒的だが、俺たちの士気も上昇している。

 勇んで攻め立てていた俺だったが、ふと、視線を外すと広場の向こうに兵士が群がっているのを見つけた。


「勇者様っ!」

「ご無事ですかっ!」


 北側を攻めていたアスキス神聖国の軍人を主体とする軍団だ。彼らもここまでやってきたのか?


「遅かったな、邪魔が入ったのか?」

「魔族三体と交戦。聖剣を主体に撃退しましたが、少々手間取ってしまいました」


 と、将軍が答えてくれた。


 あっちには魔族がいたのか。運が悪かったのか、何か策があっての配置なのか……。この分だと東や西から攻める兵士たちも魔族に足止めされているのか?

 だけどここに来て援軍がやってきたとことは、かなり嬉しい。


 援軍到来。

 もともとそれほど士気の下がっていない俺たちだったが、この情報にはさらに戦意を向上させた。

 そしてそんな俺たちの様子を見て、ゼオンは唇を釣り上げた。


「良かろう。このゼオンを、もっと攻め立てるのだ!」


 言われなくても、俺たちは戦っている。

 だがゼオンは余裕の表情を崩していない。むしろ嬉々としてこの激戦の中に身を投じているようですらある。

 俺はそれほどこいつの事を知っているわけではないが、記憶にある中では一番幸せそうに見える。ブリューニングが言っていたように、もともとは戦闘狂のような魔族なのだろう。


 しかし強力な魔族であるゼオンも、聖剣・魔剣使いを基軸とするこの大軍を相手とするのはさすがに多少骨が折れるらしい。だからこそその手応えを楽しんでいるわけではあるが……。

 いずれにしろ、このまま適当に戦っていても、奴がそれに飽きたらすべてが終わってしまう。聖剣・魔剣の祖であり魔族屈指の実力者であるその力は、こんなものじゃあないはずなのだから。

 

 俺は傷ついたふりをしていったん戦線を抜け、後方に下がった。

 目の前の戦いに集中してたゼオンは、次々と兵士を薙ぎ払っていく。その勢いはとどまることを知らず、このままじっと見守っていればこちらが全滅してしまうかもしれない。

 

 奴にとって、俺はもはや数多くいる敵対者のうちの一人らしい。戦闘狂らしく、目の前の戦いに熱中している。


 今だっ!


「――〈真解〉っ!」


 兵士たちの犠牲で生まれたこの好機! 逃すつもりは……ない!


 瞬間、目の前で光が爆ぜた。


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